黄昏泣き
皆さん『黄昏泣き』ってご存知?
幼児が夕暮れ時に泣く現象。
数年前にネットでそのメカニズムが分かりつつある、というような記事を読んだ。
あれって、幼児の脳が未発達なせいで、記憶が処理しきれなくて泣くんだって。
実は私、その時の記憶があるの。
多分2歳だった。
当時、田舎の県営住宅に住んいでた。
最上階の5階。
ベランダにはお砂場セットと三輪車が置いてあった。
まだまだ遊び足りない私は、1人ベランダに出て好き勝手に遊んでいた。
私は、赤い三輪車に目をつけた。
ペダルに足を載せてみたり、ハンドルを握って一生懸命キコキコ動かしたりしていた。
ふと、外の景色に目をやったの。
真っ赤な夕日があたり一面をオレンジ色に照らしていた。
真っ赤で、大きな太陽。
血みたいに真っ赤だった。
その夕日を見た瞬間、頭の奥から「シュワシュワシュワシュワ〜」って、潮騒のような音が全身に響き渡った。
自分の体が爆発して、バラバラになってしまいそうな感覚が私を襲った。
頭の中にスピーカーがついてるみたい。
激しい潮騒が脳内でこだまし続け、私を何処かへさらっていこうとしていた。
全身の血が湧き立ち、逆流するような感覚。
当時、まだ言葉もろくに覚えていない私には、その現象を説明することが出来なかった。
自分が自分でなくなってしまいそうな、自我が消滅してしまいそうな、そんな危うさ。
インクの出が悪いボールペンを、紙に「グルグルグルッ」って書き殴るみたいに、頭の中がぐちゃぐちゃになった。
全てのものがオレンジ色に染まった世界で「うわあぁぁぁあんっ!!!」と、火がついたように泣き出したんだ。
頭の中の潮騒が気持ち悪かった。
その潮騒が全身までくまなく渡って、手足も何もかも気持ち悪かった。
泣くことで、バラバラになりそうな心と体を繋ぎ止めようとしたんだ。
そんな記憶。
だから、私は黄昏泣きについて説明が出来る。
身をもって体験したから。
自信を持って証明できる。
皆さんにもそんな記憶はありますか?
もしくはお子さんにそんな現象はありませんでしたか?
きっと、思考が処理しきれなくて、気持ち悪くて泣いてしまうのかもせれませんね。