意向表明書とは?|M&Aアドバイザー超初心者向け基礎知識!⑳
こんにちは。かきもとみさです。私は世の中に少ない女性M&Aアドバイザーとして仕事をしています。これからは女性M&Aアドバイザーを育てたいと考えており、「超初心者」向けにノウハウを発信しています。
M&Aの基本的な流れは、以前下記の記事にまとめました。
記事:M&Aの基本的な流れ!
その中でも、今回は「意向表明書」にフォーカスして話をしたいと思います。
意向表明書の位置づけ
まず、この書面の意味を説明したいと思います。
意向表明書は、買手から売手に対して、「本格的に御社をM&A(買収)したいため、是非前向きに検討させてください」という意思表示です。
英語では、Letter of Intention と言い、LOIと略されます。
簡単に言うと、これは買手企業から売手企業へのラブレターです。
「ぜひ、うちの会社に振り向いてください!!」という好意を伝えるための正式な書類だと考えてください。
意向表明書の内容
その内容は、どんなことを書くのかを簡単に紹介します。もちろん、案件によりけりですので、あくまで私のケースということで。
①会社紹介、事業紹介
まずは買手企業のプロフィールを書きます。その際に、これまでM&A経験があるのだとしたら、それも書いておいた方が、売主に対して「M&A経験が豊富である」としっかり伝えられるので良いでしょう。
②本件検討の理由(買収目的)
ここが一番重要です。売主に対して、下記のような内容を伝えます。
アドバイザーによっては、このあたりは全然厚くしないケースもあるようですが、私は「思いの丈をぶつけてください」と言うようにしています。
最近のケースでは、A4文書3~4枚分もびっしりと熱い内容を記載して売主に提示したケースもあります。
多ければ多いというわけではありませんが、この意向表明書の提示時点では、ライバルの買手企業候補が他にもいることが想定されますので、強い想いが伝わった方が良いのではないかなと思います。
③スケジュール概要
意向表明書を提示し、無事に買手に受理され、今後M&A協議をすすめられた場合にどのようなタイムフレームで進めていきたいと考えているのかを大まかに記載しておきます。
ここで重要な点ですが、意向表明書が受理されると、基本合意を締結する流れになります。
この時に、一定期間、1対1でM&A協議を行う「専属的交渉期間=独占交渉期間」というものを設定します。
この意向表明の時点で、希望する独占交渉期間を暫定的にでも記載しておくと良いと思います。一般的には最低でも1カ月間は設けると思います。
私のケースでは「基本合意締結日から3ヶ月間」としていますが、案件のサイズによってここは変更して良いと思います。
④基本的な買収要件
意向表明書の時点で想定している、譲渡対価、また社長(売主)の処遇、従業員の処遇などを記載します。
但し、この部分については基本合意後の買収監査(デューデリジェンス=DD)によって変化する可能性があるため、暫定的な内容としての意向であることを明記しておきます。
また、特に売主が社長を務める場合には、売主の希望を受けて、買手としては「いつ退任してもらうか」「いつまで引継ぎ対応してほしいのか」「その際の報酬はどうするか」など、決まっている事項があれば記載します。
決まっていなければ、「今後協議の上で決定」で問題ありません。
ざっとですが、上記のような内容が網羅されていれば十分なのではないかなと思います。
案件によってさまざまですが、「トップ面談前に意向表明書の提示が必要」というケースでは、「熱い想い」を書けるはずもなく、「前向きに検討したいです。以上」みたいな内容の意向表明書もたまに見ます。
個人的には、それでは「とりあえず正式な書面として、会社の代表印を押印して提示してほしかっただけなのね」という感じですが。。。
意向表明書の位置づけ(そしてその後)
さて、改めてこの意向表明書の位置づけをお伝えします。
「ラブレター」といいましたが、本当にそうです。
ある買手の役員が「バラの花を1本持って、跪いて『受け取ってください!』とお願いをする」と表現をされていました。
この意向表明書というのは、多くのケースで複数の買手企業候補から提示されます。
なので、意向表明書の提示時点というのは、売手が買手を選ぶというステータスなのです。
つまり、どちらかというと売主が強気でいられる段階です。
これが、「よし、ではあなたに決めた!」と1社に絞って基本合意締結に進むことになったらどのようなことが起きると思いますか?
そう。パワーバランスが変わります。
基本合意締結後には、複数あった買手候補には「お断り」の通知をした後に「1対1で本格検討」のステータスに入っています。
だから、その後のDDで何か問題が起きようと、条件を見直されようと、売主にとっても「もう、あなたしかいないんです!」とすがるような関係性に変化していきがちになります。
このパワーバランスの変化は、気を付けないと本当にM&Aプロセスの後半で、心苦しい局面が訪れてしまいます。
だから早い段階から、M&Aアドバイザーとしては可能な限りのフォローをする必要があると思っています。その辺はまた、改めて。
本日は意向表明書について少し詳しく書いてみました。
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