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偏愛音楽。 秋に聴く、デュオ。

「偏愛音楽。」の13回目は僕の偏愛する「デュオ」のアルバムからセレクトしました。

デュオといってもその形態はさまざまです。歌い手と伴奏者、2人とも歌う場合、男女の組み合わせ、親子、夫婦、男性同士、女性同士などなどがあるわけです。ただこれらのデュオに共通するのは、2人であるが故の音楽的な、あるいは関係性の親密度や補完性ではないでしょうか。最近ではMiltonとEsperanzaのデュオも話題になりましたが、今回僕は選んでいませんが。

ここでは国籍やジャンルに関係なく、素晴らしい「デュオ」による最近のアルバムを思いつくままにセレクトしました。今年は変な秋で、まだまだ季節外れの暑い日もありますが、今回選んだデュオのアルバムには人の声の暖かさや、人と人が寄り添う音楽的暖かさが感じられます。毎度のことではあるのですが、僕の傾向として結果的に静謐な空気感のアルバムが多くなったように思います。

今回も10作品に絞りました。フルアルバムのみとして、EPは除きました。各々に簡単なコメントを付しています。

*現在までの「偏愛音楽。」はこちらのマガジンでご覧いただけます。




Cande y Paulo - Cande y Paulo

ヴォーカルとベースのCandeとキーボードのPauloとのデュオ。アルゼンチンのサン・フアンを拠点としているそうです。このアルバム、プロデュースがLarry Cleinというのも注目です。全てカバー曲の本作、アルゼンチン的民族性はありません。とてもデリケートで審美的な演奏と、女性らしい艶のあるCandeの歌声は、一聴すると甘美なのだけれど、どこか危うさというか、危険な香りを感じるのです。僕はこのアルバム、そして彼らの音楽の肝はそこなのだと思っています。


Carlos Aguirre, Francesca Ancarola - Arrullos

Carlos Aguirreと、チリ人の女性歌手、Francesca Ancarolaとのデュオ作品です。曲はUruguay, Chile, Argentina, Cuba, Venezuelaと、汎ラテン・アメリカ的選曲がなされています。素朴な情感を漂わせるFrancesca Ancarolaの歌唱と、リリカルなCarlos Aguirreのピアノとの対話は、極めて親密で優しいものです。聴くものの気持ちを穏やかに鎮静してくれる美しいアルバム。


Rachael & Vilray - I Love A Love Song!

Rachael Priceの歌声、そして歌い方は僕の好みにドンピシャ。艶があって、余韻があって、なんともカッコいい。本作はそのRachael Priceと、Vilray(ギタリスト/作曲家/歌手)の二人によるデュオの2作品目。古き良き時代を思わせるサウンドは、ノスタルジアに溢れている。Vilrayの繊細なギター、暖かいホーンの響き。ピアノのサポートに二人の歌とコーラスとで、極上の心地よさを与えてくれます


Renato Motha e Patricia Lobato - Dois Em Pessoa

この2人には2回ほど山形に来ていただきました。ミナス出身のギタリスト/作曲家/歌手のRenato Mothaと奥さんPatricia Lobatoのデュオによる、Fernando Pessoaの詩を題材とした美しい作品です。"Sambas"と題されCD1は、Bossa Novaの延長線上にある上品なSamba。"Cançoes"と題されたCD2は、よりslowでsoftな曲が集められている。美しい曲の数々と非常にインティメイトな二人のデュオ。死ぬまでにもう一度この2人に会いたいな。


Rita Payés & Elisabeth Roma - Imagina

歌とトロンボーンのRita Payesと、クラシック・ギター奏者Elisabeth Romaの、親子によるアルバムです。Antonio Carlos Jobim、Chico Buarque、Pixinguinha、そしてGuingaなどのブラジルの名曲、アルゼンチン・フォルクローレ、カタルーニャの伝統曲などを収録。この作品は「娘Ritaが母への誕生日プレゼントとして2日間のスタジオセッションを予約した時から始まった」そうです。親子の寄り添う様に親密な掛け合い、歌心溢れる傑作です。


Roos Jonker - Roos Jonker & Dean Tippet

Roos Jonkerの前作から10年ぶりとなるアルバムは、Dean Tippetとの共同名義でした。ちょっとキッチュなリズムボックスや、くぐもったラッパの音色、そしてアコースティックなギターやピアノの音で綴られた、シンプルで間のあるサウンドと、なんと言ってもロマンティックな旋律に惹かれます。Roos Jonkerの親密な歌声は、とても切ないのだけれど心が落ち着きます。


Sachal Vasandani & Romain Collin - Midnight Shelter

シカゴ出身でNYで活動する歌手、Sachal Vasandaniと、フランス生まれでやはりNYで活動するピアニスト、Romain Collinとのデュオ。なんとも素敵な夜のためのアルバム。Sachal Vasandaniのジェントルで抑えた歌声が甘い情感を綴り、Romain Collinの上品なピアノがその声に寄り添う。ぜひ部屋の明かりを落として、リラックスして聴いてほしい。うっとりするくらい心地よく、でもちょっと胸が疼くような、切ない余韻に満たされます。


The Softies - The Bed I Made

The Softiesは、Rose MelbergとJen Sbragiaによる、アメリカのインディーポップデュオ。このアルバムは、彼女たちの、なんと24年ぶりの新作です。アコースティックギターを中心にしたミニマルな編成と、シンプルで清潔なサウンドがとても魅力的だし、優しいメロディと儚さを感じさせる二人の寄り添う歌声は、24年のブランクを感じさせない清々しい感触に溢れています。


Song Yi Jeon - Home

本作は韓国人女性歌手のSong Yi Jeonとブラジル人ギタリストのVinicius Gomesによる双頭名義のアルバムです。韓国人、やっぱり歌上手いですね。音程がしっかりしているし、テクニカルにも素晴らしい。ブラジル人ギタリストVinicius Gomesもさすがはギター王国ブラジルらしい、流麗でしっかりした技量で、彼女の歌を支えています。。


Tatiana Parra & Andrés Beeuwsaert - Aqui

サンパウロの歌姫Tatiana Parraと、Aca Seca Trioのpianist、Andres Beeuwsaertとのデュオです。Tatianaのデビュー盤、そしてAndresの“D'os Rios”での共演が、二人の作品として結実したものです。この二人、美意識が極めて近い。故にかくも親密で透明な世界を構築し得たのだと思う。「美しい」という言葉で表現したのでは、凄く陳腐に感じてしまう、それほどに珠玉の作品です。


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