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【連載エッセイ】悪妻のススメ(第3話:お試し同棲 ①)

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次の週末、今度は私が妻の家を訪問した。
4月上旬の桜が咲き乱れる季節だった。

妻の家の近くの地下鉄の駅を地上にあがったところで待ち合わせした。

私が到着すると、妻は目の前のコンビニの中にいて、外から手を振るとすぐに気づいて外に出てきた。

私「こんにちわ!

妻「こんにちわ。ウチこっちです。

満開の桜が咲き乱れる絶景の通りを横目に

もうすぐ春だなぁ〜

なんて呑気に考えていたら、駅から100mも歩かずに妻の住むマンションに辿り着いた。

近っ!

家の中にあがると、何だか異国へ来たかのようで全く落ち着かない。

私「ここに座る感じでいいですか?

ソワソワしながら、自分の居場所を探して、私は近くの椅子に腰掛けた。

すると妻は手作りの「ちらし寿司」を用意してくれていて、それを一緒に食べた。

私「これ美味しいですね。

妻「良かった。

少しずつ家の空間に慣れてきて、あらためて部屋の中を見渡すと、何故かリビングのテレビの前にフィットネスバイクが置いてある。

あの配置はテレビを観るとき邪魔じゃないのかな・・・

なんて勝手に心配をした。

食事を終えると妻は食べ終わった2人分の食器を下げて洗い物を始めた。

結婚したらこんな生活になるのか・・・

台所に立つ妻の後ろ姿を見ながら、そんなことを思った。


妻「結婚したら専業主婦になりたいの。

以前、妻がそう話していたことを思い出す。

きっと結婚したら、外で働くより家の中で家事や育児をして過ごす主婦になりたいんだろう。

私の母親が専業主婦だったこともあり、専業主婦の妻との生活はイメージが出来る。

私自身、働くことは好きだし仕事に対する向上心もある。
妻が専業主婦になることは大歓迎だった。

それにしても言葉とは極めて曖昧なものだ。

この時、妻がイメージしている専業主婦と、私のイメージしている専業主婦の姿が、まるで違うことを知るのは、もう少し先のことだ。


さて、これでお互いの家を見学したから、どっちの家に住むかを決める必要がある。

私は何となく自分の家に来て貰った方が、何かと楽だな~と考えていた。

しかし「何となく」なんて緩い意志で妻と向き合うことは、何も意見がないに等しい。

私「どっちに住もうか?

妻「私の家の方が職場からも近いし、あなたの家は駅からの夜道が怖いから私の家でしょ!

私「(相談して決めるんじゃないのかーい!)・・・あ、そう。じゃあそうしようか。

きっと妻の辞書には「自己主張」という文字が太字で書いてある。

私の意見に耳を傾ける素振りもなく、明確な主張で妻の家に住む方向になってしまった。

妻「じゃあ、試しに今度のゴールデンウィークをウチで過ごしてみたら?

私「そうだね・・・。じゃあ、まずはちょっとお試しで行くよ。

実のところ、私は男友達と旅行に行っても3日くらいすると、一人になりたくてウズウズしだすほど、自分の時間が必要な性分だった。

ましてや出逢って間もない女性と一緒に暮らすなんて耐えられるか不安がよぎる。

私にとっては大きな挑戦だった。

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