(19)儚い色
明け方に地震の揺れで目が覚めて、雨音を聞きながらまた寝てしまって目が覚めた時にも雨はまだ降っていた。雨の朝は、猫たちは起きて私を待つことはしなくて、籠の中にいて、人の動きを観察して慎重に動く。
昨日グリーンカーキに染まったレッグウォーマーは夜には緑味がなくなっていた。生乾きだったので干していたが、直射日光は当たらなくても陽の光で退色したのかもしれない。がっかりしたけれど足にしてみると濃い色よりもいいかも、と気を取り直すことにした。始めた時よりは上達したはず。
絵の具でもパステルでも、作られた画材はその通りに発色するのに、植物から採った染料は見た目の色と残る色が全然違うから戸惑う。何代も何代も時間と知恵を重ねて色を残す方法を考えたのだ。今私が何かの説明を読みながら当たり前にできることは、どんな事でも過去の人の行為の積み重ねと思うとき、気が遠くなりそうになる。
花合わせはぼちぼちと進み、中腹くらいまで来た。数軒先の家の前にある年やってきて咲いていた立葵が、谷の手前の階段のひび割れから芽を出して真っ赤な花を咲かせている。立葵は確実に歩を進めているようだ。
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