【連載エッセイ】悪妻のススメ(第8話:金銭感覚)
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生活習慣の違いは、お互いの 妥協 と 歩み寄り で落としどころが見つかるものだが、金銭感覚の違い は一筋縄にはいかなかった。
私たちは、お互い30代に入ってからマンションを購入していた。
それぞれまだ住宅ローンは残っている。
私たちは妻の家で同棲することになったが、私の自宅はそのままになっているので、住宅ローンの返済と電光熱費や通信費などの固定費の支出は続いている。
その上で2人の食費や遊興費は、私の収入で賄っていたから、当然一人暮らしの生活より支出は多くなる。
それは分かっていたのだが、その 支出が想定以上に多い のだ。
私は、あまり物欲がなく、お金のかかる趣味もない。
一方、妻は出掛けることや外食が好きで、いつも新しいお出かけスポットを探している。
それに加えて、記念日が大好きな妻は誕生日やクリスマスだけでなく、お付き合いを初めて 1ヶ月記念、2ヶ月記念・・・なんて聞いたことがない 独自の記念日 を毎月のように作り、その度にケーキを食べようと言う。
そんな要望に「まぁ、良いか」と応えていると、遂には何もない普通の日の会社帰りにも「何かお土産を買って来てー 」と言い出した。
それは、お金も足りなくなるはずだ。
私は、会社員として一般的なお給料を貰っていると思っていたが、さすがに連日の外食やおでかけに耐えられるほどの収入はなかった。
もし、私が妻の要望に応えなければ、きっとあの しつこい要求 が始まると思ってしまうのは、このあいだ起こった「ゼクシィ事件」のトラウマだ。
おそらく妻に悪気はない。
事実、当時の妻の収入は、きっと私より遥かに多かったのだろう。
しかし、結婚したら妻は「専業主婦」になりたいと言っているのだ。
それは、すなわち私の収入で生活することを意味する。
どうにかしなければならない問題だった。
まず初めに、私は月々の手取り額を明らかにした。
それで、私の置かれた状況を理解してくれるのではないと思ったが、それは練乳がけのチョコレート くらい甘かった。
妻「私は、年収300万くらいあれば大丈夫だよ。」
私「は!?ホントにそう思ってるの?」
一瞬、冗談を言っているのかと思うくらい、完全に金銭感覚がおかしい。
収入に見合った生活 と言うものがイメージ出来ないのだ。
一般的に会社員は、徐々に収入が上がっていく。
だから収入に応じた生活が感覚的に分かる。
一方、妻は社会人の始まりが大手の渉外法律事務所勤務だったので、一年目から高収入を得ていた。
300万 → 400万 → 500万と、徐々に年収が上がっていく経験をしていないから、その収入に応じた生活と言うものが感覚的に分からないのだ。
とにかく、妻にお金の流れを正しく理解させなくてはならない。
私はパソコンで表計算できるエクセルを開き、月々の収支を整理して客観的に数字で説明した。
私「収入が◯◯で、支出が◯◯だから、月々足りないよね??」
妻「たしかに・・・」
(よし、これで現実がわかったから、妻もお金の使い方を少しは改めるだろう。やれやれ・・・)
と、思ったのだが、妻の発想は違った。
妻「じゃあ、あなたの収入を上げるしかないねっ!!」
(・・・そ、そう来たか)
私は、想像していなかった妻の反応に一瞬思考停止した。
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