【希少がん】手術入院中の食事と経過〜直腸NET(神経内分泌腫瘍)〜ESD
<シリーズ・胃腸と向き合う #4>
思い切って受けた大腸内視鏡検査でひっかかり、再検査の結果、希少がんの一種である「神経内分泌腫瘍(直腸NET)疑い」と診断。メスがついた内視鏡を用いての手術(ESD)を受けるため、入院することになりました。今回は入院中の食事と出来事についてです。
1日目 はじまりの日(検査食)
10時ごろ病院に到着。日曜入院だったので、休日・救急外来から入りました。平日とは違いガラガラ!薬剤師の方との面談を終えて、管理用のリストバンド(防水抗菌)をまいてもらい大部屋(4人部屋)へ。数日間、お世話になります。
シャワー室は部屋からすこし離れた場所にあり、事前予約制。部屋の前に時間帯が書かれた予約票が貼ってあります。「空いてる時間帯の欄に(個人情報保護のため)名前じゃなくて、藤川さんの好きな記号を記入してくださいね」と看護師さん。気分を上げるため、「大きな黒丸(顔)の上に、小さい黒丸(耳)を2つ」くるくると書きました。これは、ミッキーマウスだ!
12時、昼食。入院して初めての食事です。配膳されるとカメラのシャッター音があちらこちらから聴こえてきます。ほんとうは撮影禁止だけど、みんなで食べる喜びを共有しているみたいでうれしい。その後は、シャワーを浴びて、大相撲春場所の初日をみたあと、夕食。大河ドラマ『光る君へ』は録画で楽しむことに。
下剤を2種類、飲んで寝ました。
2日目 直腸NET、ESD手術当日(絶食)
いよいよ手術当日。朝から一日、絶食です。
7時、腸をきれいにするため液体タイプの下剤(ニフレック2リットル)を渡されました。見た目はまるで液体洗剤の大容量詰め替えパック!説明には「1時間に1リットルの速さで服用」とあります。やや注ぎにくいですが、モビプレップよりも飲みやすいです。(ツッコミどころの多いパッケージでしたが割愛。)
10時から点滴、13時〜15時まで手術。
私の受けた「ESD (内視鏡的粘膜下層剥離術)」は、「確実に腫瘍を取るため粘膜より下をやや深く剥離する手術」だそうです。メスのついた内視鏡を用いて行われます。
主治医によると腫瘍は、腸壁(膜)の中に埋もれていて「おまんじゅう」のようになっているそう。手術では「膜(=皮)に包まれた腫瘍(=あんこ)のみを取り除く」とのことでした。
おおざっぱな流れは、
①マーキング
②腫瘍周辺に薬剤をいれ「山」を作る
③その「山」をグリグリしながら取り除く
手術中、鎮静剤が効かなかったのか割と意識はハッキリしていたので手術を見学(?)。洞窟の中で化石を発掘しているみたい。剥がされてる感覚は少しあります。あ、ここグリグリされてるな〜と言う感じで、むずむずはしますが、痛くはありません。
書こうか迷ったのですが、主治医、執刀医の先生とは別に、他の先生も見学に来られていました。手術は、まるで格調高いお庭を剪定するかのように、繊細にチョキチョキと腫瘍を切り取っているように見えました。その中で見学されていた先生が「NET(※私の腫瘍)は繊維質だからね」と仰ったのが印象に残っています。
自分の身に起きた出来事…少しでも良いから知りたい!「そうか私の腫瘍は繊維質なのか……」と思ったのですが、知識がないので、「だから何なんやろう?」と結局、無に帰す羽目に。ただ本当に、何度も言いたいのですが、意識はあったものの、ぜんぜん痛くありませんでした!!
術後はストレッチャーに乗せてもらい、寝たまま移動。本当にとても楽で、ありがたかったです。誰かに助けてもらえるなら、「寝たまま」が世界で一番楽な移動手段だと思います。
その後は、2時間ほどの安静。飲食禁止!
夫が来てくれて声は聴こえていましたが、動けないので会えませんでした。安静解除後、大相撲春場所をみて、ぼんやりタイム。夜は和泉宏隆トリオ『A SQUARE SONG BOOK -Remastered Edition-』を聴きました。名作です。
3日目 家族と食事との再会(流動食)
点滴は続きます。採血とレントゲンの結果、身体に異常は見られず、お昼から食事再開。味を感じる!味は〜うれしい〜うれしいものですね〜!昼食後には夫と母が、たまたま同じタイミングで面会にきてくれました。帰らんとって〜。
夜はリンゴジュース。でも100mlとミニサイズ!アンパンマンジュースと同じだ〜と思ったら、アンパンマンジュースは125mlでした。
アンパンマンジュースよりも少ないなんて!
さて色々なことに慣れてきた頃。大部屋はカーテンで仕切られていて、移動する時はカーテンの向こう側へ行きます。このあたりから、レールの「シャァーッ」という音をなるべく立てずに開けられるようになってきました。下からチラリとめくり上げるようにするのがコツです。くだらないことを考えながら、空腹に耐えました。
4日目 栄養指導(3分菜食)
点滴は外れました。身軽になったので、洗濯をすることに。洗濯機と乾燥機は、テレビカードを差し込んだら動くんです。なんでもカードだ。
もたもたしていたら、病院スタッフの方が「きれいに掃除したけど、洗浄モードがあるから実演したるわ〜」と使い方をレクチャーしてくださいました。うれしい。
洗剤はお姉さん(夫の姉)のアドバイス通り、ジェルボールタイプのものを持ってきたので、ポンッと入れるだけ。入院中の洗濯とシャワーはリフレッシュにうってつけですね〜。ちなみにテレビカードの残高は584(※最初は1000)。意外と長持ちでびっくり。
朝、重湯から3分菜食になり、おかずと、ふにゃふにゃのおかゆが登場。お米の形に感動!
10時半からは栄養指導。術後は、粘膜が剥き出しになっているため、刺激の少ない食材選びが大切とのこと。おりょうり、がんばりましょう。
管理栄養士の方に「お野菜などは長めの時間で煮込んだ方がいいですか?」ときくと、「徐々に食事を慣らしてるので、そこまでしなくても良いですよ。でも、いつもより小さめに切ると、同じ調理時間でも柔らかく仕上がるのでおすすめです。」と教えていただきました。退院後、1〜2週間は食事に配慮する必要があるそうです。
夜、3分菜食から5分菜食に変わりました。やった〜!おかゆがより白米に近くなり、消化しやすい食事から、普通の食事に戻りつつあります。「食上げ」というそう。レベルアップです〜!
5日目 退院日が決定(5分菜食)
朝、消化器内科部長の先生が来てくださいました。日頃の不摂生を思い背筋がピンと伸びましたが、親戚にいたんじゃないかと思うくらい、親しみやすく優しい先生で安心しました。
あす退院することが決定。経過は良好で予定通りのスケジュールです。事務所のマネージャーさんに連絡をしたら、すぐに返信がありました。色んな意味で、ひとりじゃないねんな〜としみじみ。ありがたいことです。
主治医である先生ともお会いして(毎日来てくださいました)、いまの状態や今後の日程について伺いました。次回の診察は月末で、病理検査の結果を教えてもらいます。頭をよぎったのは、もうしばらくは検査せんでええんかな、ということ。それはまだ先生にも分かりません。考えるのはやめました。
病院内を散策。退院したらもう来ることもないんかな〜お世話になったな〜と寂しい気持ちに……いや、ちゃうやん!あなた、さっき先生に次回の診察日ききましたよね〜。また来ます。あかん、緊張感が抜けてきて、ぼーっとしている。そんな時こそ、段差につまずいたり柱にぶつかったりしがち。なんかあったら困るので散策するのはやめました。
夜、なに聴こうかな。『Tony Bennett & Bill Evans Album』にしよう。新たな記憶がまた一つ、メロディーに溶けていきます。
6日目 シン・はじまりの日(※退院)
退院の日。とても長い6日間でした。
おわりに
淡々と出来事を書き連ねてきましたが、漠然とした不安もありました。
ず~っとこわかった!
病室のベッドの上で、1人ボーっとしていると、ミヒャエル・エンデの『モモ』にでてくる「虚無」のようなものに襲われて、4人部屋なのに誰もいないような感覚になりました。
特に手術前夜は心細かった〜。リラックスしようとホットアイマスクをつけて、大好きなアルバム(Goldmund『Famous Places』というピアノアンビエントの作品)を聴きながら眠ろうとしたんです。
目を閉じたら、じんわりと目の周りが温かくなってきて、耳には聴きなじんだ心地のよいピアノのメロディー。心がゆるんでいくのが分かります。だんだん、いろんな感情につつまれ、涙がさめざめと流れてきました。あ〜泣いちゃった〜。
ホットアイマスクは温かさを失っていきます。せっかくつけたのに。いえ、涙を受け止めてくれたのかもしれません。「濡れマスク」と化したホットアイマスクは泣く泣く(もう泣いているけど)捨て、眠りについたのでした。
嬉しさや寂しさ、色んなことを感じた6日間。中でも病院や関係者の皆さま、家族のありがたさを改めて実感しました。入院中は、看護師の方の「また来ますね」という声かけに、どれだけ支えられたことでしょう。ほかにも検査、配膳、清掃、事務と考えられないほど多くの方のサポートがありました。それだけではありません。仕事の面で支えてくださった関係者の皆さんのおかげで、安心して治療に専念することができました。また腫瘍を見つけてくださったクリニックの先生には頭が上がりません。
きっかけや時間を与えて「ケア」してくださった全ての皆さま、本当にありがとうございました。
少しずつ出来ることが増えていく中で、これまで感じたことのなかった気持ちが、ふっと、わいてきました。
人生って~嬉しいものですね~!!
内視鏡検査、怖かったけど、受けてよかった!