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UCとご飯の話
脂質40gの壁
「今日1日の食事で脂質を何g摂りましたか?」
と聞かれて、大まかな数字が出る人はあまり多くないかも知れません。
脂質40gとは、潰瘍性大腸炎患者が1日に摂っても良いとされる目安です。
これを超えると体調を崩しやすくなったり、再燃のトリガーになる可能性があると言われています。
同じIBDのクローン病は更に厳しく、上限30gとされています。
脂質が必ずしも再燃のトリガーになるとは言い切れませんが、腸管に対する刺激を抑える事は全く無駄とも言い切れないので、脂質を気にしながら生活している患者様はそこそこ多いのではないでしょうか。
私が潰瘍性大腸炎(UC)を発症したのは19歳の頃でした。
ジャンクフードもお菓子もジュースも生活の一部でしたが、外食が特別多い環境でも無く、大食いだったり極端な少食でも無く、偏食家でも無く、極めて普通の食生活だったと思います。
しかし、UCを発症し日常生活を送るにあたって、食事のストレスは格段に増えました。
食べたい物があっても栄養成分表示を見ずに食べる事が出来なくなり、確認しては「これは食べられない」「これを食べたらこれは食べられない」「私は好きな物が食べられなくなってしまった」と、悲しい気持ちになった事をよく覚えています。
美味しいものは脂肪と糖で・・・
こんなフレーズが最近までCMで使われていましたよね。
これは本当にその通りで、特に20代半ばまでは友人達と食事に行くのが苦痛に感じられる程「美味しいもの」の誘惑は強かったです。
また、食物繊維などの残渣が多い食品についても腸管に負担が掛かるので控えるように、治療で免疫を抑制するので生魚や生卵、柑橘類も出来れば食べないで欲しいという指導もあって、「何だったら思いっきり食べていいんだ?」とやさぐれた時期もありました。
特にこの病気は何に関しても「個人差」という便利で厄介な言葉が付き纏い、誰かの体験や記録が自分には当てはまらないというケース、医療機関によって指導内容が微妙に異なっているというケースも多々あります。
食事に関しては特に顕著で、ほぼ人体実験に近いものがありました。
どんな体調の時、何をどれ位なら食べても大丈夫なのか、体調が悪くなった時に何を食べて凌ぐのか、カフェインは?お酒は? など、自分で自分の食を開拓していくのです。
私が体調を崩しやすくなる所謂NG食がこちらです。
・唐辛子など辛味の強い香辛料
・炭酸飲料
・ナッツ類や豆菓子
・セロリ、ゴボウ、海藻などの繊維質が強い物
・過度のアルコール
上記の他にも、揚げ物や洋菓子などは量を間違えるとたちまち下痢が始まり、そのまま再燃ルートに片足を突っ込むなんて事もあったのでやはり脂質の管理は大事ですね。
私の場合、血便が出始めるともう自力で持ち直すことは出来ないので、大腸が不機嫌になった時は下記のような対応で入院回避に躍起になるわけです。
・食事を安全食に切り替える
・睡眠時間を多めに確保する
・ビタミンB群とビタミンDを意識的に摂る
・お腹を冷やさない
因みに安全食は入院生活でおなじみの低残渣低脂質食です。
大腸内視鏡検査の前日食のようなイメージで、下痢を恐れず水分を多めに摂る事も大事です。
自分の大腸を労りつつご機嫌取りをするしか出来ることはありません。
第2の脳の前に自我は無力なのです。
そして再燃へ・・・
こうして再燃したりしなかったりを繰り返して色々頑張って悟った事が一つあります。
何をしようと悪くなる時は悪くなる、という事です。
これは日頃気をつけている事が無駄だと言う話ではなく、色々気をつけてそれでも悪くなったらもうしょうがないよね!というマインドの話です。
初めて再燃というものを経験した時の話です。
当時は食生活を低残渣低脂質でガチガチに縛り、我慢に我慢を重ねた上での再燃だったので、特にショックが大きかったです。
退院後、「次は失敗しない」という気持ちで再び同じように食生活を徹底しましたが、寛解を1年以上キープする事は出来ませんでした。
指導通りの生活をしていても寛解維持が上手くいくというわけでは無いのかもしれないと思い、徐々に縛りを緩めたりしました。
結果的に、大きな差異はありませんでした。
再燃のトリガーを把握しておく事はとても大事ですが、再燃の原因が何なのか本当のところは今の所誰にもわからないので、しょうがない事なのです。
私は夏や冬に再燃することが多かったので、入院のことを「バカンス」と呼んでいました。
ちょっと頻度が高かったのは我ながら不健康だなと思いますが、ゆっくり身体を休めに行くのですからそれくらいでちょうどいい気がしませんか?
食べる事
絶食したり、食事が栄養剤になったり、食べたい時に食べたい物を食べるという事が難しくなったり、症状に負けず劣らず食事にも振り回されています。
しかし、私は前よりずっと食べる事に興味を抱くようになり、前よりずっと食べる事が好きになりました。
ある意味では、好きな物を好きでいられるように治療を頑張っているのかも知れません。
食は私の喜びでなのです。