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ユダヤ教の食戒律「コーシャ」を科学的に考察してみる

イスラエルを訪れ、いくつかのユダヤ人家庭で一緒に料理した。彼らの生活の根底にあるのがユダヤ教の食戒律「コーシャ」。多くの人はその理屈には踏み込まず「そういうもの」として過ごしているけれど、イスラム教のハラルと同様に、大昔から決められている宗教戒律にはそれなりの合理性があるはずだ。その裏にある科学的意味合いが気になった。

現地で聞いたことやネットで調べた断片的な知識だけれども、なるほどと思ったことをまとめておく。

ハラルに比べても情報が少なく、適当な論文も見つからないので(そもそも宗教戒律に科学的に挑むことが冒涜とも言える)、一つの見方でしかないのだけれど。詳しい方、ご意見ご指摘お待ちしています。

コーシャの規定とその科学的妥当性

コーシャ規定は数々ある。ひとつひとつ考察してみる。

1. 分かれた蹄を持ち、反芻する動物以外食べてはいけない
→つまり禁止されているのは、ブタ・ラクダ・肉食動物。いずれも生物毒を多く含む可能性が高い動物だ。ブタは雑食で何でも食べる、ラクダは水が乏しい砂漠の生き物、肉食動物は食物連鎖の上位にいるため有害化学物質が生物濃縮されている。分かれた蹄を持ち反芻する動物(=草食動物)に比べて、肉に有害物質が含まれるリスクは高い。
ラクダについては、砂漠地域の貴重な使役動物だから殺すことを禁止した可能性も?

2. 鳥類は一部のもの以外食べてはいけない
→禁止されている鳥の代表は猛禽類。肉食なので、やはり食物連鎖により有害物質が生体濃縮されているリスクが高い。

3. 牛の屠殺においては、牛に苦痛を与えないよう鋭い刃物で頸動脈を一瞬で切らなければならない。また専門家が牛に病気がないことを認めなければならない。
→病原菌を持つ不健康な個体が避けられる、衛生的に汚染(コンタミネーション)される可能性が防がれる。

4. 牛肉の脳・脊髄・腱は除去されなければならない
→狂牛病の病原体が存在しうるのがこれらの部位。感染のリスクが防がれる。ちなみに牛の個体の後ろ4分の1は、通常の処理でこれらを部位を除去することが難しいため、コーシャミートとして出荷できない。

5. 屠殺した牛肉は(24時間以内に)粗塩で血抜き処理されなければならない
→血抜きされることで、肉の劣化や腐敗が防がれる。塩漬けにされることで、雑菌の繁殖が防がれる。(ちなみにこの塩漬け処理のために、コーシャミートはパサツキがちといわれ、また軽い塩気がついている。またこの処理に使われることから、粗塩をKosher Saltと呼ぶ。)

6. 貝類・甲殻類を食べてはいけない
→これらは海底を這う「海の掃除屋さん」。有害なバクテリアやウイルスや藻を食べて体内に毒素をためている可能性がある。

7. 乳製品と肉をまぜてはならない(旧約聖書の記述は「子山羊をその母の乳で煮てはならない」)
→これについては複数の解釈が存在する。
①クロスコンタミネーションが防がれる(生肉と乳製品を一緒にすると雑菌繁殖しやすい)
②乳糖不耐性相の人が安心して「肉」または「菜食」のものを食べられる(コーシャ規定のもとですべての食品は肉(fleishig), 乳(milchig), どちらも含まない(pareve) のいずれかのラベル付けをされるから)
③両方食べたらタンパク質とりすぎ

8. 加工食品は協会の認証を受けなければならない
→製造場所の立入検査を受けることによって、衛生的な環境での製造が担保される。実際コーシャ認証を得るためのガイドラインを見てみると、原材料の品質と衛生管理にかなり気が使われていることがわかる。

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まだわからないことも多いけれど、調べれば調べるほど、安全に健康的な食べ物を得るための手引きとして、コーシャがうまくできていることに驚いた。

ユダヤ教が生まれたのは、エジプト〜メソポタミアにかけての砂漠地域。現在のような食料供給システムができるはるか昔、砂漠で食料を探さなければならなかった時代、人々は「あっ、あの蹄が分かれた動物、反芻してるから食べて大丈夫そうだ」なんて思っていたのだろうか。


コーシャのもとで料理をする人々の話はこちら↓

参考文献:

Spirituality vs Science: Is Kosher Food Safer? (HUFFPOST)

Top 10 Kosher Meat Mysteries — Solved! (The Forward Association)

Kosher Food: Everything You Need to Know (heatlthline)

Kosher Food (Department of Nutrition and Food Science, Texas A&M University) 

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