重要なのは球団のニーズ? 社会人野手

表題からいきなり結論めいた言葉を載せてみましたが、ドラフトで指名されそうな選手紹介noteもとりあえずこれで一区切りです。世間は甲子園の真っただ中なのに社会人野球の話?って感じですが、すっとばすわけにもいかないですし、都市対抗が終わってからでないと社会人野球選手の話をするのも難しかったので、この時期になっています(もう少し早くやれよというご意見は見なかったことにします)。

社会人投手のnoteの中でも書きましたが、いわゆる不作年と言われる年はこれまで、上位指名の中で社会人選手の占める割合が増加していました。ただ、そうやって上位指名されてきた社会人たちが額面通りの働きをしてきたかとなると疑問はありますし、伸びしろのない社会人よりは、即戦力に拘りがない場合、高校生の選手に主力になる未来を託してみるというのも十分に魅力的な判断です。正直、都市対抗を見ても、そこまで鮮烈な輝きを放ち、上位指名まちがいなしや!と思えるような活躍をした投手は少なかったですし、野手に関しては見つからなかったというのが正しいかもしれません。

ドラフト候補考察、一応の最終回としての今回は、最初に幾つかの切り口から社会人野手の考察をしたのち、具体的な選手名を挙げてみようと思います。過去の例を見ても、指名されそうと思った選手がことごとく指名されないのが社会人の予想をしづらさを物語っていますが、めげずに頑張っていきます!

1 社会人野手が指名される理由

社会人野手に関しては、これが一番重要な考察になると思います。ここ10年ほどの間に指名されてきた社会人野手を見てきて思うのは、「ある一定の基準をクリアした社会人野手が指名される」というよりか、「チームにとって必要だったから指名された」と考える方がしっくりきます。

もちろん、二大大会の少なくとも片方には出場しているであるとか、そこで結果を出したであるとか、身体能力が高いとか、そういう最低限の基準はありますが、それを突破した選手の多くが指名されているわけではありません。

では、どういう意図で指名されているのか?となりますと、

来季の一軍でスタメン110試合以上、OPS.650以上が期待できる
同ポジションの既存選手に刺激を与え、あわよくばスタメンを奪う

主にこの2つの理由が多そうです。
❶は上位指名されるケースが多いですね。センターラインを守れる守備力がある選手が選ばれることが多いです。社会人野手に初年度からOPS.700を期待するのはハードルが高いですが、OPS.600だと既存野手で事足りてしまうので、OPS.650が、現実的に期待できる数字としては最低ラインだと思います。

❷は下位指名に回されがちで、正直、予想外の野手が指名されてばかりで戸惑います。❶よりは、身体能力が高かったり、打力が優れていたりといった、尖った面が評価されやすいですが、最初から予想できるか?となると難しいです。基本的に、指名されるなら、バリバリのセンターライン野手でなくても、少なからずセンターラインも守れる野手が指名されることがほとんどですが、昨年の末包昇大(広島)のような打撃ポジション専門の野手も稀に指名されることがあります。

なお、昨年は3人も大卒3年目の野手が指名されましたが、この3人(野村勇・末包昇大・上川畑大悟)が全員、初年度からOPS.700以上を叩き出している(8/20現在)のは、今後のドラフトに対して大きな影響を与えるのではないでしょうか。さらに言うと、近年はほとんど、初年度から一軍で数字を残す社会人野手は左打者に限られていましたが、今年は野村・末包が前述通りの活躍で、中村健人(広島)もOPS.648とそこそこの数字。今後は社会人の右打者の指名も増えていくかもしれません

2 活躍する選手の基準

これは一昨年にも、昨年のnoteでもまとめたことがあるのですが、

・ドラフト年の都市対抗で打率.250以上(.300以上が望ましい)。指名年のデータに乏しかったり、成績が悪い場合、他の全国大会通算が.250以上なら良い

・一塁到達が左打者なら4.2秒、右打者なら4.4秒前後。それぞれ4.0秒、4.2秒前後なら大きなアピールポイントになる。一塁到達タイムが分からない場合、50m6.0以内が望ましい

・ドラフト年の三振率が.250以下(2割未満なら優秀)。ドラフト年のデータに乏しかったり、数字が悪い場合は他の年の大会の通算も考慮

というような共通項があるようです。ただ、昨年の野村勇は4度の全国大会通算打率が.148、27打数9三振でも、高い身体能力が認められたのか指名されていますし、対照的に、ドラフト年の日本選手権(昨年は夏開催なのでドラフト前)で打率.450と活躍した末包昇大はそこまでズバ抜けた身体能力ではない中で指名されています。この2人がどちらも初年度から高いOPSを記録していますから、結局は分からないものです。

なお、投手の際と同じように、二大大会のいずれにも出場していない場合は、指名されないものと考えていいと思います。

3 本題!

はい! 本題です。ここからが見たい部分だと思いますので、ポジション別に書いていきます。

【捕手】

いきなりで申し訳ありませんが、正直、指名されるような選手はいないかなと思います。2018年以降で指名された社会人捕手は2019年の柘植世那(西武)のみであり、かなり指名されにくいポジションになってきています。特に注目されているような捕手も見当たりませんし、今年も指名なしが続きそうな気がします。

【内野手】

ここに関しては、これまでも期待されており、かつ、今年の都市対抗でも数字を残せている選手が複数います。

まずはショート。大卒3年目ながら、今年は公式戦の多くの試合で打撃好調を維持している和田佳大(トヨタ)は、今夏の都市対抗でも打率.308と結果を出しました。俊足堅守が武器なのでプロからのニーズもありそうですし、身長が170㎝未満であること、もしかしたら3巡目以上が必要であるというネックを考えても、指名に踏み切る球団はあるかもしれません。

大卒2年目では、中村迅(NTT東日本)の名前が挙がってくるでしょう。正直、今年の都市対抗以外の公式戦ではそこまで打っていないのですが、都市対抗ではホームランも放ち、打率.400と結果を出しました。身長180㎝以上なので二遊間としては逆に小回りの利かなさが問われてしまう可能性があるものの、打撃力が評価されるならサードに回してもらえて出場機会を得られる可能性はあります。

他ですと、昨年からドラフト候補に挙がる中川智裕(セガサミー)も、今年は9打数3安打となんとか結果を出しました。これまでより捻りが少し小さくなり、確実性は上がったように思います。同じく大卒3年目の添田真海(日本通運)も8打数3安打で意地を見せました。上位とまではいかないかもしれませんが、まだ指名の可能性がありそうです。瀬戸西純(ENEOS)も期待していましたが、都市対抗で満足な結果を出せませんでしたから、指名は険しくなったかもしれません。

セカンドに目を移すと、都市対抗で打率.391、ホームランも放った相馬優人(東京ガス)は、大卒3年目ながら魅力的です。今年のほかの公式戦でもソコソコの数字なのでフロックでもなさそうなのは良いですが、準決勝・決勝で9打数0安打なのが少し不安要素にはなるでしょうか。

予選の成績はイマイチだったものの、都市対抗初戦で4打数2安打となんとか結果を出したのは、大卒2年目の平良竜哉(NTT西日本)。スイングはかなりドラスティックかつパワフルで興味を惹かれますが、さすがに三振が多めなのは気になるところで、二塁守備も少し安心しきれないところがあります。同様に、本大会では3本の長打を放ち、10打数6安打という爆発ぶりを見せた、高卒5年目の北川智也(セガサミー)も、そのほかの公式戦での数字は冴えませんから、どういう評価を受けるのか読めないです。

一三塁に関しては、プロも積極的に指名に動いてこないポジションですし、特に強烈な輝きを放つような候補もいないのですが、唯一例外があるとすれば大卒2年目の古寺宏輝(HONDA鈴鹿)でしょうか。2試合で3本塁打、打率.625はさすがに無視できない数字であり、そのほかの公式戦の数字も悪くないですが、いわゆる捻り依存のフォームと、一塁専任、かつ身長180㎝未満というのは気になります。ただ、かなり下の方での指名はあるかもしれません(パ・リーグならば使い勝手も良いでしょうし)。

【外野手】

前述の末包のような例外はありますが、基本的にはセンターも任されるレベルの身体能力がないと苦しいです。

都市対抗開幕前に、いろいろな野手の予選成績を調べ、期待できそうな外野手をピックアップしていましたが、全員がさほど成績を残せないまま敗退してしまった時はひっくり返りそうになりました。

そこには入れていなかったものの、打撃で結果を出したのが、大卒2年目の齊田海斗と、大卒3年目の北畠栞人のTDKコンビ。どちらも打率5割以上、長打も放っています。ネックとしては、齊田は50m6.3でスピード感に欠け、北畠は身長170㎝未満と、外野手としてはNPBにいないレベルの身長ということでしょうか。個人的には北畠はミニ近本光司(阪神)のような打者なので、NPBでも活躍できそうな気がするのですが。

初戦で4打数1安打と、なんとか無安打を回避したのは大卒3年目の藤井健平(NTT西日本)。都市対抗前の数字は際立っていますし、身体能力も高く、新人の年の日本選手権でかなり打っているのも良い点ですが、センターを全く任されていないというのは少し気になります。果たして指名あるでしょうか?

前述のように、外野手では身体能力が高く、都市対抗前の数字も快調だった選手は何人もいたのですが、全員共倒れしてしまい、なんとか藤井はアリかな、といった状況でした。ただ、ワンチャン指名あるかもしれないので、名前だけはここにツイートを貼って刻んでおこうと思います。

●おつかれさまでした!

おいおい、ほとんど選手名を載せてないじゃねえかという話ですが、正直、こちらが見て、この選手は指名されそう!という選手はほとんどおらず、指名あるかも?というぐらいの選手を載せてみた次第です。ただ、2011年からの指名選手を見ても、最低3人は指名されていますから、うまく球団のニーズに合えば(おそらく下位で)指名される選手もあるいは出てくるでしょう。

次回は、さすがにそろそろ、上位36人を予想するnoteを書いてみようと思います。この間に伸びてきた高校生にも序盤でサラッと触れるか、それ単体でnoteを更新するかもしれません。その時はよろしくお願いします。それではまた次回のnoteでお会いいたしましょう。またねー!


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