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【妄想の種】眺める(空)

私には妄想の種がある。それは、生活そのもの。

書くことないなあと思っている瞬間の家族との会話や、ぼんやり眺めたテレビ、同僚との雑談、そして通勤途中で眺める景色。なんだっていいと思う!

前置き

何を改まって書いているかというと、この【妄想の種】シリーズでは、私がお話にまで持っていけなさそうな小さなネタでも書き溜めておこうかな、ということ。いっそ『お題』に近いかもしれない。

初回はせめてその説明でも、なんて思って記してみたけどただ前置きが長かっただけですね。

妄想の種 1、空

今日眺めたものは、「空」です!
今回は、普通の人間が暮らす場所ではない場所に生きる、ファンタジーな世界の男の話でも。

ある一人暮らしの男の話

彼は、空をよく知りません。暗い森の近くに住んで、空はいつだって少し暗くて、だから『良い天気』なんて知りません。春も夏も秋も冬もない、とても平坦な世界の中で生きていました。

ある日、とても不可思議な出来事がありました。
自分の過ごしている土地とは遠く離れた場所からやってきた来訪者が「君の髪の色は、とても珍しいね。まるで夏の空のようだよ」と言ったからです。

「……夏の空?」

言葉の意味がわからず、彼は怪訝そうに首を傾げただけでした。来訪者は青く澄んだ彼の髪色をとても褒めていましたが、彼にとって「夏」も「空」も理解できる言葉ではなく、異界の人の戯言と聞き流してしまいました。

来訪者が去った後、彼は鏡を見ました。まるでサファイアのような濃い青色。これが、夏の空?
まだ納得のいかないまま、今まで一度も気にしたことのなかった髪に触れ、その色を確かめます。

それからふと、窓の外を眺めて笑いました。窓の外は、黒と紫の混ざったようなどんよりとした暗さです。

「僕はこの空しか知らないけど、夏の空か。ちょっと興味あるな」

昼間はまだ少し明るくなるとはいえ、それも周囲が見えるような明るさであって、空の色が明るく輝くわけじゃない。とてもこんな鮮やかな色の空があるとは思えないけれど……。

彼はそこまで考えて、ゆるく首を横に振りました。

「興味はあるけど、見ることはないだろうな」

普通の人間が暮らすのとはわけが違う。夏など来ない、平坦な世界。自分はここから出られない。

男はそうして窓辺を離れ、元の生活に戻っていきました。


違う妄想

この妄想の主人公はうちの子の1人。自分の髪色が珍しいとも思っていないし、外の世界なんか知らないし、知りたいとは思っているけど情報の入らない隔離世界に生きている……設定。いきなり普通じゃない設定のやつ持ってきてしまった笑

彼はあまり話をしたがらないので、来訪者が帰ってから空の色について考えてみたけど……。
もし、来訪者が仲の良い知り合いだったらその場で聞き返すのかな?とか、空じゃなくて海に例えたらどう反応したかな?とか。
逆に、すごく仲悪い人にからかわれるように言われたらすごく機嫌悪くなるんだろうな、とか。

同じ会話でも、相手が違えば反応が変わる。それは彼に限った話じゃないと思う。
誰に対してもにこっと笑って「ありがとう!」という反応だったとしても、家族に言われれば「同じ色だよ」って一言つくかもしれないし、友達に言われれば「気に入ってるよ」と返すかもしれないし、恋人に言われれば「気に入ってくれて自分も嬉しい」と答えるかもしれない。

お題のカタチ

1つのお題から生まれる、たくさんのお話。誰にとっても妄想の種になるし、誰にとっても無数の選択肢のある世界が広がると思う。

お話を書くほどにならなくても、こんなお話読みたいなぁと妄想するだけの種になれば、私の中では上出来!

次はどこで妄想の種に出会うかなー。と、朝のコーヒーを飲みながら既に色々と考えて楽しむ朝。一日中こんな状態なので、書き出したらキリがないので……また、ゆっくり出していきます。


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