偏愛音楽。 Além do Brasil。
偏愛音楽の16回目はブラジル以外の国のアーティストによるブラジル音楽をセレクトしました。これらは全て最近聴いた音源ではなくて、僕がブラジル音楽を聴き始めた頃によく聴いたものです。
どうしてかというと、ブラジル以外で作られたサンバやボサノヴァは、ブラジル音楽の美味しいところを抽出している部分があって、それが故にむしろブラジル音楽初心者には聴きやすかったのだと思います。ここで紹介したグループなどはメンバーの中にブラジル人がいるケースも多いのですが、リズムの面でちょっと本場のブラジル音楽とは違う、軽さのようなものも感じる場合があります。例えば、パンデイロではなく普通のタンバリンというケースなど違和感はあることも。
Agustin Pereyra Lucenaのように本格的にブラジル音楽に取り組んでいる場合もあれば、「ちょっとブラジリアン・フレーバーをお借りします」的なものもあります。でも僕的にはブラジル音楽を聴き始めた頃に偏愛していた音楽で、心地よいものである事は間違いありません。今回も10作品に絞りました。フルアルバムのみとして、EPは除きました。各々に簡単なコメントを付しています。
*現在までの「偏愛音楽。」はこちらのマガジンでご覧いただけます。
Agustin Pereyra Lucena - La Rana
アルゼンチン人でありながら、ブラジル音楽に大きな影響を受けたギタリスト、Agustin Pereyra Lucenaの1980年作。インスト中心ですが、ヴォーカルも入れながら、ボサノヴァを中心に美しく軽快な音作りをしています。ギタリストとしての技量も出色です。フルート、エレピを含むカルテットとしての音も極上です。最高に心地よい好盤。
Cornelis Vreeswijk - Tio vackra visor och personliga Person
スエーデンの詩人でシンガー・ソングライター。フォーキーな曲と、ブラジル風味の曲が混在していて、なかなか味わい深い音楽です。Tr.1"Deirdres Samba"はChico Buarqueの"Quem te viu, Quem te ve"。その後は2曲はオリジナル。Tr.4は一転、ジャジーかつグルーヴィーな"I Rio de Janeiro"と、全く違うカラーが、1つの統一感を創り出す不思議さ。Cornelis Vreeswijkの歌は、滋味に溢れています。サポートにSabu Martinez。
The Gimmicks - Hảlligäng med Gimmicks
“スウェーデンのセルメン"といわれるGimmicks。その中でもこの盤は特にブラジル色(セルメン色?)の強いものです。選曲もかなりセルメンですね。でもただの物まねには終わっていません。質の高いブラジル音楽のカバー集として、ブラジル風味ののポップ・ミュージックとしておすすめできる盤だと思います。
Heloisa Raso - Samba, Viola e Eu
アルゼンチンが誇るカルト美少女という、Heloisa Rasoの1976作品。ジャケットのHeloisa嬢は、若干メイクが過多ですが。いわゆるwhisper voiceというやつで、コケティッシュ系のお好きな方には「たまりません」かと。ギターがSebastião Tapajosで、端正かつ流麗なviolaoが堪能できます。
Les Masques - brasilian sound
ボサノヴァが好きなのはもちろん日本人だけではありません。これはフランス産ボサノヴァ。Les Masquesというグループによる全曲オリジナル。バックには録音時にフランスにいたTrio Camara。他のメンバーはクレジットがないのでさっぱり分かりません。しかし、出来上がったのはFRENCH FLAVORながらご機嫌のBrasilian Sound。この時代の映画でこういう音よく聴きました。
Maria de Fatima - Bahía Com H
1981年、ウルグアイ産ブラジル音楽の佳作。Maria de Fatimaという女性シンガー・ソングライターの作品で、サポートにHugoとOsvaldoのFattoruso兄弟。Maria de Fatimaのoriginalの出来が素晴らしい。そして彼女自身によるものなのか、ギターの音色がきわめて印象的、ドリーミーな音に仕上がっている。紗のかかったような歌も素敵だ。
Palmeira - Palmeira
Euro-Brasilianの人気盤。1983年のオランダものであります。memberの名前から見て、恐らく2人はBrasil人で、残り4人がオランダ人。女性Vocal2人を中心にして、Euroものとしては比較的ベタじゃない選曲をしている。音的に浅薄な感じは否定しがたいし、リズムもバタバタだけれど、なかなかよい曲もあるのです。
Samba Trio - Tristeza
オランダのブラジル音楽となると、あまり記憶に無いのです。でも数は少ないのであろうけど、これがあるじゃありませんか。1983年、恐らくは和蘭、伯剌西爾混成だとは思うのですが、Samba Trioといいます。でもメンバーを見ると4人いるのです(?)。コーラスワークが絶品のユニットです。Euro-Brasilianとしては人気の高い作品です。
The Silhouettes - Conversations with The Silhouettes
いわゆるセルメンフォロワーっていうのは、世界各国、もちろん米国にも沢山あります。その中でピッツバーグのグループがこのThe Silhouettes。しかしこの人達の音楽は若干指向が違って、独特の雰囲気があります。Brasilの曲はさっぱりやってないし、セルメンフォロワーって言うくくりもどうですかね。Flute, Vibesと、女性Vo.のスキャットを中心に据えて、lounge tasteの濃いsoft rockといえましょう。
Sambôa - Sambôa
本作は、1983年にリリースされたベルギーをベースにしたグループSambôaの作品です。ボサノヴァやサンバの影響を受けた軽快なリズムとメロディが特徴で、ブラジル音楽の要素がふんだんに取り入れられています。「Ze Bede」などのトラックが特に人気があり、ブラジル音楽を西欧的なアレンジと融合させたスタイルが心地よい。