三柴 ヲト

小説書き/青春物やキャラ文、ファンタジー、児童文学を中心に執筆/第1回きずな児童書大賞…

三柴 ヲト

小説書き/青春物やキャラ文、ファンタジー、児童文学を中心に執筆/第1回きずな児童書大賞 優秀賞受賞/2023年5月スターツ出版文庫様より「わたしの嘘つきな神様」発売中/他、別名義既刊4冊/小説家になろう、カクヨム、ノベマ、アルファポリスなどに生息。【icon:佐々森りろ様より】

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About Me 東京生まれ埼玉在住。水瓶座のO型。 気まぐれな小説書きです。 主なジャンルはキャラクター文芸や青春物、あやかし、ファンタジー、児童文学など。ライト文芸系は一部、序盤重めの作品も多いかとは思いますが、最後はほっこりするような優しい終わりを迎える作品が多いと思います。 思いつけばジャンルにこだわらずなんでも書きます。(※全年齢作品のみ) 現在は公募やコンテストを中心に活動中。下記の生息地(小説投稿サイト)あたりに出没します。 基本的にnoteさんでは日記的な何か

    • 「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第13話(全13話)

      第一章【case1.船木家の終活】 第13話   ◇ 「馬鹿だなあ、春子。せっかくこんなに大事な日記を用意してくれていたというのに、預けたことを忘れてしまっては意味がないじゃないか……」  春子さんの日記を最後まで読み終えると、秋男さんはそう呟いてから、目に溜め込んでいた涙を一筋、頬に流した。  閉じられた日記帳の上に、ぽたりと歪な形の水滴が落ちる。  傍らで共に日記帳を読んでいた俺と水先さんは、ただ静かに、秋男さんの心が整うのを待った。  秋男さんはしばしの沈黙を挟んだ

      • 「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第12話(全13話)

        第一章【case1.船木家の終活】 第12話  ――――――  ****年4月15日  今日、あの人と晴れて入籍。  役所からの帰り際、駅前の雑貨屋さんでこの日記帳を見つけ、記念に購入。  新しい日記帳ってなんだかわくわくするわね。  憧れていた結婚式は挙げられなかったけれど、それでも今、とても幸せよ。  ――――――……  春子さんの日記は、秋男さんとの入籍日から始まっていた。  慣れない新婚生活、予算の都合上結婚式は挙げられなかったが熱海へ新婚旅行に行ったこと、妊

        • 「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第11話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第11話   ◇  船木さん宅を後にし、社用車で水先さんが向かったのは水先案内事務所だ。  一旦事務所を経由して、準備を整えてからまたどこかへ行くのだろうと思い、言われた通りに応接室で大人しく待っていると、ほどなくして水先さんがどこかから戻ってきた。  彼女は開口一番に『謎が解けました』といい、何がどうなってそうなったのかと俺を驚愕させたが、残念ながらその場で種明かしはされず、また、時間も遅いことから、後日、船木さん宅に出向きそこで改め

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        • 「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第13話(全13話)

        • 「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第12話(全13話)

        • 「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第11話(全13話)

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        • 「をはらせ屋」全13話
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          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第10話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第10話  ◇ 「以上を持ちまして、本日のサポート業務は終了となります」  午前中の書類作成から始まり、午後の生前整理まで。ずいぶんと長丁場ではあったが、水先さん一人がこなした作業量を考えれば、あっという間の一日であった気がしないでもない。 「先ほどもご説明しました通り、本日回収できなかった大型家財の不用品に関しましては、後日、専門の業者が引き取りに参りますので、その際にはお手数ですがお立ち合いくださいますよう、よろしくお願い申し上げま

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第10話(全13話)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第9話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第9話   ◇ 「わたしもな、後悔ばかりなんだ。あのとき夏樹に、春子に、もっと正面から向き合って、話を聞いてやっていればと……」  ひと通りの後悔を吐き出し、力なく苦笑する秋男さん。  秋男さんも俺と同じように、強い自責の念を抱えて生きていたようだ。理由や事情、状況は違えど、それぞれが過去の過ちに囚われ、悩み、苦しみ、前に進めないでいる。 「なんだか……君の話を聞いてやるつもりが、つまらない話を聞かせてすまんな」 「そんなことありません

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第9話(全13話)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第8話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第8話   ◇ 「大学で、何かあったのかい?」  ふいに、それまで定型的な相槌しか打っていなかった秋男さんが、心の内部まで踏み込んできた。  まさか深掘りされるとは思っておらず、俺は一瞬、言葉を詰まらせる。  俺の人生に最大の影を落とした出来事――大学一年の時に起きた、部活の試合中に起きた不幸な事故――は、思い出すのも辛く、こちら側からは滅多に人に話すことがない。  当然、疎遠になっている友人やかつての部活仲間も気を遣ってその話題はふっ

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第8話(全13話)

          読了本紹介-4- 『春の真ん中、泣いてる君と恋をした』(アルファポリス文庫)

          【読了本感想記録】 『春の真ん中、泣いてる君と恋をした』 佐々森 りろ先生 (アルファポリス文庫)  親の離婚を機会に、昔住んでいた町へ戻る主人公・奏音と、そこで出会う同級生たちを巡る青春物語。優しい文体が特徴的で、読書中、常に脳裏に浮かんでいたのは桜に彩られた美しい情景。とても心地良い世界です。  物語に大きな事件は起こらないものの、生きていく上で欠かせないしがらみや複雑な人間関係が、繊細に丁寧に描かれています。  大人になるにつれて誰しもが学んでいく『折り合い』と

          読了本紹介-4- 『春の真ん中、泣いてる君と恋をした』(アルファポリス文庫)

          読了本紹介-3- 『水面の花火と君の嘘』(ことのは文庫)

          【読了本感想記録】 『水面の花火と君の嘘』 水瀬 さら先生 (ことのは文庫)  大学生の瑞希が、幼馴染の夏帆や目標としていた兄、家族といった大切な人たちの笑顔を取り戻すため過去に戻って奮闘する、一回限定のタイムリープもの。 帰省してすぐ、家族の反応を見て主人公の置かれている状況を理解し、それがなんとも切なくて出だしからずっと涙腺緩みっぱなしでした。  家族への接し方や、料理に対する想いなど、行動の端々に瑞希の優しさや健気さが詰まっていて、彼の心情を思うと胸が苦しくなるの

          読了本紹介-3- 『水面の花火と君の嘘』(ことのは文庫)

          読了本紹介-2- 『わたしを変えたありえない出会い』(スターツ出版文庫)

          【読了本感想記録】 『わたしを変えたありえない出会い 』 (スターツ出版文庫) 孤独泥棒/加賀美真也 先生 残酷な世界に生きる僕たちは/紀本明 先生 君と痛みを分かち合いたい/響ぴあの 先生 声君ノート/南雲一乃 先生 そこにいただけの私たち/櫻いいよ 先生 (※ アンソロジーです) 《孤独泥棒》  孤独な少女と泥棒くんのお話。タイトルセンスが秀逸すぎる。冒頭から遭遇する事件(?)にワクワクして一気にこの本の中に引き込まれました。な、名前…!二人のやりとりは軽妙なの

          読了本紹介-2- 『わたしを変えたありえない出会い』(スターツ出版文庫)

          読了本紹介-1- 『3日戻したその先で、私の知らない12月が来る』(アルファポリス文庫)

          【読了本感想記録】 『3日戻したその先で、私の知らない12月が来る』 木立花音先生 (アルファポリス文庫)  3日間だけ時を戻せる主人公の侑が、自身の未練の解消に奔走する物語。  しかし時を戻したその先で、彼女が辿る運命は必ずしも輝かしいものばかりとは限らず、恋に友情に部活に、葛藤や苦悩を繰り返しながら少しずつ自分らしい色で人生を染めていく健気な様が繊細に描かれています。  小気味よいテンポで話が進む物語前半は等身大の主人公達(キャラの書き分けが巧みでそれぞれ個性が

          読了本紹介-1- 『3日戻したその先で、私の知らない12月が来る』(アルファポリス文庫)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第7話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第7話  ◇    元職人が作った絶品蕎麦を平らげて腹を満たした俺たちは、しばしの休憩を挟んだ後、午後の作業に取り掛かる。  水先案内事務所における〝生前整理・遺品整理サポートサービス〟は、依頼主の要望を聞いた上でまずは現地を確認。妥当なプランや見積もりを出し、その後は請け負う範囲によって対応が異なるという。 「今回の船木様のご要望は、家財の仕分け補助と、納戸に眠る職人道具等の断捨離サポートといった形でお間違いなかったでしょうか?」  水

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第7話(全13話)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第6話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第6話  ◇  二日後の日曜日。再び『水先案内事務所』に集まった水先さん、俺、船木夫妻の四人。  本来であればここに『寺谷』という職員――俺が再三間違われたあのテラヤだ――が追加で入る予定となっていたのだが、諸事情があるそうで、この日はテラヤ不在のまま作業が進行。  午前中から始まった書類関係の作業は、水先さんの手際の良さで恐ろしいほどスピーディーに進み、区切りがついたところで船木宅への移動が始まる。  船木さんの自宅へは、さほど距離も

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第6話(全13話)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第5話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第5話  ◆  滔々と語られた爺さんの話によると――。  船木夫妻はかつて、地元の街角で小さな蕎麦屋を経営していた。  二人には『夏樹』という名前の息子が一人おり、決して裕福な家庭ではなかったが、子が幼い頃は家族三人、身を寄せ合って慎ましやかに暮らしていたという。  息子の夏樹が小学校の高学年に上がる頃になると、夏樹が徐ろに『弁護士になりたい』と言い出した。  どうやら、弁護士の父を持つ友人の影響らしい。  思えば確かに、彼はクラスの中

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第5話(全13話)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第4話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第4話  ◇  今回の依頼人である船木秋男さんは、軽い認知症を抱える妻・春子さんの他に頼れる身内のいない、八十過ぎたばかりの爺さん。  長年、妻の春子さんと二人きりで細々と暮らしていたが、日に日に顕著となる春子さんの認知障害を目の当たりにしているうちに自身の将来にも不安を覚え、『終活』を決意。  たまたま春子さんが手に持っていたメモ用紙の裏側に書かれていた『水先案内事務所』の事業案内ビラに目を留めて迷っていたところ、定期的に世話になって

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第4話(全13話)

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第3話(全13話)

          第一章【case1.船木家の終活】 第3話     ◇  頭上に鳴り響いた呼び出し音に、ぴくりと反応を示す水先さん。 「お客さん、ですかね……?」  助かったような、逆に帰るタイミングを逃してしまったような。  いずれにしても、水先さんにとってもこれは想定外の出来事だったようで、彼女は一度、腕時計の針を確認してからスッと立ち上がる。 「申し訳ありません三瀬さん。この時間に他のお客様のご予約は入れていないはずなんですが……飛び込みの方かもしれませんので、ちょっと確認してきま

          「をはらせ屋」 〜終活サポート水先案内事務所の優しい怪奇譚〜 1章 第3話(全13話)