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2022/12/13 ぜんぶ詰まってる秘密基地にて
「旅に出るので当面の間教室を休みます」と大好きな場所を飛び出してから早くも1年。
無事戻りましたという報告と、また習わせほしいというお願いをしに敬愛する先生のいる陶芸教室へ。
以前記事にて少し紹介してました、ここです。
教室の近く以前空き地だった場所には小綺麗なマンションが建っていた。
その角を曲がると、すぐに私の愛する場所が見えて来た。
道に沿うようにある細長い小さなトタン屋根の工房。
本当に教室をやってるのだろうか?と思うほどひっそりと佇んでいる姿は以前と何も変わらなくて、それが嬉しかった。
チャイムにはテープが貼られていて、その上からマジックで「チャイムが壊れています、御用の際はノックをお願いします」と書かれている。
おもわず手書き文字の愛らしさにほころんだ。
トントンとノックをすると
「はーい」と先生の声。
「ようこそ〜!もうどこに行ってたの〜!」と奥さま先生の声。
“あぁ、またここに戻って来られた”
突然飛び出した私を変わらず面白がって受け入れてくれていたことが、声色から伝わってくる。
1年の不思議な旅の土産話をした。
藍染め、織物、ナバホ織、編み物、洋裁、畑、お料理、東洋医学、ふみふみマッサージ、写経、読書、ボート、水泳…。
これらの魅力的なすべてを楽しみながら、今もなお教室をしている90歳の女性と出会ったこと。
時を同じくして出会ったのは、過去水商売をしていた時にもう一生お金には困らないほどお金を稼いで、今は暇つぶしに旅館で住み込みバイトをしていて、お金はあるけどやりたいことがひとつもないと言った女性だ。
動けば人と出会うにしても、出会う人の種類が極端で、振り幅が広いことも面白い。
「そういう幅広い人と出会うところが君らしいやん。」と先生。
そういう風に思ってくれてるんだなぁと、また嬉しくなる。
でも確かに、20歳で独立してずっと商売をしてきて、88歳でナバホ織を習いに渡米した女性と、対するは旅館に住み込みバイトをしているのもただ何と無くの時間つぶしで、休みの日は寮に篭もりきり、ほとんどベットから動かない女性なんだもん。
変だよなぁ、面白いよなぁ、人生、色んな人がいますね〜。と土産話をぼんやりと締めくくる。
奥さま先生がどこからともなく取り出したのはジップロックに大切に保管されていたコジコジのシール。
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「これ、どこで売ってたと思う?!
なんと、キャンドゥで売ってたの!!
なのに肝心な貴方がいないんだもの!!
もうっ!どこに行ってるのよ!ってイラッとしたわよ〜」
と茶目っ気を溢れさせながら、可愛いシールを手渡してくれた。
奥さま先生とは以前、コジコジに魅惑された同士で盛り上がったことがあったのだ。
いつ戻るかも伝えていなかったのに、ずっと教室にシールを置いて待っててくれたことが嬉しくて嬉しくて…。
こういうマメさ、繊細さ、いじらしさ、わたしにはひとつもないなーって。
これが女性らしさかって感心しながら、100円のシールをこんなに大切にしようと思う日が来るなんて思わなかったなぁなんて思いつつ、とにかく次々やって来る嬉しさを噛みしめることで精一杯だった。
その日来られていた生徒さんの焼き上がったばかりの小皿たちが素敵すぎて見惚れていると、「一枚あげますよ?」と手渡してくださった。
えぇ?こんなにも素敵なものを??と戸惑っていると、奥さま先生が「ありだかく貰っちゃいなさい〜、ほんといいタイミングで来たわね⭐︎」と、また茶目っ気全開。
ご厚意は素直に受け取ろうと、ありがたく頂戴することにした。
とてつもなく可愛い小皿で、本音を言うと喉から手が出るほど欲しかったから、嬉しかった。
とても欲張りなんです、私。
先生が丁寧に小皿をプチプチに包んでくださり、持ってきた小さな手提げに作品を入れようと試みるも、入りきりそうにない。
どうしようかと思ったのも束の間、手提げの中から鮮やかなオレンジ色を見つけた。
そうそう、教室に立ち寄る前に小さな野菜直場所で小みかんを買っていたことを思い出した。
先生方へのお土産には大福を別に用意してたけど、小みかんは甘そうで美味しそうだったからついつい自宅用に買っていたのだった。
ちょうど良かった。
これを出せば小皿が入る、と小みかんをサッと取り出して「そしたらこれを」と小皿とぶつぶつ交換、まるでわらしべ長者だ。
教室に入って早々ゆたかさが満ち満ちになってキャパオーバーになりそうな私。
そんなタイミングで、いそいそと奥さま先生が何かを用意していた。
ふと見てみると、さっき手渡した子みかんをお皿にひとつひとつ並べてらっしゃる。
あまりに可愛らしくて、あたたかくて、ゆたかで、パシャリと盗撮をしてしまいました。
ここに載せていいのかしら、と思いながらも、何も特定出来ないと思うので載せちゃう。
このゆたかさをどうしても共有したく…。
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何もかも、すべてがここに詰まってた。
私の中での、”ゆたかさってなんだろう”の最終回答はこの1枚で決まりだ。
みのもんたに問い詰められたって迷わず言い切れるね。
もうこれ以上言葉はいらないか。
とにもかくにも、受け取りすぎてキャパオーバーなのでここに書くことにした次第です。
剥かれた後のみかんの皮とか
食器を重ねるコトコト音とか
シミがついちゃった机とか
ただの生活そのものに、身近なところに、すべてあるんだなぁと。
ここに来るといつも気づかされるのでした。
明日からは寒くなるようです。
冬にしかないゆたかさをたくさん見つけたいですね。