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なぜ中国の経済は崩壊しつつあるのか?


恒大集団の米国破産法申請から見える中国経済の実態

 中国最大手の不動産開発会社である恒大集団が米国で破産法第15条の適用を申請したニュースは、国内外で注目を集めました。この出来事は中国不動産市場の崩壊だけでなく、国全体の経済構造に深刻な影響を及ぼしていることを象徴しています。

 本記事では、恒大集団の破産申請が意味するもの、中国経済の現状と課題について、具体的なデータや専門家の分析を交えながら詳しく解説します。



1. 恒大集団の米国での破産法申請

 2024年8月17日、恒大集団は米国で連邦破産法第15条の適用を申請しました。これは、米国内の資産を保護しつつ、債務再編を進めるための措置であり、完全な破産を意味するものではありません。

 この法的手続きによって、海外債権者による資産差し押さえを防ぎつつ、経営再建の時間を確保する狙いがあります。

 恒大集団の負債総額は約49兆5000億円(2023年末時点)に達しており、すでに2021年から債務不履行(デフォルト)状態に陥っています。この負債規模の大きさは、金融市場全体に不安を与え続けています。


2. 中国の不動産バブルと崩壊

 恒大集団を含む中国の不動産市場は、「先売りモデル」と高いレバレッジを基盤に急成長を遂げてきました。完成前の物件を販売し、その収益を次のプロジェクトに再投資するビジネスモデルは、不動産価格の高騰に依存していました。

 この成長モデルは、1990年代から2000年代にかけて日本で見られた不動産バブルとも類似しています。

 しかし、2020年以降、習近平政権は「不動産価格の高騰による庶民の住宅購入困難」という社会問題を背景に、不動産業界の過剰な利益を抑えるための規制を強化。銀行融資の縮小や財務管理基準の厳格化が行われた結果、資金繰りが悪化し、未完成の物件やローン支払いに苦しむ購入者が続出しました。

 この結果、需要が急減し、不動産価格が平均20%下落。一部地域ではさらに大幅な価格下落が報告されています。これにより、不動産市場は負の連鎖に陥っています。


3. 高レバレッジ経営の脆弱性

 恒大集団を含む多くの不動産企業は、高いレバレッジを利用した経営に依存していました。特に恒大集団は短期間で成長を遂げましたが、膨大な負債を抱える結果となりました。2021年の時点で負債総額は10兆円を超え、現在では約49兆5000億円に拡大しています。

 こうした経営モデルは、不動産価格が上昇している間は利益を生むものの、一旦価格が下落し始めると極めて脆弱であり、今回の危機を引き起こした主要因の一つです。


4. 不動産業界全体の危機

 恒大集団の問題は単独のケースではありません。例えば、碧桂園(Country Garden)は2024年上半期に約1兆1000億円の赤字を計上し、デフォルトのリスクに直面しています。同様に遠洋集団(Sino-Ocean Group)も約4000億円の損失を出し、ドル建て債権の利払いが滞っています。

 さらに、国際通貨基金(IMF)は、不動産問題を解決するためには、今後4年間で少なくとも約7兆元(約140兆円)の財政資金投入が必要であると試算しています。このように、不動産業界全体が危機的状況にあり、中国経済全体への影響が懸念されています。


5. 中国の不動産市場における調整期


不動産市場の現状
 中国の新築住宅販売は、2020年以降半減し、建設活動も2021年のピーク時から3分の2減少しています。これにより、不動産業のGDPへの寄与度は2009年以来の低水準となっています。価格面でも平均20%の下落が見られ、一部地域ではさらに大きな下落が報告されています。

地方財政への影響
 不動産バブルの崩壊により、地方政府の主要な歳入源である土地売却収入が激減。これが公共サービスの停止や罰金徴収の強化といった形で市民生活に深刻な影響を与えています。

政府の対応と課題
 中国政府は、不動産市場の安定化を図るために地方政府による未販売住宅の購入を促すなどの対策を講じていますが、地方政府自体の財務状況が不安定であるため、施策の効果には限界があります。また、価格下落を抑制する姿勢が、日本のバブル崩壊後の長期停滞と類似しているとの指摘もあります。


6. 気候災害と経済危機の複合要因

 不動産バブルの崩壊に加え、中国では大洪水などの気候災害が企業業績に悪影響を与えています。これにより、不動産業界の低迷は他分野にも飛び火し、経済全体が厳しい状況に追い込まれています。


7. 今後の展望


 専門家の間では、不動産市場の調整が2024年末までに安定する可能性があるとの見方もあります。しかし、都市化の進行や住宅需要の減速が続く場合、2025年以降も市場の低迷が続くリスクが指摘されています。

 また、IMFは、未完成物件の工事完了を含む問題解決に、膨大な財政資金投入が必要だと試算しています。この状況を受け、中国の不動産市場の調整は長期化する可能性が高く、政府の効果的な政策対応が求められています。


結論

 恒大集団の破産申請は、中国不動産市場と経済全体の深刻な危機を象徴しています。この問題は国内だけでなく、世界経済にも波及する可能性があり、今後の動向から目が離せません。

 中国の経済構造の脆弱性と今後の政策対応が、経済の命運を握る重要なポイントとなるでしょう!


 

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