【連載エッセイ】悪妻のススメ(第10話:プレプロポーズ)
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【 前のエピソードを読む → 第9話:所得倍増計画】
この時期、私の収入を増やすために、妻は私に発破を掛け続けると同時に、もう一つ要求をしていた。
プロポーズである。
一般的に女性は、男性からプロポーズされるのを待つことが多いのではないだろうか。
もうお分かりだと思うが、一般的 という言葉が当てはまらない妻は、私のプロポーズを大人しく待っていられるはずがなかった。
同棲を始めて3ヶ月経った頃から
妻「そろそろかな・・・」
私「・・・?(何言ってるのだろう)」
妻「まだかな・・・」
と、わざと私に聞こえるように呟くようになった。
ある時は、私宛ての郵便物が届いたというので、外出中だった私は、妻に封を開けておいてと伝えると、
妻「本が入ってたよー。本しか入ってなかったよ~。泣」
と、LINEでメッセージとともに、なぜか 泣き顔のスタンプ が送られてきた。
私「・・・??(なんで泣き顔のスタンプ?)」
妻「封を開けておいてとか言うから、サプライズのプロポーズなのかと思ったのにー!」
私「・・・」
あの手、この手で、事ある毎にプロポーズを要求する。
今に始まったことじゃないが、圧が強すぎる。。
もうこれ以上は耐えられないと感じた私は、
「お知らせです。来週10月26日にプロポーズが行われます。」
と、LINEでメッセージを送った。すると、
妻「わーい!ひでくんから、こんなLINEが届いたんだけどー。」
と、無邪気に喜んでいる。
自分の圧の強さを全く自覚していないのだ。
妻「えーと、えーと、プロポーズの日は、花束と手紙と婚約指輪を用意してー。それで片膝をついて、指輪ケースを「ぱっかーん」と開けて、それでプロポーズして!」
私「・・・うん。」
妻「でー、でー、シチュエーションは夜景の綺麗なレストランがいいなぁ~。良さそうなお店のウェブサイトのURLをいくつか送っておくね!ちゃんとお店の人にはプロポーズって伝えて予約してね。」
私「・・・了解。」
とにかく要求が多い。。
妻「あっ!でもよく考えたら、片膝着いて「僕と結婚してください!」っていうのをお店でするのは恥ずかしいか!!お店に花束を持って行くのも大変だよね、、、あ!そうだ!まずお家で1回プレプロポーズして・・・」
私「プ、プ、プレプロポーズ!?」
妻「そう。家で1回プレプロポーズをして、後日、夜景の綺麗なレストランで正式プロポーズがいいな!私は11月15日と12月5日の夜なら予定あいてるよ!!」
女性がプロポーズの日からシチュエーションまで、こんなに事細かく要求する話など聞いたことがない。
私が送った一行のLINEをきっかけに、あっという間は、企画・演出・脚本・主演が妻の壮大なプロポーズ計画が立てられた。
そして、プレプロポーズの当日。
私は、妻のリクエスト通り、花束と手紙と婚約指輪を用意して、家で片膝をついて指輪ケースを「ぱっかーん!」と開けて、プレプロポーズをした。
私「僕と結婚してください!」
妻「はい!あ、ちょっと待って。今の瞬間を写真に撮るから、もう1回!」
私「僕と結婚してください!」
妻「はい!あ!う~ん、左膝じゃなくて、右膝を立てた方がいいよ、もう1回!」
私「僕と結婚してください!」
妻「はい!わぁ、嬉しい〜。」
とんだ茶番だ。。
妻は、自分のイメージと違うサプライズのプロポーズをされるくらいなら、自分がして欲しいプロポーズを全て伝えるから、その通りにやってくれた方が嬉しいと言う。
こんな考え方をする女性は、果たして世の中に何人いるのだろうか?
人は誰もが自分の望む幸せを手に入れたいと願うが、ここまで 貪欲に人を巻き込んでまで自分の望みを叶えようとする人 は、なかなかいない。
どうやら妻はそれを自然とやっているようだが、もしかするとこの妻の行動こそ 自ら幸せを掴みとる唯一の方法 なのかもしれない。
この時期に繰り広げられた 所得倍増計画 と プロポーズ計画 を通して、私はそんな風に思うようになっていた。