「楽しい」がわからない
昔からある種の「楽しい」という気持ちがよくわからない。
多分、楽しいことはあるのだ。
会いたい人がいたり、話していて楽しいなと感じることもある。
あるのだけど「楽しーーー!!!」みたいにテンションが上がることはまずない。
仲間とワイワイ騒いだり、ライブでノリノリになることもない。
そういう場にうっかり居合わせてしまうと居心地が悪いし、無理に周りに合わせて楽しいフリをすると、後でぐったりと疲れてしまう。
かといって、ひとりで黙々と時を忘れて打ち込めるようなものもない。
「楽しくて寝食を忘れる」みたいな言い方もあるが、私の場合はどんなにやりたいことでも途中でお腹が空くし、眠くなる。
集中力は長く続かない。
好きなことでも練習がつらくなる。
だから、人から「何してるのが楽しい?」と訊かれると困ってしまう。
好きなことはいくつかあるけど、それが楽しいかと言われるとわからなくなる。
私が思う「楽しい」は、好きな対象に集中して他が見えないことなのかもしれない。
テンションが上がって騒ぐのも、寝食を忘れるのも、周囲や自分の身体の状況が見えなくなっているからだ。
過集中や没入と言い換えてもいいだろう。
私にはそれがどうしても出来ないし、その感覚が全くわからない。
「この時多分楽しかったな」と思う昔の出来事を思い出しても、その時にどこかで冷静な自分も確実に存在していて、没入感はない。
子どもの頃から思い返しても、没入体験は思い出せない。
お酒を飲んでも意識は飛ばないし、ちょっと陽気になってもトイレで素に戻ったりしてしまう。
最近ではお酒もすっかり弱くなり、陽気になることもなくなってしまった。
だから「楽しさ」について訊かれると、私はいつも困ってしまう。
私は「楽しい」がよくわからない。
好きな服の買物や、気の合う仲間との会話で楽しさをうっすらと感じながら、どこかで冷静な自分がいる。
そのことがいつも、私を少し悲しくする。
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