『おもちゃ箱』(過去作)
一方通行の風が止まれなくて窓を叩く。
私はこの安全で快適な場所に閉じこもる。
「風すごいね」
「外、出てみない?」
『やだ。』
一度、拒否の旨を伝えたはずなのに懲りずに何度も誘ってくる。
『ねぇ本当うるさい。』
強めの一蹴にしょんぼりとした君は大人しくコーヒーを啜った。
しばらく経って窓を叩く音に雨音も混ざり始めた。
「ねぇ、やっぱり外行ってみない?」
『無理。』
「頑固だな…」
『頑固って、〇〇こそこんな天気なのに』
呟いた瞬間、私の手は〇〇の大きな手に引っ張られた。
「こんな天気だから!」
さっきまでコーヒー片手に少し余裕を持った大人な雰囲気だった君は、苦い匂いだけを身に纏った純粋無垢な子供みたいだった。
そんな〇〇が私に提案してくる事に何故だかにムカついた。
私を映したその瞳も、
私と繋がれたその腕も、
私に微笑むその唇も、
全部、私のおもちゃなのに。
『外には行かない』
またしょんぼりとした〇〇が少しだけ可哀想で、慰め半分、君の唇を奪った。
一瞬だけ苦しそうな息が聞こえたけれど、次第に湿った吐息に変わる。
無理矢理舌で唇をこじ開けて、〇〇の中を掻き回す。
生ぬるいガムが生きているみたいで気持ち悪い。
『分かった?』
「…うん」
私たちは繋がれたままの腕を引いて暗い寝室へ向かった。
体温
感触
鼓動
呼吸
瞬き
声
その全てが私のおもちゃ
『〇〇が遊びたいなんて生意気。』
『私が遊びたい時に相手してくれればそれでいいの。』
そう言い残して、もう一度重なった。
終