水産現場のユーザーに寄り添うウーオ流プロダクト開発
こんにちは!株式会社ウーオでUI/UXデザイナーをしている久保坂です。
2022年12月22日に行われた自社イベント「UUUO Developers Meetup #2」に登壇をしました。
「水産現場のユーザーに寄り添うウーオ流プロダクト開発」というタイトルで、BtoBのサービス開発においてユーザーに寄り添うためのウーオの取り組みについて紹介しました。
この記事ではイベント登壇時にお話した内容についてまとめます。
自己紹介
久保坂(@misaaa09)です。
新卒入社で約6年ほど、クックパッド株式会社でtoC領域のサービスデザインに関わっていました。
ウーオは、toB領域で、かつ水産業という自分の生活には全くゆかりのない業界で、新しいチャレンジが多く自分の成長に繋がりそうと思い、2022年の1月に入社しています。
ちなみに魚についてはド素人でウーオに入るまで家で魚を食べることすら少なかったのですが、入社してから魚をさばくようになったり、市場に行ったり、写真にある8kgの大鯛(😇)をウーオアプリで注文したりしながら魚や水産業について勉強中です 🐟
本日はそんな魚のド素人でも、現場のユーザーに寄り添ったサービスを作るために、会社で取り組んでいることについてご紹介します。
ウーオが提供するプロダクトについて
株式会社ウーオ(以下:ウーオ)は「すべての町を、美味しい港町に。」というビジョンのもと、全国どこにいても美味しい魚が食べられる日常を当たり前にするために、法人向けの水産流通プラットフォームの構築を目指しています。
現在は全国の産地と消費地の業者をアプリ上で繋ぎ、安定した仕入れや販路拡大に活用できる水産マーケットプレイス「UUUO」の開発を行っております。
水産流通に関わる全ての卸売業者に使ってもらえるプロダクトのため、ウーオが向き合うユーザーは、「水産卸売に関わる人達全員」となります。
ウーオにおける現場ってどんなところ?
こちらの写真は、ウーオが向き合う現場である「水産業界」の一部です。
普段はあまり見ない光景かもしれませんが、私達がスーパーなどで魚を買って食べるまでには、複数の卸売会社が日々魚を買ったり売ったりしながら流れてきます。
私自身も市場に行き、卸売業者の仕事現場を観察したりしますが、夜中から翌日昼頃までやることが多く、体力的にも大変でかなり忙しい現場です。
まだまだ電話やFAX、手書きが主流の業界であり、毎日大量で複雑な魚の情報をアナログで管理している現場です。
そんなアナログで過酷な労働環境である、水産現場に寄り添ったプロダクトを作っていくために、ウーオではどのような流れで開発を進めているかについてご紹介します。
ユーザーに寄り添うための開発ステップ
実際の開発フローとしては仮説/設計・実装・検証のサイクルを細かく回していますが、仮説/設計の段階ではこの4ステップを大事にしながら日々進めています。
業界の構造を理解する
ユーザーに寄り添うためにはユーザーを理解することが必要不可欠です。ユーザーを理解する上でもまず、ユーザーが日々行っている水産卸売の業界の構造や特徴などを理解しないと、ユーザーにいきなり話を聞いても解像度が上がりづらいので、まずは業界の理解を深めるようにしています。ユーザー課題を理解する
ユーザー理解を深めるために日頃から開発チームも多くのユーザーヒアリングや現場観察を行っています。今回は、ヒアリング以外の点で、ウーオの特徴的な取り組みについてご紹介します。課題を解決する仕組みを考える
これは、課題に対してどういった手段で解決するか?の仮説を立てていくステップです。ウーオでは、PdMやデザイナーを中心に解決手段を具体化し、ユーザーヒアリングなどを行いながら方針を決めています。業務に溶け込むUI/UXの磨き込み
こちらはこの後、詳細な取り組みについてご紹介します
2と4の取り組みについて詳しくご紹介していきます。
ユーザー課題を理解する
このステップで大事にしていることは「ユーザーやユーザー課題の解像度を圧倒的に上げる」ことです。
なんとなくふわっと理解するのではなく、詳細なエビソードレベルまでの理解や様々な立場の人の理解など広く深く理解していくことによってこの後のステップの「仮説立て」の精度が上げられます。
ウーオでは、このユーザー課題を理解するステップにおいて特徴的な取り組みが2つあるのでご紹介します。
1つ目は、「自分たちがプレイヤーになってみる」ということです。
実はウーオは創業当初からアプリ開発をしていたのではなく、鳥取の仲買人として事業をスタートしました。
やっていた業務としては、日々鳥取で水揚げされる魚を買付け、全国のスーパーや仲卸などに販売し、売上を上げていく卸売業者としての業務です。
自分たちがユーザーと同じ業務を同じ目線で行うことにより、ユーザー理解や課題発見を行ってきました。
鳥取の仲買人としての事業は現在は終了していますが、この取り組みがあったことで今でも継続して得られているメリットが3つあります。
自分たちが当事者になることで、外から観察したりヒアリングする以上の解像度で課題を理解できる
「アプリを作るスタートアップ企業」としてではなく「鳥取の魚屋」として、業界に入り込むことで、仲間意識を持ってもらえ、ユーザーとの協力関係が作れる
社内に、仲買人をしていたメンバーがいる状態なので、気軽に社内でユーザーに近い人にヒアリングができる
2つ目は、「ウーオメンバーが全員追加できる改善アイデアリスト」です。
普段ユーザーと接する機会が多いセールスやCSのメンバーこそユーザーの課題に目にしたり耳にしたりする機会が多いと思います。
そういった開発チーム以外の視点からも、ユーザーの課題をキャッチしやすくするため、気軽に書き込めるアイデアボードを作っています。
ここで工夫している点としては、誰が書いても必要な情報が網羅できるテンプレートを用意しているところです。
よくある問題として、こういう機能がほしい、といったアイデアだけが伝達されてしまい、肝心なその背景のユーザー課題がよくわからない、という状況があるかなと思います。
そういった状況を避けるため、アイデアと、ユーザーの課題をセットで言語化してもらえるテンプレートを用意しています。
このボードを用意したことで、幅広いメンバーからのアイデアやユーザー課題が寄せられ、このリストから数多くの施策も実際にリリースされました。
また、ユーザー課題を言語化する癖を社内全体で作ることが出来るため、手段選考ではなくユーザー価値ベースで議論をする文化を形成できるのもやってよかったことかなと思います。
業界に溶け込むUI/UXの磨き込み
続いて、仮説を立て課題解決方針を決めた後のステップとして、ウーオでは業界に溶け込むUI/UXの磨き込みを意識しています。
このステップで大事にしていることは「従来の商習慣をブチ壊す圧倒的な使い心地」です。
水産業は、古くから続く商習慣が強く根付いた業界であり、この業界で新しいものを使い始めてもらうためには、従来の習慣には戻れなくなるような圧倒的な使い心地が必要だと思っています。
UI/UXの磨き込みを行う上で、特徴的な取り組みを2つご紹介します。
ユーザー課題や仮説、ざっくりとしたラフイメージがまとまった早い段階で、開発チーム外のメンバーに内容の共有と懸念だしをする会を実施しています。
ウーオのセールスやCSメンバーは、アプリを営業するだけでなく、普段魚の卸売業務も行っているため、ウーオの視点や売り手の視点、買い手の視点を解像度高く理解しています。
ユーザーと日々接するメンバーに早めに意見をもらうことで様々な考慮不足が減り、UI/UXの改善に活かすことができたり、実装前に不要な機能の削ぎ落としの検討がしやすくなります。
また、早い段階で施策の内容を共有することで、リリース後のウーオ社内のオペレーションについて事前に作戦を立てられるのもメリットです。
また、細かな仕様や見せ方を検討していく段階で、魚に詳しいメンバーと一緒に細かい表現のチューニングを行うこともあります。
アプリで扱う文字表現やデザイン表現などはユーザー視点であればあるほど、従来の商習慣から違和感なく移行できる体験を作ることが出来ると考えています。
例えば、魚の鮮度を表す「鮮度評価」機能を開発したときは、魚の鮮度を表す表現が魚によって厳密には異なっていくことが、作る中でわかってきました。
例えばカニなら生きているか死んでいるかが重要な情報だったり、
鮮度いい魚は生で食べられるとは限らず、そもそも生で食べないような魚もいたり…
過去に鳥取の仲買人として働いていたメンバーと一緒に、魚の鮮度をどのように伝えるとユーザーに違和感なく伝えられるか?を検討し、約1000魚種分の鮮度評価を最終的に約10パターンに落とし込み実装を行いました。
このように、魚に詳しいメンバーと、魚ド素人メンバーが一緒に取り組むことで、業界の新参者〜玄人までまんべんなく使える落とし所を見つけることができました。
全体を通してウーオでならではの環境
ここまで、ウーオで取り組む、ユーザーに寄り添うための開発ステップとその取組についてご紹介しました。
また、最後にこの全体のステップを通して、ウーオならではの環境が2つあるかなと思っています。
最後にその2つをご紹介します
1. セールス・CSが、日々ユーザーと同じ卸売業務を行っていること
一般的なBtoB事業の企業だと、セールスやCSの役割というのはサービスを売り込んだり、利用のフォローや運用のサポートをしていくなどが中心だと思いますが、ウーオはその業務だけでなく日々プロダクト外でも魚を買って売る卸売業務を電話やLINEを中心に行っています。
そういった他の卸売業者と同じような業務を行っているからこそ、ユーザー視点での課題発見がしやすい環境が特徴としてあるかなと思います。
2. チームの垣根を超えて意見を出し合える関係性
ウーオは現在開発チームが4人(※業務委託メンバー除く)で、全員で18名という小規模な組織というのもありますが、社内の情報連携は常にオープンに、職種をまたいで気軽にコミュニケーションをしていく文化があるかなと思います。
全員がプロダクトについて意見を出しやすい仕組みを作ることもそうですが、普段から業務以外で交流する機会を作ることで何でも言える関係性が作れており、それが開発にも活かせているなと思っています。
おわりに
ユーザーに寄り添うプロダクト開発を行うために、ウーオが取り組んでいることについてご紹介しました。
水産業という特定の領域でドメイン知識が必要だからこそ、常に自分の想像を疑って調査を徹底し、ユーザーに寄り添う姿勢を持って全員が事業開発に取り組んでいます。
今後も、持続可能な水産業を目指しユーザーに寄り添った開発を続けていきたいと思っています。
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