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偏愛音楽。 Love Korean Music 02.

「偏愛音楽。」の27回目です。最近僕の偏愛の対象となっているカテゴリーの一つ、韓国インディースのアルバムからセレクトしました。昨年7月に紹介した10枚のアルバム以降に聴いたものを中心にしました。前回よりはポップなアルバムを選んでいます。

まだまだネット上で十分な情報が得られない状況ですが、韓国語が読めればだいぶ違うのでしょうね。でも少ない日本語の情報からいろいろ聴いてみて、ますますその魅力にハマっています。音楽性は各々違いますが、なんか韓国の音楽に共通する感触、ブラジル音楽における「Saudade」の様な、まだ言葉で表現し難いなにかがあります。

これは前回もそう思ったけど、男性は柔らかく伸びやかな歌声が多いし、女性はキュートな声質が多いのですが、男女とも基本的に歌がとても上手いのです。特に音程の良さや、歌のもつ余韻は皆さん素晴らしい。サウンド的にもこの時代ですから、世界的に洗練されたそれと全く遜色がありません。

今回も10枚のアルバムを選びました。各アルバムから1曲ずつ選んだプレイリストを付しています。また各々に簡単なコメントもつけてあります。「omm.. / Vacant Room」も素晴らしいアルバムです(以下に音源をリンクします)が、すでに偏愛音楽の19回目で紹介済みなので詳細はこちらのリンクをご覧ください。

*現在までの「偏愛音楽。」はこちらのマガジンでご覧いただけます。
*見出しの写真は歴史的な韓国の街並み。




10cm - The 3rd EP

韓国ドラマのOSTにおいて、「サントラの王子」と呼ばれるほど、多くの楽曲をドラマに提供している10cm(シプセンチ)。切なくて甘くてキャッチャーな、耳にのこる旋律。端正で伸びやかで優しくて、でも音程がしっかりしていて、実に恵まれた声質だと思う。本作は2021年のEPだが、ボサノヴァ的なM1から彼の音楽の魅力が詰め込まれている。彼の音楽がOSTに頻繁に使われるのが納得できる音楽性です。


Aleph - Renaissance

韓国のシンガー・ソングライターです。これはかなりオルタナな音楽です。フォーキーでエレクトロニカでもあり、すこしオフにした残響のある歌とサウンドには、白日夢的浮遊感があります。そして韓国の歌い手の多くがそうなのですが、この人も鼻歌的にサラッと歌っているようでいて、実に歌が上手い。動画やインタビューを見れば、非常にアーティスティックなアプローチで活動していることがわかります。


Damons year - Mondegreen

ピアノと歌で淡々と始まった音楽は、中盤一転して花火を模した予想外の展開に。そしてまた端正な曲想へと回帰する。この1曲目からやばい。Damons Year(デーモンズ・イヤー)は韓国の男性シンガー・ソングライター。本作は2枚目のフル・アルバム。少し鼻にかかった癖のない、しかし奥行きや余韻を感じさせる伸びやかな歌声。基本的に歌が上手いし、極端な感情表現は抑えられている。少し気だるい感じがあり、それも個性になっている。サウンドは間を感じさせるシンプルなもので、全体的にはメロウで心地よい音楽とも言えるが、それだけでは十分説明できない才能が迸っている。


Jeon Jin Hee - Breathing II

ピアニスト/シンガー・ソングライターJeon Jin Hee(チョン・ジンヒ)の、前作「Breathing」の続編となるピアノ・ソロ曲集。本作は2020年から2024年までに録音された楽曲を収録している。タイトルの通り呼吸するように、日々の暮らしの中のインプレッションを淡く優しく、時には切なくパステルで素描したような美しいアルバムです。その日の情景が浮かんで来るような映像的イマジネーションに富んでいます。時には感傷を、時には安らぎを、そして時には感情の高まりを、一曲一曲が一編のドラマのように、さまざまな情動を感じさせてくれる美しい音楽です。


Kim Feelsun - Feelsun.zip

Kim Feelsun(キム・ピルソン)は、韓国のシンガー・ソングライター。韓国の女性は歌がとても安定していて上手い。上手いという表現はちょっと軽くかもしれないが、表現者として優れている。このKim Feelsunも決して力強い歌い方や声質ではないのだが、吐息の様な声質でありながら、歌唱が安定していて音程に余裕がある。ベースはフォーク・ミュージックで、アコースティックな楽器を中心にしているが、それに止まらない洗練された、シンプルなサウンド・クリエーションが彼女の表現をより際立たせている。女性らしい感性をしっとりと歌にのせて、美しい音楽を作り上げている。


Lee Jun Hyung - UTOPIA

韓国のシンガー・ソングライター/プロデューサー。アルバム全体を通して、ロック、ポップ、R&B、ヒップホップ、フォーク、シューゲイザー、エレクトロニカなどの幅広い音楽が融合された多様性のある音楽を創造しています。サウンドはクオリティーが高く、タイトなリズムで緻密に作り込まれています。ちょっとくぐもった、しかし繊細で優しく切なげな歌声には、韓国のアーティストに共通して感じる独特の郷愁があります。


Lee Kang Seung - In other words it's all made by Kyeongsuk

ジャケットがなぜこれなんだって感じで、これで聴く気がうせるか逆に聴きたきなるかはなかなか難しいのでは。Lee Kang Seung(이강승:イ・ガンスン)は韓国・大邱(テグ)出身のシンガーソングライターです。柔らかいエレキギターを中心としたサウンドと優しく温かい歌声と旋律が魅力的です。彼も韓国の歌い手の御多分に洩れず音程が安定しているので、聴いていてストレスがありません。


MEENOI - This is my life

MEENOI(ミノイ)は、韓国のシンガー・ソングライターです。 幼少期をソウルと京畿道で過ごし、漢陽大学で応用音楽(←なんだそれ?)を学んだそうです。この人も囁く様な声質ですが、ラップもはまっているし、基本的に歌が安定していて、かつかっこよさがあります。サウンド的にはヒップな音の上にジャジーなピアノを被せてみたり、基本はヒップホップ〜ニュー・ソウルながら、音楽的に幅が広くオシャレ感があります。この子「Meenoi's Yorizori」という番組では料理を披露しながらゲストとのタメ口トークをしていて、そちらもブレイクしているそうです。


Sagong - optimist

sagong(サゴン)は韓国のシンガー・ソングライター。韓国語で「船人」を意味するとのこと。音楽的な基本となっているのはフォークであり、彼自身も自らの音楽を「牧歌的」という言葉を使って表現している。彼の作り出すサウンドは、各々の楽器の交歓によって、優しげな独特のハーモニーを作り上げている。素朴な歌声も独特の空気感をもたらす要因で、それらにより単なるフォーク・ミュージックに止まらない、彼ならではの独創性を感じ取ることができるのだと思う。


sumin - MINISERIES 2

SUMINはソウル出身のプロデューサー/シンガー・ソングライター、Slomは米国生まれの韓国人ビートメーカー/音楽プロデューサー/DJ。本作は、この2人のコラボ作。Slomの作り上げる先進的でありながらポップなサウンドと、2人による耳に馴染みの良い旋律。SUMINの童女のような声質は、日本でもありがちな声質だとは思うのですが、彼女は音程が素晴らしい。そしてWhisper Voiceでありながら、力強さを感じる歌唱力は唯一無二です。


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