ドラフト2024を俯瞰する
ドラフトが終わり、1週間ほど経ちましたが、早くもドラフト系の記事が数多く書かれ、体感ですと2週間ほどが経過したような印象です。毎年、ドラフトが終わったころに、各球団の振り返りをし、最後に俯瞰するnoteを書いて、ドラフトを締めていますが、今年もそうしたいと思います。
1巡目の指名を俯瞰する
今年は、金丸夢斗と宗山塁という、10年あるいは20年にひとりクラスの選手が、なんと投打に1人ずついるという、かなりメモリアルな年でした。たとえるとするなら、22歳の和田毅(+球速10km/h)と鳥谷敬がドラフトで指名可能だったようなものですから、大半の球団が「どちらに入札するか」という議論になったのは言うまでもありません。
そして、もう一つ感じていたことですが、最近、競合すると分かっていても指名する理由の中で大きなウエイトを占めているものが、「リーグ内のパワーバランスさえ揺るがしかねないほどの選手を、同一リーグの球団に見す見す渡すわけにはいかないから」ではないかと思うようになりました。したがって、金丸夢斗と宗山塁にそれぞれ入札するチームは、セ・リーグとパ・リーグとに大きく分かれるのではないかと予想しており、それに関しては見込みが当たることとなりました。入札および外れ以降の指名についてまとめてみます。
西武 宗山塁 (大・遊)⇒石塚裕惺(高・遊)⇒齋藤大翔(高・遊)
中日 金丸夢斗(大・左)
オリ 西川史礁(大・中)⇒麦谷祐介(大・中)
ヤク 中村優斗(大・右)
楽天 宗山塁 (大・遊)
広島 宗山塁 (大・遊)⇒佐々木泰(大・三)
千葉 西川史礁(大・中)
横浜 金丸夢斗(大・左)⇒竹田祐(大社・右)
ハム 宗山塁 (大・遊)⇒柴田獅子(高・右)
阪神 金丸夢斗(大・左)⇒伊原陵人(大社・左)
福岡 宗山塁 (大・遊)⇒柴田獅子(高・右)⇒村上泰斗(高・右)
巨人 金丸夢斗(大・左)⇒石塚裕惺(高・遊)
入札に関して、後から考えても読み切れなかったのは、
・ロッテの大学生野手入札
・DeNAの金丸夢斗入札
・ヤクルトの中村優斗入札
ですね。ロッテが大学生野手に入札するのは9年ぶりということで、予想できなかったです。DeNAは大型競合には乗らないと思っていましたが、金丸夢斗を見す見す渡すわけにはいかないというのと、外れても竹田祐は単独で確保できると踏んでの金丸夢斗入札だったかもしれません。ヤクルトは単独で来そうまでは分かりましたが、中村優斗は意外でした(身長180㎝未満の右腕に入札するのは14年ぶりだと思います)。
外れ以降で言いますと、最初のクジを外した球団が確定した時でさえ、ほぼ全球団、予測できませんでした。
・石塚裕惺に関しては、入札で消えてそうだなと思っていたので、ハズレ指名でどこが指名するのか予想していませんでした。
・柴田獅子に関しては、ヤクルト入札かなと思ったので外れ指名は予想していなかったのと、ガチガチの地元すぎるソフトバンクは来ないかなと思っていました。
・阪神は入札と同じカテゴリである大社左腕で来るだろうと思っていましたが、大卒社会人で来るとは思っていませんでした。
・DeNAは単独指名予想だったので外れ指名がどうなるか考えていなかったのもありますが、どちらにしても竹田祐になりそうな気はしませんでした(彼自身の一巡目に関してはワンチャンあるかも、とは思っていました)。
・カープが野手入札で競合して外したケースはだいぶ前例がないので方針が分からなかったというのと、佐々木泰ぐらいの身長のサードを上位指名するイメージは皆無でした。今後の二塁コンバートなども可能性あるのかもしれません。
なお、過去のnoteで、「1巡目で指名される投手は最低でも6人」と書いていましたが、今回もまさに6人でした。今年は1位候補の野手がだいぶ多かったなと感じますし、実際、1位候補野手のほぼ全員が指名されたなと思います。
上位36人を俯瞰する
恐らく今年は、上位36人予想をしていた大半の人が、うまく予想できなかった・・・と思ったのではないでしょうか。どうやらスカウトの方々の中にも、今年は会議中の他球団の動きが予想しづらかったと話している人もいるようで、ちょっと例年にないような上位指名になっていた印象です。
ではまず、投打をカテゴリ別に、2017年からまとめたグラフです。
深緑色までが投手ですが、どの年度もほぼ同じような割合(60%前後)に落ち着いています。2022年こそ50%まで下がっていましたが、この年が下限と考えても良いかもしれません。今年は大学生右腕で、大学代表に選ばれた4年生投手がほとんどおらず、投手の上位指名が減るのではと思いましたが、その場合は大学代表以外や、社会人、独立リーグの投手の上位指名で補われるのかもと思いました(高校生の上位指名人数は毎年ほぼ変わっていないので)。
投手の上位指名が少なくなりそうだった今年、なぜ投手の上位指名が多かったのか?ということについてですが、2巡目か3巡目でリリーフ候補が指名されるというケースがかなり増えてきていることが挙げられると思います。今年はなんと、3巡目で指名された12人のうち、7名がリリーフ補強と思われる指名でした(先発できそうな人もいますので完全にリリーフ補強かは現状では分かりません)。もちろんその年の市場次第ですが、今後の上位3枠の使い方、「先発・センターライン野手・リリーフ」がひとつの鉄板になる可能性もあるのではと感じました。
リリーフ専任の投手も何名かいたぐらいですが、彼らにほぼ共通しているのは、平均球速が速く、三振奪取能力が高いということ。加えて、身長184㎝以上の長身であったりするとさらに評価は高くなるでしょう。今後は、大学代表右腕が少ない年であれば、リリーフで活躍している大社独投手(大学生の場合は4年秋に活躍している投手)を上位候補として予想してみようと思います。
なお、(ほぼ)リリーフ登板のみの投手を上位の枠まで使って指名するとなると、現状、ロッテ・ヤクルト・楽天・ハムの4球団ぐらい。他の球団は、先発投手ながらリリーフが向いてそうな投手をセレクトしています。ただ、今後はもっと、ほぼリリーフ登板のみの投手でも、制圧力が高ければ上位指名されるケースが増えるかもしれません。
続いて、野手について。投手の上位指名が非常に少なかった2022年以外、高校生野手は一時期のバブルのような人数を思うと、だいぶ上位指名は減り、およそ5名前後となっています。特に、両翼や一三塁の選手の上位指名はほとんどなくなってきています。捕手・ショート・センターの候補を本命予想していくのが良さそうです。
大学生野手についても、大学生投手と同様、4年秋にキャリアハイか、あるいは過去のキャリアハイと同等の成績を残していることが、上位指名へのカギになりそうです。上位指名された8名の大学生野手すべてがそれに当てはまります(西川史礁は死球で離脱しましたが、離脱前の成績はとても良かったです)。4年春は多少苦労しても良いので、秋には好成績を残しておく必要がありそうです。
では続いて、投手の左右と、野手のポジション別のグラフです。
2021年と2022年は外野手の上位指名がかなり増えていましたが、ここ2年はかつてのような人数に戻っているのが分かります。そんな中でも人気があるのは、身体能力の高い、強打の中堅手。仮に彼らが4人ほどいるのであれば、それ以上に外野手が上位指名されることはあまりないのかもしれません。
なお、今年は2008年以降では初めて、捕手の上位指名なしという年になりました。大学生捕手で上位指名されそうな捕手が少なく(印出太一選手はスローイングが課題と言われていました)、高校生捕手の箱山遥人もまさかの指名漏れしてしまい、かといって大卒社会人捕手が3巡目まで来ることもなかったためでした。近年は捕手の上位指名が極めて少なくなっていますが、今後も2人ほどいればいい方となるかもしれません。
これらのポジションの減少を埋めるように伸びてきたのが、二遊間の上位指名。今年はなんと9名もおり、小園海斗や根尾昂のいた2018年の8名を超える大人数となりました。前回から6年が経ち、当時指名した二遊間の選手も年齢を重ね、二遊間を守れなくなったり、コンバートされていたりして、後継者を必要としていた、ということかもしれません。
最後に、この章を閉じるにあたり、改めて36人をポジション別にまとめておきます。
【高校生投手】
高校生投手の、入札以外の上位指名のタイミング、①外れ1位 ②2巡目と3巡の折り返し付近 ③3巡目の終わり際 だと思っていますが、今回もまさにそういう感じでしたね。
【大学生右腕】
ほぼリリーフの投手 今秋の奪三振率
安徳駿:13.97 浅利太門:14.52 一條力真:9.45
【大学生左腕】
金丸夢斗という超逸材こそいましたが、上位指名候補はそこまで多くなく、強いて言えば宮原駿介が上位でなかったのが少し意外だったという感じでした。
【社独投手】
ほぼリリーフの投手 奪三振率
中込陽翔:11.68(今季通算) 荘司宏太:13.78(直近10試合)
【高校生内野手】
今年は高校生ショートのレベルが高いなと感じていましたが、石塚・齋藤以外は森駿太しか上位指名されず。
【大学生内野手】
サードで上位指名されたのは全てのカテゴリで見ても佐々木泰の一人だけ。例年これぐらいの人数です(荒巻悠が早い段階でサードに戻る可能性はあります)。
【社独内野手】
両名とも予測できず。独立の野手で上位指名というの、もしかして史上初ですかね。果たして、どれだけやってくれるでしょうね。なお、大社独の二遊間が6人も上位指名されたのは、2008年以降で見ても最多の人数でした。
【外野手】
全員センター。両翼で上位指名は、センターの上位候補が(ほとんど)いない年でないと難しいかもしれません。
支配下指名全体を俯瞰する
最後に、支配下指名全体を俯瞰してみます。まずは投打をカテゴリ別に集計したグラフ。
2018年ごろは支配下指名がかなり多かったですが、2019年から減少し始め、2022年からはさらに減り、70名前後になっています。各球団の平均支配下指名人数は6名もありません。かなり支配下指名が絞られ、求められるレベルも上がってきています。
オレンジ色のゾーンが増えていることでお気づきかもしれませんが、今年は独立リーグ所属の野手の支配下指名が、投手と同様、かなり増えてきています。社会人および独立リーグの投手と野手、それぞれの支配下指名人数についてもグラフを作ってみました。
昨年は支配下指名される独立リーグ投手が増えたなという印象でしたが、今年は独立リーグ野手の支配下指名が一気に増えました。5名のうち、2名が捕手、3名が遊撃手。主に下位指名というのを見ますと、これらのポジションを守る20~23歳の選手を下位で指名するなら、社会人より独立リーグで、と考えている球団が複数あるのだろうと思います。なお支配下指名された独立リーガーの満年齢は20~24歳でした。
続いて、ポジション別にまとめたグラフ。
目につくのは、外野手の指名の少なさ。昨年も支配下では5名でしたが、今年も6名と少数精鋭。両翼の選手の支配下指名となるとほんの数名で、センターを守れないと上位指名はおろか支配下指名も厳しいというのが現状です。ドラフト前の各球団の支配下外野手人数を見ていても、そんな空きがあるわけではなく、これぐらいの人数しか指名されなかったのも納得です。
上位でも指名の多かった二遊間は、支配下指名全体で見てもかなり多く、2017・2018年と同じぐらい。やはり、2018年頃に指名された二遊間が、年齢を重ねて二遊間を守れなくなってきて、そろそろ次の世代の二遊間を備えなければ、という理由から指名に動いたのではないかと思います。もし、実際にこういう理由であれば、来年も二遊間の指名はそれなりに多いかもしれません(市場次第ですが)。
近年はどの球団も、支配下→完全解雇 ではなく、いったん育成落ちさせることが増えてきており、特に野手に関しては、育成落ちした面々が二軍運用面で使われることも多いため、ドラフトで新しく支配下加入させるなら、相当なレベルか、若くて身体能力が高いハイシーリング案件かという感じになっているのかなと思います。数合わせで支配下指名されるのは、ちょっと考えづらいです。
おつかれさまでした!
だいたい、noteを書くのはドラフト関連のみなので、よほど文章書きたい欲が溜まってこない限り、次のnoteは来年のドラフトに関する記事になるかなと思います。今年は凄い数のビューをいただいたnoteもあり、ありがたい限りでした。それではしばらくのお別れです。ありがとうございました!