
1年前の思い出を探り味わう
1年前、どこで何をしていたか。記憶をさかのぼってみても、すぐに分かるわけではない。私は1年前、家を持たずに日本全国の街を巡り歩いていたから。
何月何日にどこにいて、誰と出会って、何をしていたのか、写真やInstagramのストーリーズのアーカイブを見て、やっと分かる。

昨日まで静岡にいたのに今日からは1週間神奈川、その後2週間は東京にいたと思ったら、さらに2週間は福岡に。私の旅するように暮らす生活は、いつもどこかへただよって、さまよっていた。
「1年前は何をしていたのだろうか」と仕事中や散歩をしているときに、ふと気になってしまう。「1年前は佐賀にいたんだな」「ちょうど1年前の今くらいにあの人に出会ったんだな」「1年前、海が広がる景色の美しさに息をのんで、海の近くに住みたいと思ったんだな」、そういうことを次々に思い出す。

思い出にすがって生きているわけではないけれど、懐かしく思い出せる思い出がぎゅっと詰まっている暮らしは、やっぱり豊かに感じる。
あのときいた場所、出会った人、私の目を通してみていた景色。そんなものが1日単位で入れ替わり、思い出の層が重なっていく。過ごした街が多いからこそ、懐かしく感じる思い出も多い。

旅するように暮らす生活の中で得られたのは、そういう類のものだと思う。1年前はどこで何をしていたかを愛おしく思い出せること。
たとえば、1週間に1回、「1年前は何をしていただろう」と思い出してみると、それぞれが全く違う場所で、違う景色を見ているのだ。そんな人生、そうそうない。
だからこそ、私はやっぱり、1年間の家を持たずに旅するように暮らせてよかったなあ、と強く感じるのだ。

他の誰でもない、私の人生として、私が行きたい場所を選び、そこで旅行ではなく生活をする。そんな経験をしたからこそ、今の自分がいる。そして1年前を愛おしく思い出せるような街や人、景色がある。
あのときの景色がバーッと目の前に広がるように、臨場感もって思い出せるのは、きっと豊かなのだろうな。

1年後、いまの私を私はどのように思い出すんだろうか。そんなことを考えたら、未来の私が心豊かに愛おしく思い出せるような日々にしたい。
いいなと思ったら応援しよう!
