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かっこいい音楽。 その7:「粋」な音楽。(偏愛音楽15)。
今回は僕の生まれる以前の音源や、まだ僕がまともに音楽を聴き始めていない1950〜1960年代に録音された音源から、音楽の「粋」を感じさせるアルバムをセレクトしました。もちろんリリース当時に聴いている同時代的な音楽ではなく、言わば僕の親の世代が聴いていた音楽で、僕自身は後年に聴いたものです。きっとこの記事をご覧になる大部分の方は僕よりもずっとお若いでしょうから、そういう方にとってはさらに馴染みの薄い音楽に感じるかもしれません。ほとんどが今の耳にはノスタルジックに感じる音楽ですが、この時代の音楽には今の音にはない「粋」の感覚があります。「粋」という感覚はいわゆるかっこいい=Coolである、とはまた違った感触であり、現代の音楽には割と当てはまるものが少ないように思います。
今回は米国のジャズを中心にして基本的に「歌もの」を選びました。気がつくと全て男性ですね。例によってあまり多くのディスクを紹介しても聴く気にならないと思うので、今回も10枚だけに絞り、各々に簡単なコメントを付しました。
*現在までの「かっこいい音楽。」はこちらで、「偏愛音楽。」はこちらにマガジンとしてまとめています。ご覧いただけます。
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Bob Dorough - Devil May Care (1956)
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Bob Doroughは、独特のヴォーカルスタイルと軽妙なピアノの演奏で知られています。彼の歌声にはユーモアと遊び心が感じられ、ジャズのスタンダードに新しい命を吹き込んでいます。本作には自身のオリジナル曲も含まれており、特に「Devil May Care」は彼の代表作の一つです。
Chet Baker - Sings And Plays (1955)
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Chet Bakerといえば「Chet Baker Sings」なのですが、僕はこのアルバムも好きです。このアルバムでは、彼のボーカルとトランペット演奏の両方がフィーチャーされています。当時としてはクールなスタイルだったのかもしれませんが、今の耳で聴くとむしろ暖かさを感じます。
Fred Astair - Mr. Top Hat (1957)
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本作は、俳優でダンサー、特にミュージカル映画でのパフォーマンスで誰もが知っている、Fred Astaireのジャズ・シンガーとしてのアルバムであり、キャリアを代表する楽曲が収録されたコンピレーションです。自身が出演した映画やミュージカルでの名曲を粋な歌声で。
Georgie Fame - Rhythm and Blues at the Flamingo (1964)
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Georgie Fameと彼のバンド「The Blue Flames」がロンドンのナイトクラブ「Flamingo Club」で行ったライブ録音。観客の熱気やライブの臨場感がそのまま収められています。タイトル通り、リズム・アンド・ブルースを中心に、ジャズ、ブルース、ソウルの要素が盛り込まれています。
Henri Salvador - Dans Mon lle (1958)
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Henri Salvador(1917年 - 2008年)の1958年のアルバムです。このアルバムは、彼の滑らかなボーカルと軽快なギター演奏が心地よく、トランキライズした気分を与えます。シャンソン、ジャズ、ボサノヴァなど多様な音楽性と、ユーモラスで温かみのある歌声は穏やかにして粋です。
Johnny Alf - Rapaz de Bem (1961)
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Johnny Alfのデビューアルバム。彼の音楽はボサノヴァの先駆的なものの一つとして紹介されることが多いのだが、改めて聴くとかなりジャズ寄りに感じる。しかし彼の「粋」で豊穣なハーモニーは、その後のブラジル音楽に影響を及ぼしたことは間違いないでしょう。
Kenny Burrell - Weaver of Dreams (1961)
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Kenny Burrellはもちろん、ジャズギタリストとして洗練されたスタイルと卓越した技術で知られていますが、本作は彼の豊かなギタープレイの魅力を存分に堪能できるのみならず、小粋で心地よい歌声を聴くことができる素敵なアルバムです。
Matt Dennis - Plays and Sings Matt Dennis (1954)
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Matt Dennisは僕の母が好きだったので、僕はそれで間接的に知ったのです。本作はリラックスしたラウンジーな雰囲気が心地よく、彼の暖かく、インティメイトなボーカルが粋な名盤です。ピアノの演奏と歌声が調和して、親密でノスタルジックな雰囲気を作り出しています。
Mose Allison - Swingin' Machine (1962)
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Mose Allisonは、アメリカのジャズピアニスト兼シンガー・ソングライター。本作は彼の独特なジャズ・スタイルとブルースの融合を特徴としています。柔軟なピアノプレイとユニークなヴォーカルスタイルが一体となって、彼らしい「粋」な感覚に溢れたアルバムです。
Nat King Cole - After Midnight: The Complete Session (1957)
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本作はNat King Coleのピアノと歌、そして彼のトリオを中心に、ゲストミュージシャンが参加する形で制作されたもの。Harry “Sweets” Edison、John Collins、Lee Youngなどの参加でアルバム全体のサウンドが非常に豊かで、卓越した粋な演奏とジェントルな歌声が素晴らしい。