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偏愛音楽。 壊れそうに、繊細な。
偏愛音楽の24回目は、壊れそうなほどに繊細な(Fragileな)音楽をセレクトしました。
僕は繊細さや儚さは、音楽の方向性として偏愛の対象なのですが、この音楽は「Fragile」だなって思う要素としては、そのアーティストの声質の比重が高いかもしれません。あたりまえだけれど、力強く朗々とした歌声は、なかなかFragileとは感じられないわけで、むしろ周りのものや人を壊してしまいそう。そしてあまり歌が上手すぎてもちょっと違うという感じ。なかなか難しいのであります。
やはり基本的にwhisper系のフェミニンな声質で、あまり感情移入が強すぎず、表現が強すぎず、という歌声に僕は「Fragile」を感じるようです。これはおそらくジイさん(←オレ)の感覚かもしれませんが。
ということでセレクトしてみた結果、ほとんど女性アーティストの作品ばかりになりました。今回も10作品に絞りました。すべてガラス細工のように壊れそうに繊細な音源だと思います。フルアルバムのみとして、EPは除きました。各アルバムから1曲ずつ選んだプレイリストも付しました。簡単なコメントもつけてあります。
*現在までの「偏愛音楽。」はこちらのマガジンでご覧いただけます。
*見出し画像はGrokで作った「Fragileな風景」です。わりと良い感じじゃありませんか。
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Astrud Gilberto - A Certain Smile, A Certain Sadness
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良くも悪くもAstrudの歌声は、ブラジル以外のリスナーのボサノヴァに対するイメージを形作ったのではないかと思う。囁くように繊細な彼女の歌声、悪く言えば音程も悪く声量もない彼女の下手な歌声が、何となくその雰囲気でボサノヴァのリスナーの心を捉えたことは確かだ。こうして改めて聴いてみると、まさにFragileで不安定な歌声で、でもそこが彼女の歌の魅力そのものなのだと思う。
The Innocence Mission - Birds Of My Neighborhood
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「Birds of My Neighborhood」は、現在も活躍中で先日もニューアルバムをリリースしたばかりの、The Innocence Missionが1999年にリリースした、壊れそうに繊細で美しい作品です。アコースティックなフォークサウンドを基調に、シンプルでありながら心に響く詩的な音楽を創造しています。リードボーカルのKren Perisの儚く温かい歌声が際立っています。
Jane Birkin - Di Doo Dah
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Jane Birkin(ジェーン・バーキン)が1973年に発表したソロ・デビューアルバム。フレンチ・ポップの名作です。Janeのウィスパー・ヴォイスと、シャンソンやフレンチ・ポップスの要素が融合した作品。アルバムのほとんどの楽曲は、当時のパートナーであったSerge Gainsbourgがの手によるものです。Jane Birkinの軽やかでキュートな歌声がFragileな魅力に溢れています。
Julie Doiron - Heart and Crime
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何年前のことかもはや定かでは無いけれど、Julie Doiron(ジュリー・ドワロン)の公演が山形であった。観客が少なくて寂しい公演になってしまったけど、僕は感激しましたよ。できれば僕が主催をしてもっと多くの方に聴いてもらいたかった。本作は2002年にリリースしたアルバムで、彼女の繊細で内省的な音楽スタイルが際立つ作品です。弾き語りを中心にシンプルに、耳元で囁く様な歌の儚さ。
Loli Molina - Lo Azul Sobre Mí
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ブエノス・アイレスのシンガー・ソングライター、Loli Molina(ロリ・モリーナ)の2019年のアルバムです。自身のギターと歌を中心に、立体感のあるストリングスやエレクトロニカを配したサウンドも素晴らしい。けれど、何と言っても基本となる彼女の楽曲の、麗しきメランコリア。そして清冽でデリケートな歌声に魅了されています。もともと才能のある子だけど、この子本作で化けたと思うな。
The Long Lost - The Long Lost
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『The Long Lost Album』はアメリカの音楽ユニット、THE LONG LOSTの2009年にリリースされたアルバム。THE LONG LOSTは、ヒップ・ホッププロデューサーとしても知られるAlfred Darlingtonと、彼の妻Laura Darlingtonによるデュオ。エレクトロニカ、フォーク、ジャズ、ボサノヴァなどが融合したユニークなサウンドとLauraのFragileな歌声。綺麗でいて、その実かなり捻くれています。そこが凄く良い。
Luisa y el Mar - Nos Vemos Esta Tarde
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Luisa y el Mar(ルイサ・イ・エル・マル)は、アルゼンチンのシンガー・ソングライター、Mauro Meloni(マウロ・メローニ)とDelfina Mancardo(デルフィナ・マンカルド)、そしてポーランドのピアニスト、Ola Wagner(オラ・ワグナー)による共同プロジェクト。儚いメロディー・ライン、Mauro MeloniとDelfina Mancardoの寄り添うような優しく親密な歌声とハーモニー。Ola Wagnerのデリケートなピアノの響き。ミニマルなサウンド・クリエーション。実にfragileな音楽です。
Margo Guryan - Take a picture
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Margo Guryan(マーゴ・ガーヤン)の1968年のアルバムです。僕がまだ洋楽を着聴き始める以前の作品なので、もちろん後年になって聴いたものです。ガキのころはこういうのよく分からんのですが、歳をとると惹かれます。ソフトロックやポップの要素と、Guryanのなドリーミーな歌声と、ジャズやボサノヴァの影響を感じさせる軽やかなメロディとで、壊れそうに繊細な音楽が作られています。
Nara Leão - Nara Dez Anos Depois
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日本でボサノヴァのミューズっていうと、Astrudのことを思い浮かべる人が多いのかもしれませんが、ブラジル音楽ファンとしては断固としてNaraこそがボサノヴァのミューズであることを断言しておきます。このアルバムのタイトル「ナラ・10年後」は、彼女のデビュー約10年後に制作されました。サンバやプロテストソングにに傾いていた彼女が、キャリアの原点を振り返るように、ボサノヴァの名曲を再解釈したFragileな作品です。
Vashti Bunyan - Lookaftering
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本作はVashti Bunyan(ヴァシュティ・バニヤン)が2005年にリリースした作品で、彼女にとって約35年ぶりという長い沈黙を破ってのスタジオ・アルバムです。決して上手い歌い手ではありませんが、繊細で透明感のあるヴォーカルと、静かでミニマルなアコースティックサウンドで、素朴ではありますが旧作に比べて洗練が感じられます。内省的で夢のような、Fragileな響きがアルバム全体を覆い尽くしています。