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大人になるきみへ⑧ きみが思っているように、⼈は思っていない

★★★『大人になるきみへ』というのは、帝京大学病院難聴児親の会のメンバーが、5年間話しあい、知恵を出し合って執筆し制作した小さな本です。幼児期の言語指導を終えて、これから思春期を迎えようという子どもたちに向け「ああでもない」「こうでもない」と言い合った挙句にたどりついた11本のメッセージ。8人のお母さんたちが分担して執筆しました。
5本めのメッセージでは、聴こえに障害があっても、なくても、思春期には誰もが陥りがちな自意識過剰の思い込みについて、やさしく丁寧に、リアルなシーンを交えながらお伝えしています。
こうした悩みから学校嫌いになったり、孤独感を感じたり、というのもよくある話です。でもそこで内向きにならず、反対に「聞こえない・聞こえにくい自分」について仲間と踏み込んで語りあう大切な時間とすることで、自信を取り戻し、生きる力が湧いてくるのではないでしょうか。★★★

きみが思っているように、⼈は思っていない

きみは、⾃分がみんなにどう思われているのかを考え、そのことで思い悩んだことはありませんか?
声をかけてくれないから、嫌われているのではないか。挨拶してくれないから、無視されているのではないか……、そんな⾃意識過剰になっているきみには、こんな経験が必ずいちどはあるはずです。

⽿が聞こえないことで劣等意識を持ち、情報不⾜で周りの状況がわからず不安を持ち、相⼿がみんな、⾃分より優れていると思い悩んでいるきみ。その⾃意識過剰が問題なのです。

そして、その思いが強くなりすぎると、社会の⼀員として⽣活していくのも難しくなってしまいます。
相⼿がこう思うのではないか、こう考えるのではないかと先回りして考え、ひとり悩んでしまうことは、果たしてこれからのきみにとって重要なことなのでしょうか…。

きみは、⽿から情報が⼊りにくいぶん、かなり視覚で補っていると思います。そのため、⾒た⽬の相⼿の顔⾊やしぐさなどから、結論を急いで出してしまってはいないでしょうか?

たとえば、少し離れたところで、数⼈が集まっておしゃべりをしていたとします。きみは離れたところにいて、それを⾒ていたとします。
その中のひとりが、きみのほうを向いて、またみんなの話の中に⼊って笑ったとします。
きみは きっと⾃分の悪⼝を⾔っているに違いないと取ると思います。きみでなくても、その場にいたら誰もが思うに違いありません。
でも、⾃意識過剰のきみは、さらに「⾃分のいないところでも、いつも何か⾔われているのではないか。いや、クラスのみんなから嫌われているのではないか」と⾃分を追いつめることになってしまうのです。

でも、本当のところはどうでしょうか?
きみとは全然関係のない話をして笑っていたかもしれないのです。なぜならば、本当は、⼈は他⼈に対して、いつも気にしていろいろ思っているということは少ないからです。
きみだって、常に他⼈のことばかり考え、気にして⽣活してはいないはずです。
ただそれが、⾃分がいつも迷惑をこうむっている相⼿だった場合は、話は少し違ってきます。いつもその⼈の⾏動が気になるはずです。でも、実際、きみの周りにはそんな⼈たちばかりではないはずです。

⼈の視線ばかりにとらわれすぎて、ウロウロと引き回されていたのでは、何の進歩もありません。
「こちらから先に声をかけたり、挨拶してみればよかったかな」と考えることも、とても⼤切なことなのです。
そして、⾃分が考えたことを相⼿に話してみたり、⼈に伝えてみましょう。⾃分が正しいと思ったら、「⼈はこう思うに違いない」と恐れずに、誇りを持ってどんどん⾃分をみんなの中に出していってほしいと思います。

⼈間は、それぞれ顔や性格が違うのだから、考え⽅だって違って当然なのです。違うことは恥ずかしいことではないのです。そして、⾃分のとった⾏動について、さかのぼって思い出し、これで良かったのか、もっとこうしたほうがよかったのではないか、と考えてみましょう。
⾃分を⾒つめなおせば、⼈と⾃分は違い、⼈それぞれに、いろいろな考えや思いがあることを知るでしょう。周りの⽬ばかりを気にせず、きみが正しいと思ったことは、勇気を持って⾏動に移し、誇りを持って、これから先を積極的に⽣きていってほしいと思います。

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