流行論#1 Jpopの流行のカラクリとジャムの法則
今回は市場論#1ということで、
現代の流行がどのように作られているのかを
Jpopを事例にし、市場構造をジャムの法則を交えながら考察します。
写真は私の楽曲制作スペースです。笑
だいぶ前の環境で、今は機材変わっていますが…Jpopの流行の謎を紐解いていきましょう!
1 .現代Jpop流行トレンドの特徴
まず2010年代以降のJpopシーンを振り返ると、
サブスクリプションと動画系SNSの台頭が大きな役割を果たしてきたことが分かります。
サブスクリプションはApple musicやSpotify、LINE MUSICといった月額制の音楽配信サイトを指しており、これらによってユーザーは定額料金でで膨大なアーティストの曲を聴けるようになり、選択肢の急増という現象を引き起こしました。
動画系SNSはTikTokとYouTubeを主に指しており、後者は動画サイトではありますが、どちらも視聴回数やコメントが重要な役割を担い、これらを通じてアーティストや曲を探すユーザーが非常に多くなっています。つまり、ユーザーが何を聴くかを決定する、いわば購買決定に大きな影響を与えています。
2.選択肢とジャムの法則
ここで1.で紹介した近年のJpopシーンの2つの特徴を言い換えると、以下の通りです。
1.楽曲の選択肢の急増
2.楽曲選択の外部化・受動化
1.は、サブスクリプションや動画SNSで音楽を聴くユーザーが増え、レコードやCDの時代に比べると非常に幅広い楽曲を手軽に聴けるようになったということです。
これにより、ユーザーの選択肢は膨大になり、ある意味何を聴くか決めづらくなったと言えます。
2.は、動画SNSの発展により、ユーザーの間でSNS人気の高い楽曲を聴く、という意思決定プロセスが築かれているということを示しています。
これにより、従来は自分でライブに行ったり、レコードやCDを買ってみたりして好きなアーティストや楽曲を見つけていたのが、流行曲を追うだけになり、選択の外部化、受動化が進んだと言えます。(自分では選ばない、流行に誘導されて選ぶということ)
ここで、マーケティング業界で知られている「ジャムの法則」という考えがあります。
ジャムの法則とは、選択肢があまりに増えすぎると、消費者はむしろ選択できなくなってしまう、ということです。
現代のJpopシーンはまさにこの状況に陥っていると考えます。
現代では、知っているアーティストの大半の曲はサブスクリプションや動画サイトで手軽に聴くことができます。しかし、かつて皆がレコードを必死に買い集め、テレビやラジオの音源を録音していた時代のように、好きなアーティストの曲を夢中になって聴いているでしょうか。
答えはNoです。
現代のJpopシーンにおいて、多くの人が「好きなアーティストがいない」ということは大きな問題だと思います(裏を返せば、誰もが流行を早く掴み流行を追いかけるということは活用できるポイントですが)。ストリーミングを通じた広告収入やサブスクリプションの定額収入、ダウンロード収入などで音楽業界は上手くマネタイズしていくのかもしれませんが、アーティストや楽曲にこだわりを持つファンが減ることは、ライブ収入や長期的な収益確保の観点からマイナスでしょう。
この現状を踏まえ、音楽業界でビジネスを始めるならばどう戦うべきか、そしてクリエイターはどのようにして自らの楽曲を売り出し、戦うべきかについて提言を行います。
3.どう戦うべきか〜ビジネス視点〜
音楽業界でビジネスを行う上では、どんな戦略が有効なのでしょうか。
ここでは、プラットフォーマーとして配信サイトやSNS運営を行う企業を想定し、戦い方を考えます。
まず抑えておくべきなのは、ユーザー目線で考えた時に、SNSが形作っている流行情報が非常に大きな意味を持つことを認識する必要があります。
具体的に言うと、ユーザーは聴く楽曲を選ぶ時はもちろん、利用するサブスクリプションサイトやSNS自体も、SNSや周囲の評判に従って選択する、ということです。
ここではインフルエンサーも重要な役割を果たしますが、それについては別記事で詳しく考察します。
したがって、多くの人が選んでくれるようなサイト・サービスを生む手段は、以下の2つに大別されます。
1.流行に徹底的に合わせ、既存の情報の流れを活用して利用者を確保する
2.既存サービスと差別化し、流行のサービスで顧客不満足が発生しているポイントを攻める
1.は、既に存在している配信サイトなどに倣いサイトを作成し、かつ既存の強力なSNSやインフルエンサーを通じてユーザーを確保する方法で、大きな投資や知名度獲得の時間を要することが多いです。
確実だが地道な戦略と言えるでしょう。
2.は既存サイトを分析し、苦手としているところやユーザー目線で不満足な点に特化したサイトを展開するということです。
たとえば、先ほど選択肢が多すぎる弊害を挙げたように、ユーザーは楽曲の選択肢が多すぎることによって逆に選びきれず、サービス利用頻度が伸び悩んでいることが考えられます。
そこに着目し、ユーザーの選択肢を決めてあげたり、好みに合わせて提案したりするプレイリスト機能を強化したサービスを展開することが考えられます。
しかしこれだけでは他のサービスでもやっていることなので、より差別化した独創的なプレイリスト提案や、プレイリストとは異なる楽曲提案のシステムを創ることが打ち手になるでしょう。
4.どう戦うべきか〜クリエイター視点〜
クリエイターとして楽曲を売り出す場合、どんな戦略が有効でしょうか。
ここではネット中心、特に配信サイトや動画サイトを通じた楽曲リリースを前提とします。
前述の通り、現代では、楽曲を選ぶ意思決定プロセスは8割の人々の間では決定してしまっています。「SNSで流行している曲を聞く」ということです。
また、配信サイトのランキングやレコメンド機能を使うということも挙げられますが、これも基本的には流行に基づいていることから本質は同じと考えます。(リコメンドはAIによる個人の好みの分析もあるので厳密には異なりますが、現状重要な役割は担えていないため割愛します)
ただ、ここでもう一つ重要なのは、音楽が本当に好きで根強いファンになってくれるようなコア層の潜在需要は、流行よりを個人の好みを中心に形成されている可能性があるということです。
つまり、配信サイトや動画サイトの全ユーザーでは、8割の人が流行に基づき楽曲を選んでいる一方で、音楽好きなコア層に絞ると逆に8割の人は自分の好みに合う楽曲を自ら検索するなどして聴いている可能性が高いということです。
これらを踏まえると、以下の2つが有力な施策でしょう。
1.人気楽曲の共通項を洗い出し、それに適った楽曲を作り、大きな配信サイトや動画サイトで売り出すことで大衆層に聴いてもらう
2.ある程度根強いファンがおり、かつ比較的ライバルが少ないジャンルに絞り、音楽好きが特に好む配信サイトや媒体で売り出すことでコア層に聴いてもらう
1.は人気の共通項を洗い出すことと上手くプラットフォーム上でPRすることが必要になりますが、ライバルも多く難しいでしょう。大衆受けするコンテンツに自信がある人が取るべき施策と言えます。(自らが流行に敏感であることも重要)
2.はコア層に絞って売り込むため、市場は小さめですがお金を落としてくれるユーザーは多く、良い市場に参入できれば大きな成果を期待できます。ただ、1ジャンルに絞ること、コアな分目利きの(楽器の評価基準が高い)ユーザーに好きになってもらう必要があるため、明確な得意ジャンルや尖った魅力のあるコンテンツでないと厳しいかもしれません。ですが、市場の狙い方次第では一発が狙いやすい施策と言えます。
以上、Jpopの流行から選択肢の増加について、そしてとるべき施策について述べました。
選択肢の話は現代マーケティング全般で議論になっている大きな傾向ですので、音楽に限らず、より具体的なマーケティング戦略について今後別記事で考察、提言できればと思います。
Jpopのトレンド傾向が次の時代でどう変わるか、必見ですね!
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