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花押は、書の宝石。

こんばんは、美咲です。

約半年前の春分に個展開催が決定して、あっという間にもう会期初日まで1週間となりました。

この半年間、Twitter(X)の#個展録でその時の気持ちや考え、動きなどをタイムリーに綴ってきました。いつも目を留めてくださる方、♡やRTしてくださる方々、本当にありがとうございます。

会期直前になってしまいましたが、制作や準備のピークを超えて今 改めて「個展 書の宝石」について書きたいと思います。


花押という文化・技法を主に、作家として アーティストとして表現していきたい、していく。と決めたのが去年の12月で、個展のお誘いをいただいたのが2月。

開催が決まってからしばらくは、すぐ何かに着手するという感じではなく 自分の内側にある望みや意図、目的などを隅々まで書き出して「個展の軸」となる在り方を明確にしていきました。

私にとって「個展」は、今までは興味関心がないからやらなくても良いかな と思っていたことでした。

だからと言ってこれからどんな手段や場で活動していきたいのかというと それもまたはっきりしないぼんやりした状態で。

去年まではそんな状態だったけど、2月にお話をいただいてから在り方や軸などの根源的な部分から見つめていった時、

むしろ個展こそがダイレクトに自分のエネルギーや意図・価値観を伝えられる場で そこに来てくださる方と交流ができる、とても重要な場・機会だと感じるようになっていきました。


個展のタイトル・テーマだけは最初から決まっていて それが

書の宝石。

この言葉は 花押を作るようになった初期の頃に湧いてきたイメージや定義のようなもの。これは未だに変わっていなくて、きっとこれからも変わることはない 私の「花押」に感じる根源的な価値観です。

なぜ「書の宝石」という言葉になったかというと、まず1つは花押が書面上において 1つの小さな形で重要な役割を担う・価値を証明するためのものだということ。

例えば、戦国大名が文書の最後に自分の名前を書いた後に「この文書は、間違いなく私が書いたものである」という証として花押が記されていました。

「私」であることの価値を証明するもの。

そして、そのために「私」の一部である名前や信念となる漢字を使ってデフォルメし 他者が真似できないように造形を工夫して書き順もわからない状態に仕上げるのが花押です。

この頃の「私」は、どこかの〇〇家に所属する誰々、のような立ち位置から作られた花押も多くありましたが

後にだんだんと、どこかの何かに所属する誰々、ではない「私」という個別性のある唯一無二の存在という立ち位置から作られるようになっていきました。

花押の歴史に様々な流れがあるにせよ、私自身はやはりこの「個別性のある唯一無二の存在」という位置に立った「私」の証である、というところにとても魅力を感じました。

そしてそれが、文字をもとに全く別な造形に生まれ変わり、新たな美と価値が創造される。文字も好き、美にこだわるのも好き、価値を生み出すのはもっと好きで楽しい。これが、私が花押に感じる魅力の1つです。


2つ目は、「宝石」というものが生まれる過程やその組成が 人間の成長過程や人生と似ているなと感じるから。

この記事を書こうと思った時に改めて「宝石」の定義について調べてみたら、

宝石とは、希少性が高く美しい外観を有する固形物のこと。

Wikipedia

と書かれていて、まさしく‼︎と改めて深く納得。

花押も唯一無二のものであり、造形美にもこわだわって作られるもの。

そして、その組成は長い長い年月をかけて様々な物と混じり合い、結びつきながらほんの少しずつ形になっていく。どんな形になっていくかは、環境によっても全く異なるし なった時にしかわからないしいつも成形されていく「過程」にある。

人間も、一生という時間をかけて少しずつ学び成長し 様々な環境で色々な人に出会いながら「私」という人間の価値観を育み 心身ともに形作られていく。どんな「私」になっていくかは、環境によって変わるし 人間ももちろん息が途絶えるまで常に成長していく「過程」にある。

この成形過程が成長過程と重なっているように感じていて、他にはない無二の価値観や精神性が積み重なった結晶が「私」という人間(個体)だといつも思っています。

そう思うと、1つひとつ 1人ひとりが無条件に尊いと心から感じるし その気持ちを思い出しながら作る花押は 当然どれも思い入れの深い1粒になります。

こんな思いから「書の宝石」という言葉が生まれ、初めての個展のタイトルになり、テーマも「私の精神性」となりました。


このテーマにしたこともあり、今回の個展に向けての制作・準備中は作品に私自身が何度も何度も救われ 助けられました。

ブレたり、迷ったり、わからなくなったり、焦ったり、イライラしたりして 感情や目の前の状況に入り込み過ぎていた時、自分の作品に書かれているものを目にして

「あ、そうだそうだ」
「私が大切にしたいのはこれだった」

と正気を取り戻すように意識を引き上げてくれるようなことが何度もありました。そういう体験を何度もする中で、改めて自分の精神性について明確に、はっきりと自覚し軸が立つような感覚が強まっていったようにも思います。

今回の個展は初めてということもあり、それこそ「美咲」という人間がどんな価値観や世界観を持っているのかを作品を通して自己紹介するような感覚もあるので、実際に見る方の感覚を通して個々にどんな風に映るのかも とても楽しみだなと思っています。


この半年間は、全体を見たら5%くらいとも思える会期中の7日間を良いものにするために 95%の日常の過ごし方や在り方がさらに重要、と思いとにかく注力してきました。

この7日間はその積み重ねた日常の一定の「結果」でもあるし、「始まり」でもあるし、「過程」でもあります。どの捉え方にしても、私が作家やアーティストとして自分を隅々まで使って活かしきって生きていく大きな転機になることは間違いないので そこでの出会いや時間がものすごく楽しみです。

作品についても、今の自分が表現したいこと・やりたいことは思い残すことなく詰め込めました。数は約40点、大きいものから小さいものまで、様々なサイズの作品が並びます。

2階は今現在私が主として制作している「花押」を使った作品群で、すべてその書に合わせて、額縁や仕立てがそれぞれ1つひとつの世界観を感じられるように作っています。これがあの素敵な会場に並んでいるのを見るのは、私自身も超楽しみです。笑

3階は作品づくりを始めた2017年以降のもので、花押を知る前の私の制作スタイルを見ていただけます。この頃はInstagramからのご縁でニューヨーク、ポーランド、京都の清水寺 圓通殿(在廊)、フランス パリで開催されたJapan Expo(全4日間出店・在廊)に参加させていただき、その時に展示した作品です。

今見て改めて思うこともありますが、これもまた今の自分からは湧いてこない作品だし この1つひとつを経て今の自分があると思うとめちゃくちゃ感慨深いです。3階から2階にかけて制作を始めた頃から今に至るまでの作風の移り変わりがわかるので、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。

自分が表現したいこと・形にしたいことにこんなにフォーカスしてやりきったのは初めてなので 様々な思いはありますが、自分に正直に素直に思いっきりやれた満足感はあります。

荒削りな部分もあるかと思いますが これはこれで今の自分にしかできない表現や線・空気感だと思うので そこに込めたエネルギーが伝わったら嬉しいです。


作品と私のつくる場のすべてで、来てくださる方に自信をもって言えることがあるとしたら「活力を浴びに来てほしい!」です。

私と会ったり、作品を見ることで 何か内側からエネルギーが湧いてくるような感覚を開きたい・広げたい方はぜひ来てください。きっと何か、ここに来た意味を感じていただけると思います。


会期中は全日在廊しております。初日まであと1週間、設営も含めてまだ山場もありますが それもまた思いきり楽しもうと思います。

10/13から21まで、作品とともにお待ちしております!


美咲

【個展 書の宝石】

◉日程:2023/10/13(金)〜10/21(土)
※10/15(日)16(月)はお店の定休日
◉時間:12:00〜17:00
◉場所:うおがし銘茶 茶・銀座
◉住所:東京都中央区銀座5-5-6
◉最寄り駅:
東京メトロ各線「銀座駅」B3出口
JR線「有楽町駅」中央口

※お支払いは現金のみになります。

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