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家の天井はフラットなのが当たり前と思ってたらもったいない。アルヴァ・アアルト設計『カレ邸』の天井から考えるくらしのヒント

こんにちは。
私とイラストレーターの火詩さんで運営しているYouTube『くらしの学校』より、建築家アルヴァ・アアルトが設計した『カレ邸』について一部抜粋してご紹介します。
今回のnoteでは動画の後半で話しているカレ邸の天井のことを説明します。天井ってこんなに自由に考えていいんだ!と感じていただけたらとても嬉しいです。

​YouTube『くらしの学校』は、世界の名作建築を学びながら、それらの素晴らしい点をみなさんの生活やこれからの家づくりに活かすためのYouTubeチャンネルです。

動画でご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

前回までのnoteはこちらからご覧ください。

複数の階をつなぐ吹き抜けの空間や、天井が斜めに下がった屋根裏部屋に、わくわくしたことはありませんか? 普段あまり意識して見ることはないかもしれませんが、実は「高さ」という要因は、空間の印象を大きく左右しています。アアルトはこの「高さ」を巧みに利用した建築家でした。
(下の写真2枚はアアルトの作品ではなく、参考として掲載しています)

K夫妻の家 吹き抜け

屋根裏べや

さて、ルイカレ邸の玄関ホール兼ギャラリーを見てみましょう。大きく曲線を描く玄関ホールの天井は、とても印象的ですよね。しかし、なぜアアルトはこのような天井を設計したのでしょうか? ギャラリーも兼ねたスペースであったので、アート的なあしらいかと思われるかもしれませんが、実はこれは、北欧の環境と家づくりの考え方から生まれた形なんです。

ギャラリー高窓側

アアルトが主に設計を行なっていたフィンランドは、冬の気候がとても厳しい土地でした。例えば温暖な日本の家づくりは、外の自然をうまく取り入れた風通しの良い住宅が好まれてきました。日本の古典三大随筆のひとつである徒然草にも「家の作りやうは、夏をむねとすべし」なんて言葉もありますね。

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これに対して北欧では、「厳しく長い冬をいかに家の中で豊かに過ごすか?」ということが重視されており、「過酷な自然環境から命を守るシェルター」としての役割を見ることができます。

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さて、北国のシェルターには降り積もる雪から家の中を守ってくれる、屋根が必要になりますよね。羽毛布団やダウンジャケットのように、寒さから身を守るには「空気の層」を作ることが重要です。アアルトはこの空気の層、建築用語でいう「フトコロ」と呼ばれる断熱層の形に、新しい可能性を見出しました。そうして生まれたのが、このルイカレ邸の玄関ホールの天井です。

フトコロありのコピー

空気の層さえ確保できれば、もっと天井は自由な形でいいんだ!という発見ですね。アアルトはこのアイディアから、他にも素晴らしい天井を持った様々な建築を設計しています。
(写真上:ヴィープリの図書館 写真下:アアルト大学)

ヴィーぶりの図書館天井

アアルト 天井にゃ

さて、ルイ・カレ邸の玄関ホール兼ギャラリーに戻りましょう。やわらかな曲線を描く高い天井により、この空間はダイナミックでありながら、人を優しく包み込むような体験をもたらします。5mもの高さは、高窓から柔らかな光を取り入れ、玄関ホールを自然光で明るく照らすことにも役立っていますね。そして天井の曲線が隣接するリビングルームに向かって下り坂を描くことで、自然と人を誘導させる効果をも発揮しているのです。

ギャラリーからリビングへと導く

木材をふんだんに使用した天井は、わざわざフランスまでフィンランドの職人を呼んできて作ったそう。アアルトがこの天井にかけた思い入れが伺えますね。

ギャラリー天井、木のディテール

次に書斎を見てみましょう。

図書室1

天井面はフラットでギャラリーほどのインパクトは無いのですが、床の高低差に合わせて天井も低くなっており、動物が巣にこもるような安心感が感じられる空間となっています。書斎という、人がこもって集中する部屋にはとても適した設えですね。

IMG_6929のコピー

最後にリビングの天井を見てみましょう。

リビング1

なんとルイカレ邸のリビングは、ひとつの空間でありながら、3段階の高さの異なる天井を持っています。

IMG_6938のコピー

玄関兼ギャラリーの曲面天井からフラットになった天井はリビングの中央手前で更に一段さがり、より落ち着いた雰囲気をもたらします。
また、庭の眺めを室内いっぱいに取り込む大きな窓の高さに合わせてもう一段天井が下がっています。これは『窓』という存在を極力感じさせず、より外部空間と一体に感じられるようにするためでしょう。

リビングから外を見る

このように天井の形状を工夫することによって、空間はより豊かなものとなります。床は安全に歩いたり、家具などを置くために、平であることが求められます。しかし実は、天井はそのような制約に縛られない、とても自由な存在なんですね。あなたが心地よいと感じる空間と出会った時、これからは少し上を見上げてみてください。
(写真上:ヴィープリの図書館 写真下:ユヴァスキュラ大学)

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アアルト天井

もしかしたら、あなたの頭上にその心地よさの秘密が隠れているかもしれません。そして住宅を建てたりリノベーションをする際は、ぜひ「高さ」も意識した家づくりを考えてみてください。

さて、今回のnoteでアルヴァ・アアルト設計『カレ邸』についての説明は終わりです。YouTubeで見ていただくと、また違った気づきがあると思います。復習としてぜひご覧いただけると嬉しいです。

https://www.youtube.com/watch?v=6znRKHMR-7k

それでは最後までご覧くださり、ありがとうございました。
次回のnoteではカレ邸に設られた美しい照明たちのご紹介をします。
またこれからも名作住宅の紹介を行いますので、その際はぜひご覧ください。

掲載している全てのイラストはイラストレーターの火詩さんに描いていただいたものです。
引用させていただきました写真はクリックすると引用先のURLにアクセスする形としております。


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