今日のセブン 22
スコーンの思い出は二つある。一つ目は大学時代に食べたスコーンである。友達が哲学カフェみたいなのをやっていて時々お邪魔していたのだが、その時出されたお菓子がスコーンであった。しかも自家製である。見た目は味気ないが、外側が固くて、中が結構弾力のある柔らかさがあって、ほんのり甘い。とりわけ中の弾力のある柔らかさは新発見でこれが僕の好みであった。普通外側がカリッとしているおやつ、例えばシュークリームとか、あるいはおやつじゃなくても香ばしく焼き上げたパンなどは、外がパリっとしていて、中はフワッとしている。スコーンはそうではなくて、弾力の塊なのだ。つまり餅のような弾力があって、これが私にとってはどハマりであった。二つ目が年末に行った鎌倉だ。もう大半の店も閉まってしまった帰りがけに、一件だけ空いていたビルの二階にある喫茶店に行った。お洒落な喫茶店であったが値段表を見るとデザートが1000円からしかなかった。どうやらハイソが赴くお店らしい。しかし入ってしまってはもう仕方がない。せっかく鎌倉に来たことだし、1500円ぐらい払えないわけでもない。そこで私はスコーンを頼んだ(厳密には兄のおごりであった)。スコーンは大学時代好きな食べ物となっていたが、これは1000円もするスコーンである。どんなもんであろうと。
スコーンがやってきた。なるほど、見た目はさほど変哲もない。あの味気なさは変わらない。そして食べてみる。なるほどと思った。外側がサクサクっとしていて、中があの弾力のある柔らさだったのだ。つまりこれこそスコーンの真骨頂なのだ。この外と内の非対称は熱がなくなっていくにつれ徐々に小さくなっていく。内側は冷たくなっていくと柔らかさが消え、固くなっていく。つまり焼きたてこそスコーンの一番の魅力でそれをこんな喫茶店で堪能できたのは、なんだかよく分からないが鎌倉に来て正解だったと私に思わしめた。
さてセブンが何やら新商品を出し始めた。オーブンであっためてから食べるパンシリーズである。ちょっと高めであるが、まあ見た目は美味しそうである。その中にスコーンがあった。!と思った私は、久しぶりにスコーンを味わいたいと思い買ってきた。
見た目は相変わらずスコーンである。オーブンで1分らしい。1分焼くとあったまって食べごろになる。これは美味しそうだと思って食べてみると、果たせずかな、どうやら自分がスコーンであることを忘れてしまっているようだ。まず外側があっためたことによって柔らかくなっている。そして中に弾力はなくただ柔らかい。つまり非対称など存在せず、まるで下手くそが描いた絵画のように、のっぺりとしてしまっている。これは、思うに、スコーンではない!と思った私だが、買ってしまったので食べ切らなければならない。生憎3個入りなので、後二つも残っている。やむなく私はスコーンに近づけるべくある対策を考え出した。焼かない、ということである。オーブンで温めないと、幾分かは彼はスコーンなのだ。あっためると自分がスコーンであることを忘れてしまうセブンスコーン君。君、頭を冷やしておいてくれたまえ。