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クラシックはロックだ!②
その音楽を聴くことで、心身が揺さぶられ、まさに身体が踊り出してしまうようなロック。ーーそんな感覚をクラシック音楽の中に見出すことは、私自身よくある現象である。
そんな感覚を初めて持たせてくれた音楽がある。
スヴャトスラフ・リヒテルの音源だ。
スヴャトスラフ・リヒテル(1915-1997)はソビエト出身のピアニストで、20世紀最高のピアニストの1人として位置付けられている。ピアノを弾いている人間の中で、彼のことを知らない人は居ない。
彼が、1960年にアメリカ・デビューを飾ったコンサートがあり、それが10〜12月に行われたカーネギーホール・ツアーである。その中の1公演に、オール・ベートーヴェン・プログラムがある。
その中で特に衝撃的なのが、ソナタ第23番「熱情」である。
ベートーヴェンの「熱情」といえば、8番の「悲愴」、14番の「月光」と並んで、特に有名なピアノ・ソナタとして挙げられ、中期の最高傑作の一つでもある。アパッショナートに相応しい燃えたぎるような作風が特徴だが、リヒテルは、それを圧倒的に弾き通す。
極め付けは第3楽章で、冒頭から一般的な演奏よりも速く弾くし、コーダではさらに速度を増す。テンポはもとより、音の切り刻み方が極めて鋭く、ドラムでも叩いているのかのような「熱情」っぷりである。
正直、昔はリヒテルの音源にハマってよく聴いたのだが、最近はあんまり好きではなくなっていた。ライヴ音源はミスタッチが多いし、正しく弾かないし、多くのピアニストの音楽に触れる中で、今も好みの感じではないなと感じている。
しかし、この「熱情」だけは、ミスタッチがあろうと、全く関係ない。個人的に、この「熱情」を超える音源は無いと思っている。精神の奥深くにある鼓動に直接触れるような音楽。まさにロックだ。
ちなみに、リヒテルはあんまり…といいつつも、好きな音源は他にもたくさんある。有名なバッハの平均律クラヴィーア全曲、有名なラフマニノフのコンチェルト第2番、またソフィア・リサイタルでのムソルグスキーの展覧会の絵、他にもシューマンはかなり上手くて、交響的練習曲や幻想曲はかなり絶品だ。
このように文章を書き出してみると、改めてリヒテルを聴きたくなってきた。一度洗い出してみよう。