瞳に映るもう一つの青
都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
塗った爪の色を、きみの体の内側に探したってみつかりやしない。
夜空はいつでも最高密度の青色だ。
きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さない間、きみはきっと世界を嫌いでいい。
そしてだからこそ、この星に、恋愛なんてものはない。
青色の詩
これは、最果タヒさんの詩集、"夜空はいつでも最高密度の青色だ"の一ページ目に書かれている詩。
そして黒い画面から最初に流れ出した台詞も、これだった。
映画を観た。
それはもう吸って吐く空気のようにほとんど意味を持たずに手に取り深夜になにか、まるで惰性で穴を埋めるように観始めた作品だった。
もう一つの、確実にわたしの瞳に映るもう一つの世界を色濃く映した日常が、流れ流れてくる。これを観終えたわたしは、頬を濡らし世界を鋭く睨むようにベットに横たわった。
煙草を吸いたいと呟くときの、あのじぶんの瞳をじぶんで知っている。だからいつまでも"大人になった"と錯覚してしまうこどものままなのだろうか。
***
綺麗ごとを言っていなければ生きていけないし呼吸ができない人はどうしたらいいの
綺麗な涙を流しているうちは汚れてないよ
安心して、綺麗なままのきみだから
コーヒーを飲むと気持ち悪くなるのにまた飲みたくなる
聴きたくもない音楽をとめどなく身体に流し込む
絶望なんて言葉が安っぽくなるほどに嫌いなこの街を、仮面被って早足で歩く
歩くなんて可愛いものじゃないかもしれない、それはほとんど徘徊だ
誰かに会いたくて、人は
ハチ公なんてどこにいるのかわからないまま、スマホを片手に誰かを待つ
みんな、何を見ているの
何を待っているの
何が欲しいの
何が足りないの
気持ちが悪い、下水道と何が違うのだ何もかもを一色単にして蓋をする臭い匂いがするこの国に、そう思いながら黒い一人となって横断歩道を渡るわたしはもっと臭い
染み付いて染み付いて取れないから、諦めたような目をするのかな
嫌いなままでいい
かわいそうな自分とその瞳に映る街を
嫌いなままでいい
今日も誰かが死ぬ
明日も誰かが死ぬ
わたしは今生きている
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