心の中にりゅうちぇるさんを飼うことと性教育
性教育ブックフェアでも展示している、小川たまかさんの「『ほとんどない』ことにされている側から見た社会の話を。」性暴力や差別の問題などをテーマに取材活動や執筆をされておられるライターさんの著作で、今の社会の理不尽がたくさん可視化されている。先日SNSで「ブックフェアで展示しています」というご案内をしようと読み返していて、どういうわけか一つの記事がグッサリと刺さってきた。
「外見をほめられたら必死で否定しなければいけないあの雰囲気について」
というタイトルでのご論考。
あぁ、あるよなぁ・・・外見だけじゃなくて「褒められたらとりあえず謙遜しておく」って、なんかもう「一つの型」みたいな感じになってるよなぁ。息苦しいよなぁ・・・っていう他人事で終わってしまえば、グッサリはこない。でも小川さんも書いておられたけれども、「あの子自分のことカワイイと思ってるよね。」的な揶揄が最大の悪口っていう少女時代を私も過ごしてきたし、確実に私もそんなふうに思ったり言ったりしていた。ていうか、今全力で「自分のことかわいい!って思えるの最高じゃないか!」って思う反面、その反対のことを叫んでる小さな自分が私の中にいる気配を感じる。その子、絶滅してない。たぶん。
あぁやだやだ!!
と思うぶんくらいは成長してる(年をとった)んだけれども、根っこにある「自分で自分を肯定し、それを表明することへの忌避感」みたいなものは何も変わっていないんだと思う。なんなんだ、これ。馬鹿馬鹿しいし、嫌なんだけど?
なんとなく憂鬱な気持ちで本を閉じ(本のせいでは決してない!)、Twitterを眺めていたら、タレントのりゅうちぇるさんのtweetが流れてきた。芸能関係にほとんど興味がないのでいつもならスルーしてしまっていたと思うんだけど、「ぼくってほんとにかわいい・・・」という本文に、ほんとにかわいいりゅうちぇるさんの自撮り動画(の静止画面)だったので、思わず動画を再生して観たんだけれども・・・
そこにあったのは、「ぼくってかわいい」めっちゃ自分賛美だった。
「ぼく今日ほんとにかわいくない?」「髪も自分で巻いたんだよ。」「どんどんかわいくなっちゃう、どうしよう。」「ナンパされたらどうしよう?」「腋毛見せてびっくりさせちゃう?(笑)」
なんかとんでもなく癒されました・・・
そして時代はきっとよい方へいくよね、若い人たちが新しい時代を作っていってるんだ、ってあったかい希望をみた気がした。
そのままりゅうちぇるさんアカウントに釘付けされて投稿をさかのぼり、「忙しいんだから仕事しろ!」という内なる声を聞きつつも、りゅうちぇるさんの自撮り動画に癒され続けること小一時間。(←ぼくってかわいい系動画を山ほど見れるよ♡)今度は、りゅうちぇるさんの言葉に「うわあぁ!」となった。
毎日が辛い方はぜひ、心の中に僕を飼うと人生が少し楽しくなるよ♡
あなたが失敗したときに、心の中から僕が言うの
「え~仕方なくな~い?何も悪くなくな~い?てか髪染めた~い」
♡ぜひ試してみてね♡
<りゅうちぇるさんのTwitter 10/03のtweetより全文引用>
色んなバリエーションで100人くらいりゅうちぇるさん飼いたい。
その中には「わたしってかわいい!」勢力もたくさん入れて、「自分かわいいって思うのイタイよ」勢の声をかき消したらいいんよな。いろんなちっちゃい私がいるのはもうしょうがないとして、勢力分布を変えたらいいんやん。何を飼って、どう育てるかは、自分で選べるんでは?変に謙遜する私はある程度育ってしまったけれど、もうこれ以上大きくさせないで放っておこう。まぁきっと彼女にも私が「自慢しいで尊大な態度をとる」ことがないように、静かに監視していてもらうお役目があるんだと思う。でもこれからは「わたしってかわいい!」勢を大きく育てて、自分も他者も肯定しながらウキウキ楽しく生きたいな。
そう思えた。
なんだか嬉しくなって、夕飯を食べながらムスメちゃんにりゅうちぇるさんの件の動画を見せた。「かわいいでしょー?」「かわいい!」「ほら、これもかわいいでしょー?」「・・・お母さん、フォローしたらいいじゃん?」「え、だって芸能人とかフォローしたことないし・・」「いいじゃん、フォローしなよ。」ポチ。というわけで、心の中のりゅうちぇるさんをどんどん増やせる環境になりました。
その後もムスメちゃんとえんえんりゅうちぇるさんのメイク動画を見て、おひげのお顔からつるりんキラキラのお顔になるものだから「すごいー!」と感動していた。なんだかとっても楽しそうで、私もすごく明るい色の髪にしたくなった。ずぼらだから「オシャレ面倒くさいなぁ」って思うっちゃう方なんだけれども、きっとしたら楽しいだろうなぁ。色々試しながら「わたしかわいい!」ってウキウキするんだろうなぁ。大事だよね、その高揚。そして誰かからの評価を待たずに、これが好き、こうするのが好き、そうできる自分がいいって思える、最高だ。
たぶん。たぶんね。
性教育の根幹をなす部分って、もちろん正確な知識も当然必要なんだけれども、同じくらいこの「めっちゃ自分賛美」力が深くかかわっているんじゃないかと思う。その力を育むのが性教育であると同時に、その力を「使って」性教育を進めていく、深めていくことになるんじゃないかな。「自分のこころとからだは自分のもの。他者から侵害されない権利がある。」と伝えることが性教育の入口であるわけで、自分がいいと思う表現を他者から抑圧されたり、妨害されたり、ジャッジされたりする謂れはないって心から思えるかどうかがその教育効果の指標の一つになるのではないか。そして自分と同等の権利を持つ他者もそれとして尊重するために、自分のこと、自分と違いのある他者について学び、かつ尊重する術や方法、作法を具体的に身に着けていく過程を踏むことになる。この過程においてきっと自分賛美力は、「それいいね!」「それ(で)いい」という他者賛美(尊重と同意で使っている)を育む力となってくれるように思うのである。さて、どうなんだろう。みなさんと一緒に考えていきたいと思うので、ブックフェアや生理用品展示体験会来てね~(と宣伝につなげる)。
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