【連載エッセイ】悪妻のススメ(プロローグ ②)
【 最初から読む → プロローグ ① 】
仕事だけではない。
妻と出会って私生活も大きく変化した。
以前までの私は、もう何年も運転していないペーパードライバーだった。
そんな私に車で遠出したい妻は、何の根拠もなくこう言い放つ。
「あなたなら出来る」
カーシェアを契約して、久し振りにハンドルを握り恐る恐る運転する私。
そんな運転に怖がりもせず、平気な顔して助手席に座る妻。
「もっとゆっくり走って!」
「次の交差点で右ねー!」
「もうすぐ信号赤だよ!」
偉そうに指示する妻は、まるで自動車教習所の教官だ。
これだけ人に指示できるなら、きっと本人は運転が得意なのだろう。
そう思って聞けば、自分で運転するのは怖くて出来れば一生したくないと言う。
自分のことを棚に上げる天才だ。
やがて私は運転に慣れ、複雑な首都高速だって乗りこなし、結果的に今では家族4人で遠出することが出来るようになった。
家事や育児もそうだ。
私は典型的な亭主関白で、仕事以外は何もしない父と、家事や育児など家の事は全てしている母の姿を見て育った。
当然、将来結婚したら夫の私は仕事を頑張って、家のことは妻が中心にやるのだろうと思っていた。
自分が家事や育児をする姿など想像すらできなかった。
しかし、現実は180度違った。
当然、仕事は頑張るのだが、家事や育児もいつの間にか私が中心だ。
「私にはできないけど、あなたならできる!」
人を鼓舞しているようで、随分と身勝手な妻の言い分だ。
でも不思議なもので本当に出来ない妻を持つと、私がやるしかないという変な使命感が湧いてくる。
すると自分の中に根付いていた価値観や思い込みが、ガタガタと音を立てて崩れ出した。
今日一日だけ何とか乗り越えようと自分を鼓舞して日々を過ごしていたら、気が付けば家事も育児も出来るようになっていた。
そして、ある時ふと気づいた。
この悪妻こそ夫の隠れたポテンシャルを引き出す幻の生き物「あげまん」ではないかと。
ご挨拶が遅くなりました。
私は東京で会社員をしながら、結婚して丸6年になる妻と3才の男女の双子、そしてティーカッププードルのワンコ1匹と暮らす「ひでさん」と申します。
「悪妻」こと私の妻は、東京の銀座で弁護士として働きながら、双子を育てるワーキングママをしています。
「弁護士としてバリバリ働きながら、双子の育児してるなんて凄い!」
その外観から妻のことをよく知らない人は、尊敬と憧れの眼差しで見ることも多いようです。
でもその実態を知っている私には、家の外の妻は「世を偲ぶ仮の姿」にしか見えません。そんな私たち夫婦のことを友人や知人に話すと、
「どうして、そんな風になったらの?」
「旦那さん、働いてるんでしょ?すごくない?」
なんて目を丸くして驚かれることも多く。
良くも悪くもそんなに興味を持っていただけるなら、私たち夫婦のことを世の中に発信してみようかな?
そんな思い付きから、スマホでポチポチとこの文章を書き始めました。
このエッセイは、家事や育児の大変さを夫に理解して貰えず悩んでいるママさんに読んで貰いたい。
もしかすると、私の妻の言動はそんな悩めるママさんたちのヒントになるかもしれないから。
また、結婚に癒しや安らぎより、未知への好奇心と、良い意味で変化を求める向上心のある独身男性にも読んでほしい。
こんな女性が実は「あげまん」の正体だと知ってほしいから。
そして、私が悪妻をススメる理由を知って貰えたら、何だか嬉しく思います。
プロローグが長くなりましたが、それでは「連載エッセイ 悪妻のススメ」お楽しみください。
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