2018年LATIN AMERICAの10枚
ブログから古い記事をnoteに移行しています。本稿では2018年のラテン・アメリカのディスクを10枚選んでいます。しかしアルゼンチンものは配信がないものが結構多いですね。
今回はラテン・アメリカの10枚。といってもブラジルのものはラティーナに掲載されたものを見ていただくこととして、その結果アルゼンチンものがほとんどです。でもそれだけ今年のアルゼンチンの作品は充実していたなあと思います。
ACA SECA TRIO / TRINO
もう言葉もない、って言ってしまったら終わってしまうのですが、Aca Secaの音楽に、常に音楽への希望を託してきた者にとっては、期待を十二分に超えた本作の素晴らしさを、一体どう伝えたら良いのだろうと、悩ましくすらあります。本作では、すでに聴き慣れたはずの彼らの音楽に、また新たな希望を見出すのです。音楽の喜びが濃密に封じ込まれた大傑作。
ALFREDO RODRÍGUEZ / THE LITTLE DREAM
Cuba人ピアニスト、Alfredo Rodriguez のニュー・アルバム。Munir Hossin (b., g.)とMichael Oliveira (dr.)によるトリオ。恐るべきテクニックを持つ3人であるが故、想像に難くないのだが、それでも疾走感が凄まじいが、センシティブな旋律もまた本作の魅力。Alfredoの煌びやかなピアノはもちろん、控えめな歌も心地よいし、Munir Hossinのコラのようなギターが効果的だ。Quincy Jonesがプロデュース!そりゃそうだよねって感じです。
BRENDA NAVARRETE / MI MUNDO
力強く縦横無尽、驚くべき歌い手なのである。しかも彼女は作曲家でもあり、パーカッショニストでもある。瀑布のごとく重層的で、複雑かつバイタルなリズム、切れ味鋭いベース、ジャジーで硬質なピアノ。アフロの香りを濃厚に残しつつも、その切り口は鋭く斬新。伝統的な音楽を維持しながら、新しい音楽を創造しているではないか。
BRUNO DELUCCHI GRUPO / LAS MENINAS
これは去年の積み残し。Bruno Delucchi率いるクインテット。アルゼンチン・ジャズの美しき結晶。フォルクローレの香りを残してはいるが、土臭い感覚はほとんどない。変拍子を多用した爽快感あふれるアンサンブル。特にvocalにLucía Boffoを配した”Cable a Tierra”と”Cuerpo y Alma”は、希望の輝きに満ち溢れている。
(↓全曲がまとまった試聴サイトは発見できず)
CHANCHA VIA CIRCUITO / BIENAVENTURANZA
フォルクローレ・シーンのこういう側面も今面白いのだな。通常のフォルクローレって、もちろんあまり聴かないけど、こうなると話が違うよね。フォルクローレをベースにして、でもエレクトロニカをふんだんに使って、ミニマルで、そしてダンサブルって、こういう音楽をあまり聴いていない私には結構衝撃的。ええ?クラブ系南米フォルクローレっていうの?なるほど面白いね~。
FEDERICO ARRESEYGOR TRIO / TODONOSEPUEDE
アギさんやアカセカなどのアルゼンチンの音楽に魅了されたのは、その無常の美しさであり、有機的で真摯な音楽性であり、またその躍動感や高揚感であったと思う。そ本作はFederico Arreseygorの三作目。彼の音楽こそは、僕の恋い焦がれる音楽。フォルクローレをベースにいろいろな音楽の記憶が散りばめられた、輝くような音楽なのです。
HUGO FATTORUSO Y BARRIO OPA / ST
Hugo Fattoruso x Faroutである。Hugoの音楽がかっこよさはよくご存知だと思うのだが、そのかっこいい部分を、ひょっとするとHugo以上によく知っている者がプロデュースするとこういうアルバムができる。Hugoの音楽は幅広いけれど、OPAの時代のかっこよさはファンであれば忘れがたい。その忘れがたい時代の音楽をup to dateして、さらに凝縮したのが本作だ。
PAZ COURT & LA ORQUESTA FLORIDA / VERANILLO DE SAN JUAN
チリのSSW、Paz CourtのOrquesta Floridaとの大編成の作品。超祝祭的なポップ・ミュージック。このPaz Court、動画を見る限りは、かなりのキャラでありますが、この童女のような歌声と、突き抜けた感じがなかなかに迫り来る。洗練された音ではありますが、トラディッショナルな部分もちゃんと残していて、彼女の音楽もまた、しっかりと今の在り方なのです。ほんとチリだの何だの関係ねえわ。
QUIQUE SINESI / PEQUEÑOS MENSAJES SONOROS
本作で彼は、日々に体験する情景や感情を、これら多彩な楽器を使い分けながら、色とりどりに紡いでみせる。くっきりと鮮明な演奏でいて、そこから伝わるイメージは穏やかで陰影豊かで、輝く風のようであり、また水面の煌めきのようである。フォルクローレ、タンゴ、クラシック、ジャズなとど幅広い音楽を奏でてきた彼の音楽を、何かの型にはめ込んで聴くのではなく、ジャンルにとらわれることなく、直感的に、感覚的に聴いて欲しい。
SILVIA IRIONDO / TIERRA SIN MAL
Silvia Iriondoはこの作品に、グアラニー族が古くから信仰している「悪なき大地」という理念を託したという。その作業の中で、自らの文化的根源となり得る伝承的な楽曲や、未発表の楽曲を選択したのだという。と書くと、この作品が素朴で古めかしい音楽を収録しているのでは無いかという先入観をもたらしかねない。もちろん楽曲自体には大地の香りが脈打っている。しかし1曲1曲の演奏、ハーモニー、リズム、間合いなどが極限までに突き詰められていて、その結果音楽自体は、現代的で洗練された響きなのだ。Silviaの慈しみ深い、でも神秘をも感じさせる歌唱とともに、過去と現代とを結びつけているのだ。
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