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⼤⼈になるきみへ⑦ 「出会い」……それは、素敵な予感

★★★『大人になるきみへ』というのは、帝京大学病院難聴児親の会のメンバーが、5年間話しあい、知恵を出し合って執筆し制作した小さな本です。幼児期の言語指導を終えて、これから思春期を迎えようという子どもたちに向けああでもない、こうでもないと言い合った挙句にたどりついた11本のメッセージ。8人のお母さんたちが分担して執筆しました。
4本めのメッセージは「出会いの奇跡」と「人間関係を培っていくヒント」について語っています。
難聴のある子どもたちは、聞こえの制約や会話の不安から、コミュニケーションを楽しむことに二の足を踏むこともあるかもしれません。そんなときには、友だちと知り合いたい、気の合う友だちとの交友を楽しみたいという気持ちを改めて大事にしたいものです。会話に多少の不自由や不安があっても、やっぱり仲間を求める気持ちを大切に育みたいものです。★★★

「出会い」……それは、素敵な予感

⼈間の⻑い⻑い歴史のなかの「このとき」に、そして、広い広い地球のなかの「この場所」に、きみは⽣きているのです。江⼾時代でも明治時代でもない、まもなく21世紀を迎えようとする「このとき」に、アメリカでもなくイギリスでもない、この⽇本という国の「この場所」で、きみは呼吸しているのです。

きのうケンカしたあいつだって、今⽇優しくしてくれたあの⼦だって、「このとき」「この場所」で出会えるのは、まさに奇跡的と⾔ってもいいくらいの「出会い」なのです。
考えてみてください。⽇本⼈1億2000万⼈のなかで、きみが知っている⼈というのは、 100⼈にも満たないでしょう。どんなに⻑⽣きしても、出会える⼈の数というのは、そう多いものではないのです。
「このとき」じゃない時間に、「この場所」じゃないところに、まったく別の⼈が⽣きていて、たくさんの「出会い」をしています。「このとき」「この場所」のきみだけの「出会い」を⼤切にしてほしい!

「出会い」──それは、出発なのです。
感じたことがありますか? 学校だって、クラスだって、本当に偶然の出会いから始まっているのですよ。
きみのお⽗さん、お⺟さんとの出会いにいたっては、何万分の一の確率で成⽴した神秘の出 会いなのですよ。

さて、そのように「出会い」とは奇跡的であり、偶然の産物なのですが、その「出会い」を素晴らしいものにするかどうかは、きみ次第なので す。
いや、もちろん相⼿にもよります。しかし、「出会ってしまった」のですから、この⼈間関係をより良いものにしていく努⼒を、きみ⾃⾝から始めてみることは、とても⼤切なことです。

例えば、クラス編成後の新学期、ああいい⼈だな、友だちになりたいなと思うような⼈と出会ったりするでしょう。きみ⾃⾝の⼼が揺れて、その⼈との交流を望んでいるのです。この⼼の揺れを⼤切にしてくださいね。すぐにフタをしたりしないで、さぁ、アタックしてみましょう。 ⾃分から、その⼈に働きかけてみるのです。

きみが感動した本のこと。あるいは、きみの得意なスポーツのこと。昨⽇⾒たテレビのこと。なんだっていいのです。話しかけてごらんなさい。
その⼈が忘れ物をしたときには、進んで貸してあげましょう。きみが忘れ物をしたときには「貸してもらえる?」と、働きかけてみるのです。
きみの⼼の揺れは、⼩さな触れ合いで相⼿の⼼をも揺らし始めます。素敵な始まりです。

その逆もありますね。好きで⼊ったクラブなのに、「な、な、なんだ!?」と思ってしまうようなあいつがいた! なんてことは、よくあります。イヤ~なやつに出会っちゃったわけですね。こういうときは、まず、きみの⼼と向き合ってみることです。どうしてイヤなやつだと思ったのでしょう。もしかすると、単なる第一印象ということもあります。あるいは、たまたま、そのときだけのやつの失態ということだってありえます。相⼿の⾏為の失敗を即、相⼿の⼈格として決めつけてはいないでしょうか?

⼈との出会いで損をしてしまうのは、はじめに相⼿の⼈物像を⾃分サイドでつくり上げてしまって、あいつは⾃分とは合わないイヤなやつだと決めてしまうことなのです。真に奇跡的に出会った相⼿なのですよ。いいところはないか、好きになれるところはないか、静かに⼈間ウォッチングをしてみてください。

きみの⼼の持ちかたしだいで、出会いが点で終わってしまうのか、⻑い線、そして広い⾯として豊かな関係に発展していくのか、違ってきてしまいます。⼈間、そんなにたくさんの出会いをするわけじゃないのです。出会える⼈は限られているのですから、こいつはイヤだ、この⼈とは合わないと、⾃分からプツン、プツンと⼈間関係を切っていってしまうと、きみの周りには誰も残らなくなってしまうことだってあるのです。

出会った⼈を受け⼊れる⼼を持つように努⼒しましょう。⼼のチャンネルを切り替えるのです。
きみの⼼の1チャンネルでイヤだと思っても、きみの⼼の2チャンネルで、おっ! なかなかいいところもあるじゃないかと思えたら、2チャンネルの⼼で付き合い始めればいいのです。
これは顔⾊をうかがって媚びるということではありませんよ。先⼊観のない、受け⼊れられる⼼を持とうということです。

☆Special Thanks to*  mocmocさん(cat's color illustration)

⼼のチャンネルがたくさんある⼈は、⼼が⼤きく豊かになれるはずです。⾃分と似たタイプの⼈が必ずしも合うわけではないのです。案外、合いそうもない性格の⼈同⼠が親友になっちゃったなんてことは、世のなか、たくさんあるのです。もちろん“天敵”のようなやつもいるでしょう。“天敵”との出会いも「出会い」のひとつです。⼤いに、結構! ⾃分の肥やしにしていくつもりで、頑張ってごらんなさい。

さぁ、⼼を開いて、いい出会いをしてください。「出会い」を素敵なものにしていきましょう。
「出会い」は限られていますが、出会うチャンスは⼀⽣あります。きみはこれからも友だちと出会い、先⽣(師)と出会い、そして恋⼈と出会うことでしょう。それぞれの出会いは何よりも財産です。
素敵な⼈は、出会いをどんどん素敵なものにしていく⼒を持っています。前向きに、⼼豊かに、たくさんの「出会い」をして、素敵な⼈⽣を歩んでいってくださいね。



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