【照明の続き】「明るく照らす」の向こう側に。アルヴァ・アアルト設計『カレ邸』の照明から考えるくらしのヒント vol.2
こんにちは。
私とイラストレーターの火詩さんで運営しているYouTube『くらしの学校』より、建築家アルヴァ・アアルトが設計した『カレ邸』について一部抜粋してご紹介します。
今回のnoteでご紹介するのは、前回に引き続き、カレ邸に設置されてた数々の美しい照明です。前回のnoteでご紹介したビルベリー等の照明もそうでしたが、アアルトのデザインする照明はその形状の美しさに加えて、空間に合わせた機能美も備わっているように感じます。
それでは、今回もアアルトの美しい照明を一緒に見ていきましょう!
YouTube『くらしの学校』は、世界の名作建築を学びながら、それらの素晴らしい点をみなさんの生活やこれからの家づくりに活かすためのYouTubeチャンネルです。
動画でご覧になりたい方はこちらからどうぞ。
前回のアアルト設計『カレ邸』の照明についてのnoteはこちらからご覧ください。
さて、まずはこちらの照明から。この照明には『手榴弾(グレネード)』という名前がついています。少々物騒な名前ですが、見た目からつけられたもので、曰くはないのでご安心を。ルイ・カレ邸では、寝室のデスクの上に取り付けられています。
入れ子のように太さの違う2種の円柱が連なる本体はスチール製。下部に取り付けられた真鍮のリングには、側面に柵状の細かな穴があけられ、光が拡散する構造になっています。まるで光の輪のように溢れる光は、柔らくあたたかな明るさで 周囲を照らしてくれます。
こちらの照明はシェードの上部からも明かりが漏れるために、ささやかですが柔らかい光で天井もほんのりと照らしてくれます。ホワイトのカラーバリエーションも用意されており、明かりを灯すと筒の内側から美しく光が浮かび上がります。モノトーンでミニマルなデザインが、モダンなインテリアにぴったりの逸品です。
次にダイニングルームに取り付けされたペンダントライトをみてみましょう。とても面白い形状をしていますね。
この照明はシェードの開口部がふたつ。まず真下に向けて開けられた丸い開口部は、ペンダントライトらしくダイニングテーブルの上をしっかりと明るく照らしてくれます。
そして側面にあいた有機的な形の開口部は、壁にかけられた芸術作品を照らすためのスポットライト的な役割も果たしています。
この独特のフォルムは、2つの役割を同時にこなすために考えられた形なのですね。生活空間の中に多くの芸術作品が飾られた、カレ邸ならではの照明と言えるでしょう。
そしてまた、この特徴的なシルエットのランプは、照明としての役割のみではなく、空間の中のオブジェという考え方でもしっかりとデザインされていると言えるでしょう。
今回・前回と、現在も購入可能な照明を中心にご紹介しましたが、ルイ・カレ邸にはこれらの照明以外にも、様々な趣向を凝らした照明が用意されています。全てはご紹介しきれませんが、上下に光を放つフロアランプや、玄関ホール兼ギャラリーの高窓の前に取り付けされている3連のメタルランプなど。
それぞれの空間の用途に合わせてデザインされた照明は、「空間を明るく照らす」という役割から一歩踏み込んで「この場所には、どんな明かりがふさわしいのか」を考えるヒントを教えてくれるように感じます。
家の中の照明を選ぶ時、全てを均一に照らす灯りを選ぶ前に、そこで照らしたいもの、灯りをつける時間帯、灯りをつけていない時の見え方など、実際にそこで過ごす時間をイメージして、灯りを選んでみてはいかがでしょうか。また、普段から外出先などで、心地よいと感じる場所に出会った時、どんな照明が使われているのかをチェックしておくと、自分のイメージする空間を実現させるために役立つかもしれません。
ライティング一つで、空間はガラリとその表情を変えます。ぜひ家づくりを考える際には、照明の存在を意識してみてください。
さて、今回のnoteはここまで。また次回からも建築についてわかりやすくお話したいと思いますので、引き続きご覧いただけると嬉しいです。
YouTubeでは、より豊富な写真とイラストで解説しています。ぜひこちらも復習としてご覧ください。
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掲載している全てのイラストはイラストレーターの火詩さんに描いていただいたものです。
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