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【妄想の種】不思議の入り口2
生ぬるい風が吹く。少し冷たい空気を含んだ、もう間もなく雨が降るぞと言いたげな風だ。
足早に駅へと歩いていた。今日は周りには目もくれず、雨に降られる前にと家路を急ぐ。
灰色の雲、弄ぶように髪をかき乱す風。ふと見上げた公共施設の巨大な時計は、急がなくても十分電車に間に合う時間を示している。
それから、ふと視線を戻して前方確認をしようとしたその時。
視界の端に、不自然な赤い色を見つけて思わずまじまじと見つめた。
トマトだ。
なんだ、トマトか。
……えっ、トマト?
この間、わずか0.5秒もない。我ながらきれいな2度見だったと思う。
なぜなら、公共施設の駐車場の入口の石塀に、こぶし大ほどの大きさのきれいに熟した真っ赤なトマトが2つ、置かれていたからだ。
なぜここにトマトが?
周りでトマトの栽培をしているわけでもない。もちろん、鳥が持ってきたわけでもない。
この季節、こんなに大きくきれいなトマトが道端と言っても過言ではない場所に『置かれている』。
これは明らかに、ハウス栽培のトマトか、スーパーで売られているトマトを人為的に置いたものだ!
そこまで考えて、私は考えることをやめ、再び雨が降り出す前にと駅への道を急ぎ出す。
信号での待ち時間、noteに『2つのトマト』とだけメモをして下書き保存することだけは、忘れなかった。
というわけで、不思議の入り口第二弾。シリーズ化するつもりはなかったのですが、だって、気になるじゃないですか、謎のトマト!!!
本当に雨降りそうで、とにかく早く帰りたくて歩くスピードを落としたくなかったもので。
途中まではトマトが置かれた理由とか、どんな人が置いたのかとか、色々考えていたんですよ。
近所の人が分けてくれたトマト、警備員さんが帰りに忘れないように目立つとこ置いたのかなぁとか。
実は一瞬のチラ見した角度ではきれいなトマトに見えたけど、裏側はすごく傷んでるとか訳あり品なのかなあとか。
あくまでも想像……を超えて妄想なので答えはわかりませんが、ここが閉鎖空間だったらトマトは脱出のヒントになるのか?とか、トマトを使う仕掛けって色々ありそう……とか。
ちなみに、気になったので今朝もトマトあるのかなって見てきたのですが、ありませんでした。
トマトはどこに消えちゃったの!?
ほんの1秒目に留まった、ミステリアスな妄想の種でした。