ラトビアライフ、いい感じに盛り上がってきたな|ラトビア日記 #4
2023年9月16日 おでかけ
午前中、公園で大学の課題に関する書籍を読む。
公園、さいこう。集中できる。
が、冬どうしよう。図書館に引きこもることになるのだろうか。
午後、大学のともだちと一緒にKGB博物館へ。
KGBとは、ソ連国家保安委員会。旧ソ連の情報機関・秘密警察のこと。
KGB博物館になっている「The Corner House」が、かつてKGBの拠点だったが、その前はラトビア独立の拠点でもあったという皮肉。
地下にある監獄へは事前ツアーに申し込まないと行けないらしい。
無料で入れる展示だけ観て周り「Lido」というチェーン店で、ごはん。
「Lido」は、ラトビア料理が食べられるレストラン。リガ市内には数店舗あり、いつもどの店も、地元の人や観光客でいっぱい。
わたしはハンバーグとじゃがいものクリームソース煮を食べた(めちゃうま)。
一緒にKGB博物館に行ったのは、トルコとアゼルバイジャンからの留学生。
彼女たちもラトビアとはまた違う、ロシアと関わりの深い歴史を持つ。
アゼルバイジャンのともだちは、旧ソ連との関わりについて、学校でポジティブな側面も勉強したという。文化に罪はないからロシア語を勉強したいと言っていた。アゼルバイジャンは旧ソ連に占領されていたこともあり、ロシア語を話せる人もいるらしい。わたしのともだちも、すべてではないが理解できるそうだ。
トルコのともだちは、キャリアアップのためにラトビアに留学していると言っていた。現在のトルコの経済危機はすさまじく、ヨーロッパに移住しないと仕事がない(というかトルコでは仕事をしたくない)と言っていた。
ラトビアの人々に対しては、トルコやアゼルバイジャンでの雰囲気に比べると、冷たく、よそよそしく感じるらしい。
わたしはアゼルバイジャンには行ったことがないが、トルコでの人懐っこさは今でも強く印象に残っているし、トルコで出会ったアゼルバイジャンの旅人の女の子も、すごくほがらかだった。
ラトビアの人々は、たしかに愛想笑いはしないし、助けを求めれば手を差し伸べてくれるが彼らから声をかけてくることはほぼない。
「ラトビア人はラトビア人に対してはフレンドリーだ」とアゼルバイジャンのともだちが言う。
「わかる〜」とトルコのともだちが返す。
わたしはラトビアの人々の距離感を「冷たい」とは感じないが、彼女たちはカルチャーショックを受けたようで、ふたりで「ラトビアの人って冷たいよね?!」と、盛り上がっていたのが印象的だった。
誰かの振る舞いを、どう感じ、どう受け取るかは、個人の自由。
わたしは失礼だと思わないことも、彼や彼女にとっては失礼なことかもしれない。逆も然り。
起きた出来事を、誰が、どう受け取るかを観察するのも、おもしろい。
トルコのともだちは寮でパーティがあると言って、先に帰る。
アゼルバイジャンのともだちと街を歩き、公園でおしゃべりして、解散。
今日もよき1日でした。
2023年9月17日 おかいものday
午前中、ひさびさにショッピング。
日本から持ってきたスウェットを、とりあえず室内着にしていたが、本当は外で着たいお気に入り。
だから、部屋着をずっと探していた。
市内にいくつかある古着屋さんを回って、ど派手なカーディガンとパーカーをゲット。新品より、やっぱり古着が好き。見ているだけで楽しい。そして安い! ありがたや。
買い物の後は、やっぱり公園へ。毎日必ず行っているな……。
天気がいいと外にいたくなる。日本にいた頃、特に鹿児島にいた頃は、日焼けがいやで室内にいがちだったが、9月のラトビアの気候は、外にいないともったいないと感じさせるほど陽気がいい。
風が吹くと少し肌寒いけど、長袖一枚でもじゅうぶん。
ときどき「体感温度、どうなってんの?」と思うほど夏みたいな格好の人も。芝生で寝転がっている人もいる。シートを敷いてピクニックしている家族やグループも。
とはいえ、朝晩は冷える。冬が近づいている。
短くなる日照時間を惜しむように、みんな外に出たいのだよね。
2023年9月18日 帰国しなければならなくなったらどうしよう
一週間から10日で届くはずの大切な郵便物が、届かない。
普通郵便より優先して届けてもらうEMSにしたのに、もうすぐ二週間経とうとしている。
船便は大幅に遅延しているらしいが、EMSは船便ではない。空路も減便しているとのこと。それにしたって遅くないか?
どこにあるの、わたし宛の郵便……。
数字で見れば、90日間以内に居住許可が取れれば良いので、郵便が届かなくても、まだ余裕はある。
けれど、何がどうなるか分からない現状で、早く手元に欲しいものが想定通りに届かないと、突然不安が襲ってくる。
不安に襲われると、目の前のことにまったく集中できなくなる。
歩いている最中だと、道端に止まってしばらくスマホから目が離せなくなる。
買い物をしている最中もカゴに入れていたものとか買おうと思っていたものをすべて元に戻して、気持ちを落ち着かせるためにベンチに座るか、店を出て座れる場所を探す。
課題をしていて不安になると、もう集中できない。結局今日も、書こうと思っていたエッセイを提出できなかった。
もしも、許可申請が期限までに間に合わなかったら?
日本に帰らなきゃいけない?
大学を、辞めなきゃいけない?
実際、去年インドネシアからの留学生の在留許可が降りず、大学を去らなければならなくなったらしい。彼はトルコの大学に入学し直したというが、許可が取れなかった原因がどうやら本人の不備もあるようだが、大学側にもあるみたい。なにそれ……。
いまどき紙で提出し直さなきゃいけないとか、なぜなのだ、IT先進国じゃないんかい。
とツッコミたくなるが、書類もイラレで簡単に手を加えられる時代。厳しく取り締まらないと有象無象が集まってくるのだろう。
それにしたって、この不確かな期間が続くのが、まあまあしんどい。
毎日、漠然とした不安に意識を持っていかれないように、楽しいことを見つけて不安を誤魔化している。
自分だけでどうにか解決できることではないから、事が動くのを待つしかない。
そもそも日本で居住許可の申請すればよかったじゃないかという話もあるが、わたしの場合は入学許可証自体がラトビアに来て初めて受け取れたので出国前の申請は無理だった。というか、ラトビア大学の留学生は全員そうだろうな。
実際、わたしが話した限りでは、居住許可申請中の学生ばかり。ラトビア人以外は、みんな大変そう。
こういう点、アメリカやイギリスの大学は段取りが早め早めらしい。留学生を受け入れ慣れていらっしゃる。
せっかく景色のいい国立図書館に来たのに、不安に駆られて頭をかかえただけで終わった。
気を紛らわすために、バスカードを使わず、30分くらいかけて歩いて帰った。
最悪の事態として書類が世界のどこかを放浪し、紛失してしまったとしても、移民局に直談判すればなんとかなるかもしれない。
最後まで、あきらめない! 寝る!
2023年9月19日 心を回復させるには
昨日、書類のことで心が乱されたから、今日は好きなことをたくさんしようと決めた。
朝早く起きて、作り置きを作って、ずっと気になっていた毛糸屋さんに行った。
日本人の方が、お店の方と縁があり、ラトビアのミトンに関する本を出版しているみたい。
ラトビアのミトンには、ラトビアの伝統模様が編み込まれている。このマークが、日本のお寺の地図記号とよく似ているのだ。なにか因果関係があるのかな?
柄も季節の花や祝い事に贈る場面もあるからどれも華やかでかわいい。
ただ、わたしは柄を編むのは全くの初心者。誰かに教えてもらいたい……。
お店ではワークショップをやっていないか聞いたが、特にないとのこと。ただ、気になることがあればなんでも聞きに来て、と店員さんが言っていた。編み方を聞きに来たらさすがに迷惑だよな。いいのかな。
今回はミトン用のキットや毛糸は買わず、ニット帽用のラトビア産ウールの毛糸玉を買った。100グラム、5ユーロ。
お店を出て、毎度のことのように公園へ。1時間以上、座って編み物をしていた。風もあったけど、とてもあたたかい。一生ここに座っていたい。
編み物をしたら、カフェ開拓。
昨日、集中できずに提出できなかったエッセイを書くため、新たなエリアへお散歩。
見つけたカフェで頼んだアーモンドラテが、おいしかった。
店員さんも、にこやかで、HP回復。無事、エッセイも提出。
カフェからの帰りがけに寄った古着屋さんに、かわいいアクセサリーがたくさん売っていた。
アクセサリーは買わなかったが(がまん)、ヨーロッパの石畳により早々にダメージを喰らったわたしのスニーカーの代打として、新しい靴(もちろんセカンドハンド)を買った。
スニーカーは、かかとの先から靴底のゴムが剥がれちゃったんだけど、なおせるかな。
郵便物は、まだ届かないし追跡番号による記録も、中部国際空港を出発して以降足取りがつかめないまま、変化なし。
でも編み物して、さんぽして、天気もよく、課題も一つ終えて、昨日さんざんかき乱された心に平穏を取り戻した。
2023年9月20日 大学院生だったことを思い出した
今日は、ふたつ、必修の授業のイントロダクションがあった。
コースの名前が似ていて全然覚えられないが、ひとつは来週から早速グループワークが始まるやつ。
授業で「societyとは何かを絵に描いてみて」というお題を先生が出す。
みんなそれぞれ描いて発表したのだが、おもしろかった。
わたしはいろんな形の記号が、点線やうねうねや太い線などで繋がったり消えたりする図を書いた。記号が人で、線が関係性を表し、つながりは強くなったり太くなったりして、丸も線も広がっていくものだ、境界線はない、と発表した。
アジア圏からの留学生はわたししかいなくて、あとはもちろんラトビア、国外だとアメリカ、イスラエル、ガーナ、アゼルバイジャン、ロシア。
わたし以外ほぼ全員、社会を境界線があるものとして定義していた。点や丸で人を表している人がほとんどだったが、必ずどこかで区切られて、グループ分けされていた。
こちらに来て強く思うのは、「ここからここまでがわたしの土地」という境目への意識の強さ。
実際、必修科目の一つは「国境を社会学的に紐解く」みたいな授業があって、いままで国境を意識したことは……無くはないけど、ヨーロッパのように地続きで侵略したりされたりを繰り返してきた人々に比べれば希薄なのかもしれないと思った。
「society」と聞いて分布を意識するのは西洋、個人同士のつながりを意識するのは東アジアの特徴、とのこと。
なんだか感動した。
無意識のうちに、それぞれの国の背景がイラスト一つに顕著に現れるとは。人間は影響しあって成り立っているんだなあ。
などとうっとりしていたら、まあまあな量の課題が出た。必修科目だから当たり前だ。
のんびりしていられない。明日から取り掛からないと!
2023年9月21日 食費よりもお金をかけているものと、やっと届いたアレ
昨日出た宿題は、つまり課題図書なのだけど、ものすごい量がある。
大学院生なんだから当たり前なので、勉強には時間もお金を惜しまないと決めた。
ということで、配布されたものはすべてPDFなので、印刷!
紙の節約のたまに一枚に2ページ載るように、裏表印刷したら、おそらく700ページくらいある。
文庫本3冊くらいか……。こう書くと少ないな………。受け取った時は「鬼じゃん」とか思ったけど……。
もちろんぜんぶ英語。だから、印刷した。
PDFで英語の書籍を読むのは、できなくはないけど頭に残りづらいから。あと、今後のためにメモやマーカーを引きながら読みたかったから。
一週間分の食費くらい印刷代がかかったけど、かまわない。冬までに読み切ればいいのだから、がんばろう!
やる気を上げるために、またカフェへ。
この前行ったところと同じ系列の、ラトビアオリジナルのチェーン店。
お店の人が、やっぱり愛想がよくて、コーヒーが安めだからか若者も多い。
本を読んだり課題らしきものに取り組んだりしている人も多いから、長居しやくす、居心地がいい。
専用アプリもダウンロードした。これから通おうと思う。
そして、今日の夕方なにげなく、なかなか届かない郵便物の追跡番号を入力してみたら……。
リガ(首都)に着いてる!!!
やったーーーーやっと届いたーーーーー世界のインフラありがとう。
授業の合間の休み時間で確認して、うれしさのあまりガッツポーズをしてしまったため、ほかの学生たちに「どうしたの」と怪しまれる。
日本からの郵便物がぜんぜん届かなくて、と経緯を説明したら、同じモヤモヤをかかえているアメリカ人のクラスメイトがいた。
友よ。きっと大丈夫だ。すぐに届く!
……と、2日前くらいに不安でたまらなくなっていたわたしに言い聞かせるように彼女にも伝えた。不安だよね、分かるよ。
20:00過ぎに帰宅。いまからパスタを茹でて食べる。
不安でぐらぐらすることもあるけど、ここ最近はやっと「あー海外に来てよかったなあ」って心から思うことが増えた。
毎日数回は噛みしめてる。そして、その味がどんどん濃くなっている。
英語だってへなちょこだしラトビア語はまだぜんぜん分からないけど、分からないこともふくめて楽しい。
大学の授業も、課題が多くて大変だけど、やればいいだけだしやったら新しいことを知れるからなおたのしい。
仕事ではなく第三者が関わる責任を負わずにのびのびできる状態だから、なおのことかもしれない。
留学すると決めたときから、今年と来年の学生期間は人生のボーナスタイムだと思っている。
日本という母国を含め、いろんなことから適度な距離を保ちつつ鳥の目で過ごす日々。
いままでできなかったことにじっくり時間をかけられる贅沢。この贅沢っぷりが、どうしたら伝わるだろうか。まだ適切な言葉が見つからない。
2023年9月22日 お疲れモードでも遊ぶ
2日前の深夜2時か3時ごろ、玄関のドアをノックする音がかすかに聞こえて目が覚めた。
ラトビアのフラット(マンション)のドアはどこも二重になっていて、どういうことかというと、玄関のドアを開けるとすぐ違うドアがある。
北海道などにある風除室のようなスペースはなく、本当にドアが2枚重なって設置されている。だからノックの音も、遠くで聞こえる感じだった。
ルームメイトが鍵を忘れたのか?と思ったが、深夜に、ノックの音って、めちゃくちゃ怖くて、ベットから出られなかった。
その2日前の出来事について、ルームメイトと出くわしたから聞いてみたが、そんな時間に帰ってきてないし、鍵も持ってる、とのこと。
あのノックの音はなんだったんだ……わたしが寝ぼけていただけかな?
ちなみにその日以降は、特に何もない。今朝、猛烈に足がつって目が覚めたけど。
足が攣るということ自体、あまりないのに、痛みで目が覚めるほどだったから、相当疲れているか、運動不足か……。
1日30分以上は歩いているとはいえ、身体のサインには敏感でいたい。
今日は公共交通機関が無料だったらしい。バスに乗って気づいた。どうやらヨーロッパ全域で「公共交通機関を使おう週間」だったらしい。
車ではなくトラムやトローリーバスを使って温室効果ガスを減らそうという施策。
こういうことに関する、ヨーロッパの連帯感はすごい。飛行機のチケット代も安い。日本でいうところの、県境どころか市町村レベルを超えるくらいの勢いで国と国を行き来するほどの気軽さ。
諸手続きに関しても「足りないものがあったら帰ればいい」という姿勢。
わたしが数日前に「日本に帰らなければならなくなったら」と何もかも手がつかなくなるくらい頭をかかえていたのが嘘みたいに、ヨーロッパ圏の人々は軽やかに国境を越える。
ただ、同時に、だからこそ国境やアイデンティティを意識するという側面もあると思う。「自国ならでは」を常に形や言葉にしておきたくなるのかも。
だから国旗が、お店や民家に、装飾の一つとしてカジュアルに掲げられているのかもしれない。
夜は、大学のともだちとビリヤードへ。
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