地獄の生理痛
私、年一くらいで地獄の生理痛がある。
まず、腰痛から始まる。
痛み止めって、飲みすぎるとあんまり効かなくなるから、出来る限り飲まない方が良いって話を聞くよね?
それで、痛み止めを飲まないで布団の中でじっとしているんだけど…
どんどん痛みが強くなっていって、腰痛だけじゃなくて腹痛も始まり出す。
それからトイレに駆け込むんだけど、今度は下痢が止まらなくなって、個室から出られなくなる。
加えて吐き気もしだして、堪えきれない時は吐いちゃう。
上からも下からも止まらない。
あまりの痛みに全身から脂汗が吹き出て、バケツの水を被ったくらいビショビショになる。
痛みで呼吸が早くなって、過呼吸になると手足が痺れだす。
そして、全身が順番に吊っていく。
下痢も吐き気も止まらないのに1mmも体を動かせない。
まさに地獄の苦しみ。
初めてそのレベルの生理痛を体験した時、私はトイレの個室の中にいた。
ちなみにシェアハウスに住んでいる。
トイレから苦悶の呻き声を上げていたら、近くの部屋から人が出てきた。
「大丈夫ですかー!?」
そう、声をかけられた。
痛みでどうにかなってしまいそうだった。
その時、生理痛が始まってから既に2時間くらいが経過していた。
堪らず救急車を呼んでもらったんだけど、下痢の波が中々収まらなくて、暫くトイレから出ることが出来なかった。
公共トイレの汚い床に転がり出るようにして個室から飛び出したところを、救急隊員の方に受け止められた。
「うわ!すごい汗だね!誰かー!!バスタオル持ってる方、いませんかー!?」
そう声を張り上げると、誰かがバスタオルを持って駆けつけて来てくれた。
同室の人が、私の鞄やら着替えやらを持ってきてくれて、そのまま担架に運ばれた。
救急車の中でも地獄の痛みは続いていた。
痛みでつい呼吸が「ハッハッハッハッ」と早くなる。
隊員の方が私に呼び掛ける。
「呼吸早くしないで!体痺れるでしょ!?ゆっくり呼吸して!!」
言われた通り、なんとかゆっくり息を吸って吐いてみる。
でも、気づくとまた過呼吸になってしまう。
「ゆっくり!!ゆっくり呼吸して!!はい、吸ってー!吐いてー!!」
度々注意され、その掛け声に習って息を吸ったり吐いたりした。
ようやく近くの病院に担ぎ込まれ、ベッドに寝かせると、救急隊員の方は去っていった。
「○○さん!動けますか!?」
女性の看護師さんが駆けつけてきた。
でも、まだまだ痛みが収まらなくて、とてもじゃないけどベッドから起き上がれそうにない。
「かなり汗をかいてますね。脱水症状を起こしているので点滴を打ちますね!」
そう言い、すぐに点滴の準備を始める。
私は昔から血管が細くて、注射を打たれる時いつも看護師さんが中々静脈をみつけられない。
それで、やはり点滴を打つのに手こずっていた。
「腕の血管が細すぎて点滴が打てないので、手首から打ちますね!」
そう言うなり「ブスリ」とぶっとい針を差し込まれた。
めちゃめちゃ痛かった。
点滴を打たれて1時間くらいが経過しただろうか。
看護師さんが呼び掛ける。
「○○さん、起き上がれませんか?」
私は力なくゆるゆると首を振った。
「なら、このまま産婦人科までベッドで移動しますね!」
そう呼び掛けると、ベッドごと私を移動させ始めた。
ベッドにはキャスターがついていて、ガラガラと音を立てながら院内を駆け回った。
病院は混んでいて、エレベーターを利用しようにも一般のお客さんでいっぱいだった。
看護師さん達の奔走のおかげで、やっと産婦人科にたどり着いた。
「○○さん、動けますか?」
診察室に入ると女医さんに聞かれた。
またしても私はゆるゆると首を振る。
「じゃあ、一番強力な痛み止めの座薬を入れますね!」
そう言うや否や、ズボンをペロッと捲るとお尻の穴に座薬を押し込まれた。
『良い歳して座薬を入れられるなんて…』
そう思ったけど、痛みで恥ずかしさどころじゃなかった。
更に一時間くらいたっただろうか。
やっと痛みが収まった。
改めて先生と向き合う。
検査に異常は見られず、結果は『月経困難症』と診断された。
診察を終え、ルームメイトが鞄に突っ込んでくれた服に着替える。
精算を済ませて病院を出ると、夏なのにとっぷり日が暮れていた。
地獄のような痛みを味わった長い1日だった。