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偏愛音楽。 その4:韓国音楽。

偏愛音楽、4回目は韓国の音楽です。

韓国の音楽といえば世界を席巻しているK-POP、NewJeansやBTSなど爆発的に人気があるようですね。でも僕にはあの種の音楽は残念ながらフィットしないみたいです。聴いてみるともちろんそれなりに悪くはないけど、歌って踊ってのパフォーマンスは、生意気をいって申し訳ないのだけれど、僕の好きなテイストの音楽ではありません。

じゃあお前はどういう韓国音楽が好きなんだと問われると、やはり音楽として、あるいは音楽家として、韓国の音楽という枠組みをも超越して、確固とした個性を感じさせるアーティスト、ということにつきます。

さてそういう僕の偏愛は、韓国音楽においては極めて偏狭で、まさに字面通り偏っているのですが、ここに挙げた6組のアーティスト(空中泥棒(旧:公衆道徳、現:Bird's Eye Batang)、Jeon Jin Hee、khc (khc/moribet)、KIMBANOURKE、Minnwi Lee、YOURA)による10枚のアルバムに凝縮されます。女性アーティスト達それぞれの確固たる自我、空中泥棒やkhc、KIMBANOURKEなどの突出した個性に、韓国音楽の先進性を感じます。

*現在までの「偏愛音楽。」はこちらでご覧いただけます。





空中泥棒 - crumblino

この作品はほんと凄いと思う。韓国のアーティスト、公衆道徳改め「空中泥棒」のアルバム。美しいけれどショッキング、煌びやかだけど、どこか非現実的な白日夢的な感覚、ノイズや不協和音もその音の流れの中に効果的に使われて、まったく新しい質感を作り上げている。凄い才能だと思います。


Bird's Eye Batang - 손을 모아 (Flood Format)

韓国の宅録アーティスト。「公衆道徳」から「空中泥棒」、そして「Bird’s Eye Batang」へとその名前を変えていますが、その衝撃度や先進性は変わっていません。極めて独自性の高い、実験精神に富んだストレンジな音楽は、音を浴びるような感覚というべきか、眩い光の粒子が小箱から溢れ出てくるような、閃光のような音の洪水です。


Jeon Jin Hee (전진희) - Breathing

Jeon Jin Heeは、独自の世界観を持つピアニストで、シンガー・ソングライター。本作はピアニストとしての彼女の作品で、極めてアトモスフェリックな独自の世界観を創造しています。静謐でいて感性に響くような演奏はまさに呼吸をしているように自然な感情を描き出します。彼女の曲がドラマのOSTなどにも使われているのはそういう感性が映像にマッチするからでしょう。


Jeon Jin Hee (전진희) - 아무도 모르게 Without Anyone Knowing

前項で述べた通り、Jeon Jin Heeは独自の世界観を持つ韓国のピアニストでシンガー・ソングライターです。独白ともいうべき吐息のようなウィスパーヴォイス、シンプルで端正なピアノの響きを中心に、静謐で素直に美しい曲が多いけれど、切なく真摯な思いが込められたその音楽は刹那の儚さを感じさせて、心は大いに動かされるのふぇす。


khc/moribet - Free to Air

khc/moribetは、2023年にこのデビューアルバムをリリースした韓国の2人組。見事な先進性と実験性で、とんがるところはとんがって、でも音楽としても唯一無二の魅力に溢れています。緩急自在でいて、弾けるようなエンテロピーの高い音像は非常に面白いし、アーティスティックな魅力を備えたユニットです。韓国の音楽の先進性を象徴するような作品です。


KIMBANOURKE - Absence

本作は1999年生まれのシンガー・ソングライター、Kimbanourke(김반월)のデビューアルバムです。清潔なアコギの音を中心に据えたフォーキーな音像に時に電子音を加えた、美しく繊細で時に劇的なサウンドと、儚く消えるような歌声と曲想は、唯一無二の空気感与えてくれます。感覚的には空気泥棒とかに感じる白日夢的雰囲気に共通するものがあります。


Minnwi Lee (이민휘) - Borrowed longue

Minnwi Leeのデビューアルバム。この時すでに「彼女の音楽」として個性が確立されているのに驚かされます。基本的にフォーキーなサウンドを基本としつつ、彼女独特の詩的な世界観を創り上げています。上手い、あるいは凄い歌い手ではありません。でもこの音楽は他の誰にも真似できない。吐息のように囁くような歌声と、物語的世界観は極上です。


Minhwi Lee (이민휘) - Hometown to Come

Minhwi Leeは韓国のシンガー・ソングライター。基本的にはフォークやジャズをベースにしていますが、その音楽はそういうカテゴライズを自ずと拒絶していて、一曲一曲が一編の小説を読んでいるように物語的です。落ち着いた歌声は、聴くものの感情を徒に刺激するのではなく、ストリングスを加えたアレンジとともに、柔らかさとともにリアルな説得力を持っています。


YOURA -(1)

Youra韓国は麗水(ヨス)市出身のシンガー・ソングライター。Tr.1から、ガッチリとハートを掴まれます。とんがった先進的サウンドに、フェミニンで繊細で、でも説得力のある声の魅力。囁き系でありながら基本的に歌が非常にうまい。そしてオリジナルの曲の持つ魅力、訴えかけれくるような、胸騒ぎがするような感覚があります。


YOURA, Mandong - The Vibe is a Chance

Youraと3人組バンドMandongとのコラボ。youraのソロ・アルバムよりこちらはサウンドがさらに尖っていて、アヴァンギャルドで超絶かっこいい。しかしこの子はなんて歌が上手いんでしょう。テクニカルにも表現的にも出色ではないでしょうか。このウィスパー・ヴォイスでこの歌って、やはり凄すぎます。他にはない圧倒的な艶かさがありますね。


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