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父の思い出

私が32歳のとき、父はこの世を去った。

画像はその1週間前。入院中の私に寄せる手はとてもやさしく。
まさか翌週に亡くなるだなんて夢にも思わなかった。

私は父の愛情を一身に受け育ち、幸せな学生生活を送ってきた。
輪姦被害を受けたと伝えたとき、父は電話口で静かに泣いていた。
新婦の手紙だろうと、還暦おめでとうのお祝いだろうと、一切涙を見たことはない。強い人だった。
格好つけててお茶目でひょうきん。負けず嫌い。毒舌だが愛がある。
そんな人だった。

父も苦しんでいたということを知らずにいた。
「私を置いて旅立つことは、私を愛していない表れ」と恨みに思う時期こそあれ。愛していれば、この世にとどまる理由になり得ただろうと思う夜も何度あったことだろう。

だが一度も父を憎んだことはない。愛された分、愛していたから。
何度父のところに行きたいと願った日々も今はむかし。

会えなかったぶんの話をしたい。全部笑って聞いてくれるだろう。
それまで気長に待っていてほしい。大好きなジャックダニエルとチョコレートを持って、会いに行くからね。








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