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映画の感想『憐れみの3章』

忘れてしまう前に,憐れみの3章の感想メモを.

映画館に私1人しかおらず,めちゃくちゃ快適に過ごした.
左に白湯とチョコレート,右に水を抱えて大好きなひざ掛けに体育すわりで観る映画は,本物のプライベートシネマ.改めて書いてみると水が多いな.

1章『R.M.Fの死』

この人出社したのに何もしないじゃん,,どういうこと??と頭の中で混乱していたけれど,レイモンドが出てきたところで納得.その後に重くのしかかるのは,誰にも守られていない時の焦りや恐怖,自分が安心するためならなんだってしたくなる理性なく行動したくなるあの感覚.
この感覚に苛まれている時にする行動と言えば,許しを請うか,自分の欲を満たすためだけの徘徊.映画を観ていると,登場人物が感じているもしくは感じているかもしれないと思った感覚が疑似的に呼び起こされるから好きではないのだけれど,この時に悶えた感覚は,疑似体験ではなく,まさについこの間のことを経験しているみたいに,自分の感覚だった.
ないですか?理性的に判断したらすべきでないけど,安心を手に入れるために他人に迷惑をかけてでも行動してしまうこと.

そんなこんなで,最後まで見届けるころにはどっとした疲れが.
私がすぐごめんと口に出すのは,この不安を微塵も感じたくないからなのかもしれない.
振り返ると小学校の時から1日の自分の気に入らない振る舞いを考えては明日あさイチで謝ったほうがいいな,明日にならないと謝れないし,と嫌な意味で明日を待ち遠しにしていた.でもこの感覚は優しさが無くなることへの怖さももちろんあるんだけど,自分が嫌なやつになりたくないとか,単純に失いたくないきもちだけではないと思うけれど.

2章『R.M.Fは飛ぶ』

何に対する哀れさなのか,この何にあたる固有名詞が浮かばなかった話.

最初は妻のリズが絶対におかしくなったと思ったもん.だってさ…って感じだけど,お医者さんのあの対応といい実はダニエルの方が,人を欺いているんじゃないのか…とだんだん思えてくる.ダニエルは,精神的まいっていのは本当だと思うけど,妻の変容とか覚えのない妊娠が何の比喩なのか,比喩ですらないかは全然わからなかったな.
昔から旦那さんは変わっていて,そのおかしさにお父さんは前々から気付いていたけど,愛する2人は,2人だけの世界に行ってしまったのか.でもこの話が表面的には一番幸せな気もする.ダニエルのために自己犠牲を払うリズにとって,もはやその犠牲を払うこと自体が彼女にとってのダニエルのためであったし,ダニエルの精神世界では架空かはたまた現実の妻が消えて,幸せになれたのだろうし.でも2人とも死んでるよね,と思う.

3章『R.M.F.サンドウィッチを食べる』

予告で登場するエマのダンスシーンがある章.パープルのスポーツカーっていいよね,色の使い方がすき,本当に.

そこで起こったこととエミリーがこの宗教を本当に信じているのだという姿が淡々と描かれているから背景は想像するしかできない.けど,睡眠薬を飲まされた時点で,なんとなくエミリーもそれなりの理由があって自分のパートナーではなく,宗教を選んだのかもなと思う.彼女にとって,娘は大事な一部だと考えているからこそ,神聖だと考える水をたらし靴を送るのかな.哀れと思うに思えない存在だった.アンドリューはとても敬虔な信者なのだろう.だけど盗み聞きするくらいには,まだ何か普通な部分がある.でもエミリーとは,違う.エミリーは好かれるために嘘をつき,アンドリューはエミリーの行いを密かに密告している,とカルト教団での振る舞いから考えてしまう.

自分の信頼する何かに守られていることから怖くて抜け出す選択はないし,いくら万人の幸せを願っているものを信じても,自分が誰よりもその寵愛を受けたいと思うことはあるのだろう.

おわり

結局どんな点がKINDNESSだったのか漠然とだけ各章で伝わってくるけど,明確にはわからない.各章で登場する人物は,自分がコントロールされることで受け止められることを優しさと感じ,それを他者は憐れだと考えるのかな.誰かにおすすめするとしたら、私の嫌っている方々だと思う.映画が嫌だったわけでは全くなくて,一面的に判断する彼らがKINDNESSをどう判断するのか聞きたい.嫌なやつだと十二分に承知の上で….

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