聞き齧り認知心理学でメタな視点から最強の医学学習法を解剖してみる【国試・CBT・USMLE】
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着想の経緯
9月ですがまだまだ暑いですね。休みとかは部屋にこもることが多くて。ところで、最近ハマっているコンテンツがあるんです。
みなさんは、「ゆる言語学ラジオ」ってご存知でしょうか。
誤解を恐れながら雑に括ると教養系youtuberに該当するのでしょうか。言語学をはじめとした人文科学、社会科学、まれに自然科学の研究課題・小ネタ・蘊蓄について、本の虫のおふたりが面白おかしく対談しているポッドキャストコンテンツです。コンピュータ科学や民俗学、哲学、生態学、積読などの派生コンテンツが存在しており、社会で肩身の狭い思いをしている本の虫たちのオアシスのひとつとなっているようです。
「ゆる言語学ラジオ」の人気シリーズのひとつとして、「赤ちゃんの言語習得」シリーズというものがあります。これは、赤ちゃんが言語習得をしていく過程に関する様々な研究から見えてきた言語の本質について、ときにその分野の世界的権威(主に、慶應SFCの今井むつみ先生)を交えながら一般向けに解説する一連の動画群です。
作業しながらこのシリーズを聞いていると、唐突な閃きが降りてきました。
医学の習得と言語の習得って一緒やないか?
これは、学部学生が学習する「医学」が、単に「名前」を覚え、使えるように習得することに帰着されるかもしれないというdrasticな主張です。
(※流石に極論に近いということは、自分でも了解しており、結局この思いつきは着想のきっかけにすぎず半分くらい言い過ぎだったということを、本文では言及しています。)
ちょうど臨床医学の学習論について書いてほしいという声を有り難くもいくつかいただいていたこともあり、「学部学生における臨床医学の学習の得手不得手を人間科学的に説明する仮説」をテーマに一本書いてみることにしました。
臨床医学という科目を科学の枠組みの中で位置づけ、その効果的な学習法を探ります。後半では、私の学部時代から今までの医学の学習法を紹介し、それに関して後知恵でいろいろコメントしていきます。
いや〜。ぼーっとして執筆をサボっているともう11月も終わってしまいますね。あ、最近ハマっているのは『ダンダダン』という漫画です。
科学に登場する様々な推論
数学
演繹的推論:これが、高学力層理系における「論理的」の一般的なイメージを形成している推論だと思います。真理集合の包含関係に裏打ちされた高校数学で用いられるロジックで、大学ではもっと自然言語離れして記号だけで論理の推移を表現するようになるみたいです。私はキゴロン履修してなかったからあまり詳しくありません。
理科
演繹的推論:もちろんこれもある。
遡及的推論:数学でも予想を立てるときに(非公式で)やるようにも見えますが、これは簡単にいえばP ⇨ QのQからPを逆算する推論のことです。論理学的には逆行推論の誤謬に相当します、が、科学の世界では新しい知を生み出すための大切な考え方です。ニュートンがリンゴの自由落下から万有引力の仮説を立てたときの考え方でもあります。以下のように、演繹的推論では万有引力の仮説を導くことができません。
また、構造的に帰納的推論と似ていますが、ディティールがやや異なっており、帰納的推論からも万有引力の仮説を生み出すことはできません。
帰納的推論は、推論という名の(ときに過剰な)一般化のことです。その結果として新しいことはわかることがあるものの、事例の原理を説明するような因果律を与えることはできません。
言語
言語習得:遡及的推論
科学に遡及的で非論理的な推論が関わっているというところがこれからのテーマのひとつであり、実は冒頭で触れた赤ちゃんの言語習得自体は今回の論とはあまり関係ないような気がしているのですが、着想のきっかけの話を少しだけ。私が遡及的推論という考え方に出会ったのは、「ゆる言語学ラジオ」でヒトの第一言語習得に遡及的推論が関わっているという話を聞いたときでした。
これに関する面白い実験的事実として、以下のようなものがあります。(わかりやすいように実験内での対象物をバナナに統一しています)
この非論理的な学習がアブダクション推論であり、言語を使っているヒトは皆この能力を持っていたとされているようです。高校数学ではタブーになっていることを赤ちゃんの頃はみんなやってたって、不思議ですよね。実は医者の仕事でも・・・という話が後から出てきます。
日常会話:蓋然的推論と例証
言語を用いた日常的な会話には、論理学的な厳密性が担保されているようなものは少ないでしょう。逆に、普段からガチガチに論理武装(そういうメタ認知ができてなさそうな人はやっぱり論理的じゃなさそうだけど)して、無矛盾を貫いている人なんてほとんどいないでしょう。いませんよね・・・?
日常会話で「論理的である」とは、真偽がひとつにはっきり決まるというものではなく、状況に応じた適切な根拠に基づいて、尤もらしい価値判断ができているということに対応します。文献では、説得(レトリック)の論理と呼ばれています。
形式論理学の演繹に相当する、日常において原因から結果を推測する操作は、蓋然的推論と呼ばれます。蓋然的推論は、どのような場合でも真ではないものの、大局的には正しいという特徴があります。逆に、結果から原因を推測する帰納や遡及に相当する操作のことは、例証と呼ばれています。例証は、過去の類似事例を類推し、それによって話題となっている事例の帰結を予測するというアナロジーのようなものだそうです。
⇧形式的な説明になってしまいましたが、要するに私たちが日常生活やディベートにおいて直観的に使っているロジックのことが蓋然的推論と例証ということみたいです。これには絶対の正解がないせいで各状況、各人に応じた玉石混交の「論理の型」というパッケージが膨大に存在します。したがって、レトリック的な論理的思考の巧拙は、行き当たりばったりで見当はずれな我流の思考に頼るのではなく、時の試練を潜り抜けてきた上手な議論の形式をどれだけ知っており、適切な状況で正しく取り出せるかに帰着されます。暗記数学みたい。
この話、数学は理解か暗記かの論争が無意味であることを象徴していると考えます。暗記数学の意味するところはレトリック的な「論理の形」をたくさん覚えることであり、これは意義があります。また、理解数学は公理や原理から演繹的に具体を導くことを重視した考え方(たとえば、加法定理だけ覚えたら三角関数の公式を全部導けるから、理解数学がいいという、『レトリック』)であり、これは形式論理学的な話であり、これもこれで意義があると思います。どちらも使える。そんだけだ。
少し脱線しましたが、ここで大事なのは、我々が日常会話で使っている論理はもちろん数学とは違うし、たとえ科学の世界であってもそのようなロジックを使うことがあるということです。これを踏まえて、次の章では、「医学」ではどのようなロジックが使われているのかということを考えていきます。
推論の質から考える医学の科目特性
遡及的推論 実臨床と国試解答中
今井ら(『言語の本質』など)によって、医師の実臨床では遡及的推論が多用されているということが指摘されています。『言語の本質』では、医師が新型コロナ患者の診察を行う際に「私は喉が痛くて熱がある」(「コロナならば喉が痛くて熱が出る」という命題において「P ならば Q」のQだけが与えられている)という状況で、QだけからPを逆算することを、遡及的推論の好例の一つとしています。
Qだけをヒントにその前提事象であるPを推論しようとするのは、後件肯定の誤謬であるため、論理学的に必ずしも正しい答えを返してくれません。これが、厳密でない推論によって得た仮説をも認める医学的な推論と演繹しか許さない数学的な論理との最大の違いでしょう。
もし医学的な推論において演繹しか許さなければ、次のようなありふれたケースで患者さんを死なせてしまう恐れがあります。
この症例の答えは書籍の方を確認してほしいのですが、原因を演繹的に決定するために必要な検査を逐一準備して結果を確認して推論を厳密に進めるというプロセス(AかつBかつCかつDかつ・・・かつZ だから、この病気はコレだ!)を行っていると、その間に患者さんは亡くなってしまうことすらあります(本症例はそういう緊急性の高い症例です)。
思えば、実臨床は時間との戦いだわ。と、私の同級生の研修医2年目の奴が言っていました。100%の確かさはなくともある程度確からしい仮説を素早く立てて、都度修正していくという思考の回路が医師には求められているんやなと思いました。日常の論理とは違った遡及的な論理で先に進まないといけない状況が想像されます。
さて、その仮説の修正には演繹法の考え方を使います。数強の皆さん朗報です。演繹法も使うんです!この、遡及的推論などによって得られた仮説を演繹的に検討しながら正しい診断にヒューリスティック的に近づいていく臨床診断の考え方を仮説演繹法と呼ぶそうです(『誰も教えてくれなかった診断学』)。同書によると、これは最も実用的・論理的な臨床推論法のようです。
したがって、ある程度は数学の演繹推論ができると臨床で有利です!しかし、ここで東大数学120点のレベルが必要になるようなことはなさそうです(これは蓋然的推論)し、どちらかと言えば良い仮説を立てられることの方が重要そうに見えるので、臨床推論能力の決定に支配的なのはむしろ論理を遡る力なのかもしれません(これは遡及的推論)
ところで、遡及的推論と帰納的推論は概念として極めて近いのですが、やや異なります。もし、帰納的推論でしか因果の矢を逆行できないのであれば、次のような誤答パターンに陥ります。
確かに、尿閉の患者さんには尿管ステントを導入するという学習(過学習であることに注意)があれば、それを帰納的推論の根拠として使って、別の尿閉患者さんにも尿管ステントを導入するということは、帰納的な推論としては一応の筋が通っています。誤答の類型としては「ピッチャー、キャッチャーがあるなら、打つ人はバッチャーだね!」(子どものかわいい言い間違い)と同じ類型です。
しかし、本問を含めた実臨床で直面する様々な状況では「尿閉にはステント」「尿閉にはステント」・・・という過去の事例を過剰一般化するだけでは、本当に求められている論理的思考の筋道から離れていってしまう恐れがあると思います。過剰一般化してしまうきらいがあるという人は、そのような思考の癖を改めると勉強が捗ると思います。
以上まとめると、実臨床や国家試験の解答中に、「この症例はどうしてこうなったのだ」という疑問が生じたタイミングでは、遡及的な推論と演繹的な検証の組み合わせによって正解に近づいていくという方針を取るのが得策だ。ということになります。
蓋然的推論 普段のインプットと国家試験対策
一方で、『誰も教えてくれなかった診断学』では、臨床推論のチート手法としてパターン認識による直観的な診断をも推奨しています。これは先述の論理的思考の類型の中ではレトリック的な論理的思考(「思考の型」を当てはめるタイプ)に近そうですね。
与えられた情報から因果の流れが明らかで確からしく推定できる場合は、いちいち遡及的推論を行わずとも日常的な雑なロジックによって正解を導けることもよくあるでしょう。このようなときはあまり悩まずに自分の持っている具体的知識を使って類推する、すなわち例証による帰結の予測をするのがいいのでしょう。これは遡及的推論と似ているものの性質が異なります。遡及的推論は常識や通念では説明が難しい事例に対して尤もらしい説明を与える仮説を推論する営みであることに対し、今回は、出会った事例を常識や通念としてよく知っている事例に当てはめて説明を試みているからです。
しかし、その説明の真偽を判定するために演繹法による検証が必要なところは遡及的推論と同じです。結局、筋道に沿って原因から正しい帰結を導く能力は、他の仕事と同じく医師の仕事においても大切であると言えそうですね。
パターン認識を上手に行うためには、レトリック的な推論の項目でも説明したように、時の試練を潜り抜けてきた上手な議論の形式をどれだけ知っており、それらを適切な状況で正しく取り出せるかが重要です。これは、未知の状況での応用力というよりはよく見る状況への対応力・瞬発力の話ですね。私はレトリック的な推論の説明の直後に暗記数学のお話を持ち出しましたが、同じく文献においてもこの能力値の律速が暗記の量であると説明されています。
したがって、座学や実習、研修における普段の学習や、特定の試験に向けて対策することにおいては、この上手な議論の形式をどれだけ効率的にインプットでき、いかにそれらを適切な状況においてアウトプットできるかに焦点をあてることが必要です。
これはどのように実行されるか、より原理・原則に則って考えてみると、要は、自分が「説得されれ」ば良いのです。レトリック的なロジックは人が説得されるときに使われる認知的負荷の小さな論理展開であるため、ひとたびある事実を納得して受け入れられたなら、それ以降はその事実を簡単に取り扱うことができます。このように、説得上手は学び上手であると考えますが、みなさんの体感はどうでしょうか。具体的な方法論については、4000文字くらい後ろで精緻的質問と自己説明という戦略を紹介します。
ロジックを覆い隠す「物量」の問題
ここまでで、医学のロジックは数学のような厳密で一意性が保証されているようなものではなく、場合によっては数学中心的なパラダイムから転換する必要がある場合もあることと、一方で医学のロジックで過剰一般化による誤謬に陥らないためにある程度の数学的な思考法は不可欠であること、さらに、「ある程度尤もらしいが100%ではない思考の流れ」を受け入れ、厳密ではないが現場で使えるロジックを身につけることが学習において重要であることを論じてきました。
しかし、長々と論じてきたものの、これは多くの人が大学受験の理科や数学で既に突破し身につけてきている考え方だと思います。読んでて、そらそうよ、当たり前だよな〜、言語化ありがと〜と思ってきた学生の方もいらっしゃると思います。
大学受験の理科や数学で既に突破し身につけてきている考え方であるはずなのですが、大学受験では数学と理科(特に、物理・化学)が得意だったのに医学になると全然ダメという理数特化型の学生がたまにいます。そのような存在の説明としては、「暗記が苦手だから」が大人気で、そこで本人も諦めてしまっているケースをよく見ます。確かに僕も暗記は必要で重要であると色々なところで書いていますが、諦めてしまうのはとても勿体無いと思います。
医学では、単純な暗記に見えている内容でも暗記量を縮約しながら他概念への応用すら効かせることができるクリティカルな考え方が存在しますし、
暗記にはさまざまな方法論があるのに、なまじ本人が中途半端に優秀だったせいで高校範囲で効率的な暗記法を探求する機会がないまま、高校理科とは比べ物にならないほど膨大な医学に直面してしまった不幸なミスマッチが生じているだけかもしれません。
ここから下の本文では、ロジックからは離れて、普段の学習でどうやって自分を上手に説得するかの説明と、僕が実践した具体的な手法群の紹介に移ります。手始めに、効率的な学習やコミュニケーションにおいて重要な考え方である、「スキーマ」という概念を紹介します。これだけでも、学習法のヒントになる人はいるかもしれません。
勉強してもわからない感があるとき、そもそも暗記が足りていないんじゃないかということを、以前の記事で指摘しました。これは上の話に支持されます。上のように、スキーマを持っていると容易に文脈を理解できることがあるため、ものごとを理解できないとき、悪いのは自分の頭ではなくスキーマの充実具合である可能性があるという、ポジティブな考え方を知っておきましょう。これによって、学習における努力の方向性が新しく見えてくるような人もいると思います。
一般的な方法論の有効性の分析
ビデオ講座(インプット)
人気の国試予備校は、不断の企業努力により非常に有意義で誰にでもわかりやすい授業を提供しており、利用できるのであれば利用しない手はありません。科目の全体像や出題範囲・流行や難易度感を把握した医師なんて普通は大学で教えていないので、医師国家試験に向けた学習の師とすべきは彼ら予備校講師であると思いますし、ビデオ講座で医学を勉強している昨今の風潮に異を唱えるつもりはまったくありません。有効性は極めて高いと考えます。また、上記の性質は大手予備校であれば満たされているので、どこどこの予備校が良い/悪い という議論は無意味だと思います。
ビデオ講座の有効性が極めて高いということは前提として、その有効性をどれだけ生かすか殺すかは学生の手に委ねられています。私が考える一番まずい受講法は、「自分の頭で考えずに講義を聞くだけ」の受講です。これは高校生時代に東進で私がやっていたことですね。先程「スキーマ」という考え方を導入しましたが、講義動画の最終目的は各人の頭の中に医師国家試験に出題される疾患群の整頓されたスキーマを配備することです。予備校講師の先生方は各々のスキーマに則って講義・解説を行なっており、それが受講者のスキーマと一致するかどうかは、受講者の能力の問題ではなく偶然が支配する問題です。一回聴いたらわかる運(相性)の良い学生もいれば、何度聞いてもしっくりこない運(相性)の悪い学生もいるでしょう。
後者だったとき、講義を聞いているだけ・メモをとっているだけであったら、投下したコストに対するリターンを得ることができません。自分の理解しやすい方法に翻訳する努力をするか、別の資料に当たるかなどの、学習内容の難易とは離れたメタな思考によって学習方針の微調整を行う必要があります。したがって、講義を受けるときは常に自分のスキーマで納得可能かどうかの判断を行いながら、スキーマの不一致に鋭敏に対処できるようにしておくべきです。なかなか難しいと思いますが、このことを知っていると知っていないとでは講義を受講する姿勢や意気込みが変わり、いずれこの姿勢を習慣化・内在化することもできると思いますので、念の為知っておきましょう。
ちなみに大学同期によると、私は「医学部の臨床の講義聞いてもあんまりわからんから、わかりやすい動画見るなら3年の講義が始まる前だろ」と、当時言っていたみたいで、実際にそれをやっていました(後述)。今考えると、予め自分の中で予備校講師ナイズされた一定のスキーマを形成したあとで大学の講義に臨むというのは賢い選択だったと思います。
今の時代は当時よりも動画講義が高価になってしまっているのでおいそれとは推奨できないのですが、余裕がある人は真似をしてみるといいですね。
過去問の周回(アウトプット)
過去問演習があらゆる試験に共通する最強の学習法であることは疑いの余地がありません。これは国試はもちろん、学内試験でもそうです。もしお金がなくて講義動画とか国試過去問解説が買えないという人も、学内の試験問題は基本的には貰えると思います。国試とはあんまり対応していない学内試験問題を材料としても、やり方次第では単に国試過去問を使用するよりも高い学習効果を得ることができます。なお、貰えていない人はこの記事に書かれていることとは関係ない次元で何らかの策を取らないといけないと思うので、今回は無視します。
なお、これらの試験で満点を目指したいなら正答を複数回見直しても良いと思いますが、それ以前の得点に最も効くのは誤答の修正のはずなので、漫然と周回するのはやや効率が悪そうです。
また、試験問題やその過去問は、あくまで問題作成者の恣意性によって作成されていてそれが自分の知識の穴と対応しているかどうかは偶然でしか決まらないため、過去問が最良の問題集にはなり得ても、最適な問題集にはなり得ません。これは国試過去問を無思考で漫然と周回することは、意識的に学内試験で学習している人に国試で負ける可能性すらあるということを示唆します。
最強なのは、自分が間違えそうなところを用いて問題を自作すること、すなわち、精緻的質問と自己説明によって脳に残りやすい形で過去問を消費することだと考えます。(記事終盤に具体的な実施例あり)その試験の過去問でこれができれば最強なのですが、普段の、その試験とは直接は関係のない学習であっても学習効果を飛躍的に高めることができるでしょう。
私が実施した具体的方法論とその批評
ふつうの医学生勉強法noteだとここが有料になっていて私は読んだことがないので、自分なりに構成を考えて書いています。したがって、もしかしたら分量や構成の関係で非常に読みづらくなっているかもしれません。あらかじめ謝っておきます。
3月に書いたこちらの記事では、学部時代の貯金のおかげで極めて短い期間の学習でUSMLE STEP1にPassした経験を記述しています。学部時代に1~2位を取った具体的な学習法についてはこの中では言及されていません。
また、次の記事では、1~2位を取ったときの戦略として、暗記⇨理解⇨暗記⇨理解・・・と暗記と理解を車輪の両軸として考えて学習していたということを主張しました。また、演繹だけでは医学の学習で躓くという個人的な経験則を指摘しています。
上の2記事は大変好評で有り難い限りです。しかし、およそ半年間の充電期間を経て、上記記事の内容では私の経験内容を伝え切るには未だ不十分であるということを自覚し、この半年間で知った認知や学習に関する事実を元にして、学習戦術のさらなる具体化を行おうと思い至りました。
暗記するために何を使ってどうしたとか、理解するためにどうしたとかの5W1Hをできるだけ詳らかにし、適宜、今の自分ならどうするかなどの注釈を施すコンメンタール形式で記述します。
2年前期
迷走の期間, Essential細胞生物学通読?(細胞生物学)
1年生の成績は低迷していたけど2年生では頑張ろうと心を入れ替えて臨んだ細胞生物学でしたが、特殊な先生と特殊な講義形式(レジュメなし、授業中の指名で良いことを言ったら試験に+10点、試験はゲキムズ、誤答は減点)だったため、最初だったこともありこれどうやって勉強すれば良いんだと非常に悩みました。過去のノートで間に合わせの予習をして発言の方は2回ポイントをいただくことはできましたが、テストの方はなかなか対策を立てることができませんでした。Essential細胞生物学通読…?を考えましたが、読んでみたところわからん!とお手上げで、おとなしく過去問の記述だけは絶対に書けるようにしておいてあとはテキトーに他の科目の勉強をしていました。
⇧ 今思うと、まったく何もわからない状況のときにEssential通読に走らなかったのは良い判断だと思います。あの手の厚めの基本書は、中級以上の学習者がアクティブ・リーディングを行うことで真価を発揮すると考えているので、科目の脳内地図が未完成の状態でリソースを投下するべきではありません。逆に、今の私が分子生物学の特定範囲の内容を確認するときには、論文を検索するよりも気軽に網羅的で確実性の高い情報を得ることができるため、このような基本書が極めて有用です。
今この瞬間に生物学がまったく何もわからない状態で困っている人は、易しそうな本で以下のアクティブ・リーディングを試してみると良いと思います。基礎医学の解説動画を作る作る言い続けてあまり準備を進めずに半年経っていて、すみません🙏
暗記法の研究, 反復学習を始める(人体構造学・組織学)
最初の細胞生物学のテストは平常点補正もあり辛くもA評価圏内でしたが、未だ再現性のある良い勉強方法は見つけられていませんでした。しかし、うちの大学では分子生物学と並行して解剖学の下準備みたいな講義が進むので、年度初めから1年間を通して暗記の圧に曝されます。心機一転がんばるぞ宣言をした以上、なんとか暗記に慣れていかねばなりません。
最初に試した暗記法は、古典的ですが一回書いてみるというものです。これは講義を担当されていた先生が言っていた方法ですね。いわく「君たちはまだ若いから何回か書いたら覚えられると思います」。そこで、当時の僕は覚えたい記述や用語をガンガンノートに書き殴っていました。1回ずつ。書いたあとは、自分の字で書かれたものを何度も何度も何度も何度も見返していました。
人体構造学は順位を出してくれて学年で5番目,組織学は英単語も綴れたら加点するということで、記述問題はふつうに解いた後で解剖用語を答える問題ではすべての答えに英語表記を付したのでほぼ満点だったと思います。
⇧ 紙に書くことが記憶の定着に良いという言説は最近Twitterでニュースになっていましたね。私もこの経験と紙に書くことをやめた高校時代に英単語をあまり覚えられなかったn = 1の経験から、一度は紙に書くことの大切さを感じています。「紙に書く」という経験自体が強くエピソード記憶できているときすらあり、記憶の想起に役立つことがあります。また、紙に書くことによって気持ちを吐き出して整理してみると良いみたいなライフハックもよく流れてきますし、脳内でごちゃごちゃになっている知識を構造化するときに紙に書くというのは非常に効果的な解決策であるのでしょう。
しかしながら、今の私からするとまだまだ原始的で未熟な記憶法であるような気もします。続きを見ていきましょう。
2年後期
解剖学を乗り越えるための暗記メソッドの強化(解剖学)
2年前期の暗記のさざなみは乗り越えたものの、本番は2年後期でした。解剖学は、手引きに書かれた解剖手順を自己の脳内に大まかなスキーマとして身につけながらテストでは細かいタームを正しく吐き出さなければならず、相当に質が高いインプットが行えなければテスト以前に実習についていく段階で躓いてしまう——という大変難しい科目です。
分量が多すぎて書いて覚えるのは時間的に厳しかったため、再読による暗記を強化する必要に駆られました。これに関してはうちの大学で昔も今も愛用されている最強戦術『緑マーカー × 赤下敷き』のメソッドを取り入れました。この方法は、アクティブ・リコールという暗記法に分類されます。
これまでの人生で最も大量にものを覚えなければならなかったのは、解剖学のテストに備えていた2年生後期です。先輩から同級生、後輩に至るまで学習戦術は同じなので、当人の記憶力と投下した時間で出来不出来が決まります。私は圧倒的な時間を投下してギリギリ9割の得点を確保することができたと思います(点数開示なし)。テクニックの話をしていますが、別軸の変数としての投下時間も非常に重要なファクターです。
反復+自己説明+他者への説明による開花(生理学、生化学)
一応優等生みたいな感じで名前が通ってきたものの、それでも生理学と生化学は量も多くて内容も複雑で難しい!泣きたい!という感じでした。正直ね。また、解剖実習で時間と体力を奪われるため地道にコツコツ勉強するといったガリ勉ムーブは許されず、とうとう、ここまで続いていた心機一転がんばるぞモードの維持がさすがに危ぶまれてきました。どうにかして上手に勉強しなければ!
ここで取り入れたのは、『他者への説明』です。今では人に説明することは非常に効果が高い勉強法であるというのは一般常識まで降りてきている気がしますが、当時は、う〜ん、一般教養の心理学で聞いたことがあった程度だったような覚えがあります。とりあえず他人に教えるって先に言っておいてお尻(締切)を設定した上で、その準備において
という負荷の高い独自のアクティブ・リーディングを行うことで、生理学と生化学の試験問題の内容をめちゃくちゃ理解することに成功しました。生化学は95↑, 生理学は一科目だけ80未満を取ってしまいましたがそれ以外は90↑でした。また、自分だけではなくこれまでずっと成績弱者で通っていて半分開き直っていた生命科学科の同期を、最難関の生化学で通すことができました!
⇧ 人に教えるという方法は科学的にもめちゃくちゃ有効なので、私、とても偉い
この段階で、周囲の学生よりも確実に勉強が好きだし上手いなということを自覚しました。これを東大にいたころにできていればよかった。
また、これに関連し、私は学年でシケ長を担当していて、生理学と生化学では自分の年度の試験問題の再現と解答の作成を行なっていました。解説では再試験対象になった人や下の学年の学生さんたちに伝わるような様々な敷衍を行うことを意識して文章を作成したため、シケ長大変でしたが自分の勉強にも非常に役に立ちました。このように、他者を利用することで自分の理解度をぐいっと上げるメソッドを発見し、実行できたことによって、学部時代の私の医学学習の大方針が定まりました。
上記のようにいろいろ工夫した結果、学年を通しての成績はかなり良かったみたいです。年間を通したテストの平均点も90点を超えていて通年GPAは4.0でした。
2年学年末〜3年前期
シケプリ作成に挑戦(春休み:生化学)
もともとシケプリ文化が洗練されている東大に在籍していたことと、既存の生化学のシケプリ(やや古かった)と現行の講義の内容が一致していなかったことから、春休みの時間を使って生化学のシケプリを作成することを思いつき、それを実行しました。今現在、6つ下の後輩の代までまだ現役で使われており私の名前も学内で伝承されているようで、結果的に私史上最も収益率が高かった投資になっています。
シケプリ作成に挑戦(学期中:細菌学, 免疫学)
生化学のシケプリ作成で要領を掴み、またシケプリ作成による学習定着効果の高さを我が身で実感した経験から、次は試験勉強の一環としてシケプリ作成を行うことを計画しました。具体的に行ったことは、授業を受け板書をとりながら、帰宅後の自主学習として他人に説明するような資料をwordで作成していました。これも、未だに後輩に使われていて良かったです。また、自分でもUSMLE対策に重宝しました。
暗記カードの利用(学期中:薬理学)
薬理学は解剖学ほどではないもののたくさんの記憶をしなければならなかったため、パッシブな再読を行なっていました。案の定、それだとなんだか覚えられていない気がして、どういうキッカケなのかは覚えていませんが、それまでやったことのない勉強法であった、フラッシュカード作りを行いました。表に薬剤名、裏にその薬剤についてテストで出題された内容を書いたフラッシュカード(物理)を作成し、持ち歩いて他のテスト勉強の間にめくっていました。フラッシュカードを制作する過程も勉強になったのですが、やはり今振り返ってみるとフラッシュカードによってアクティブリコールを行ったことによって知識が身に付いたの気がします。科学的には。
資料に集約するこれまで通りの試験対策(病理学)
生理学・生化学で他者に説明するときに行なっていた準備を、他者抜きで自分のためだけに活用し、テスト対策をしました。やや時間はかかりましたが効果は折り紙つきの方法であるので、疑いなく実行し、ちゃんとテストは倒せました。
3年後期
臨床の講義に対応するQA(当時は走り出しのサービス?で、メジャー科が無料公開されていた)を観る
これまでの経験で、大学の講義だけを聴いてもたぶん理解効率が悪いし、結局いつかは観るものであるので、3年前期の基礎医学のテストが終わった次の日から時間を見つけて視聴しまくっていました。前述したようにとてもわかりやすく制作されていたため、その科目の大学の講義が始まる前の時点でその科目の国試問題を見て解けるものもあるという状態になっていました。
ポケモン剣盾(剣盾!?)にハマり、大学に行かなくなる
この頃は完全にゲームしかやっておらず、大学に行ったとしても夕方からでした。いくつかの科目で出席要件をこぼしかける。
臨床の試験問題を復元し、解答解説を作る
臨床でも試験ごとにシケ長の仕事をやっていました。ビデオ講義 → 大学の講義(内職で過去問に講義内容をメモ) → テスト勉強 の怒涛のインプットを経て、テストとテスト解説の作成という負荷の高いアウトプットを行っていたおかげで、この時期の臨床の内容はずっと覚えられています。
2月の学年末に「循環器」「神経」「泌尿生殖器」「臨床検査」「ウイルス学」が一斉に到来したときには、腕を使って頭を洗うことが困難になるほどにPCの前で解答作成作業をし続けていました。
4年前期
コロナ禍で大学に行かないでよくなったので、司法試験予備試験の勉強を始める
今思うと気の迷い。普通はCBTの勉強をする時期のはずだが、こちらに結構時間を投下した
臨床各論の後半戦の講義は、試験が無くなってレポートになる
レポートになったから、シケ長の仕事は大変楽になったが、3年後期にやっていた試験解答作成による知識の能動的インプットとアウトプットをやらなかったため知識が身についた気はしなかった。
4年後期(IRTだけ知りたい人はこちらへ)
司法試験予備試験から撤退する。
これはまあ、いい経験になったね。
OSCE関係の基本的臨床手技の講義は、手引きを参考にして動きを文書でプロトコール化した。
これやってる人けっこういると思います。
手引きに文章や図表で書かれている動きを体で再現するという営みそのものが能動的なリーディングに相当するので、ここまでやらなくても通常の練習を行なっていれば自然とできるようになると思います。
しかしながら、手引きに書かれてある文章と自分に最も適した動きのスキーマが異なることはよくあるため、一度自分の持っている動きの構造と照らし合わせて手引きの文章を再構築することは、それが手技的に誤っていない限りは効率的な習得に寄与すると考えます。臨床手技の授業ではグループごとにDr. がアドバイザーとして付き添ってくれますし他の学生もいるので、授業中にスキーマの修正が可能であり、授業を上手に使うことで手技の習得効率を向上させることができる可能性はあります。
2020年秋クールごちうさ3期の放送[検閲済み]
公衆衛生の講義のシケプリ化
公衆衛生は4年後期で一番重い科目で、ちょうどシケプリもなかったので、久しぶりにシケプリ作成勉強法を試してみることにしました。医療と行政の関係や医療を制限する法律群、臨床研究における統計学的手法や指標の無味乾燥な暗記の分野と聞いていたので、私はそうはならないように、それぞれの意義や背景が有機的に連関している態様がわかりやすくなるような構造化と敷衍を行いました。ま〜〜〜〜〜それでもどうしてもゴリ押し暗記しないといけない決まりごと(死産は4 × 3 = 12週とか)もたくさんあったため、そういうところは(ごめん!これは出るから頑張って覚えて!)という意図でハイライトして目立たせた形式で文書を作成しました。○○法に関しては、「〜〜するために○○法が設けられた」というストーリー単位で記述することで、記憶の引っ掛かりが起こりやすくなるような工夫をしました。
まあ、これだけ対策積んでも、テストでは、「キシレン―尿中メチル馬尿酸 トルエン―尿中馬尿酸」の一番よく見る暗記事項の対応を逆に書いてしまって満点を逃してしまったのですが。
シケプリ完成記念にQBを3日で一周
CBT2ヶ月前のタイミングで公衆衛生のシケプリが完成したので、試験日まで限られた期間(2ヶ月)で復習すべき問題をマークするためにスクリーニングを行なったというのがこの異常な所業の主要な目的です。内分泌と膠原病と産科が弱かったなという記憶があります。これ、コロナ禍で試験がなくなったから試験の解答を作らなくてもよかった科目と綺麗に対応しているので、非常に示唆的です。
ヨコの糸を繋げている講義群のテストの過去問の分野別まとめと解説作成
重そうだったから過去問を解くだけじゃなくて構造化しておこうと思い、実施。その講義のテスト対策にはなった。これに関しては3年後期に一度やったことをもう一度繰り返しているだけで、新しい学びは少なく、慈善事業だった。
⇧ と、当時は思っていましたが、僕がやたらと四連問が得意だった理由のひとつがここにあったかもしれません。そのときに僕が書いた解説というのが、例えばこれ。
この、臨床診断学の大量のプール問題とその解答に対してレビュー作業を行う作業は、「仮説演繹的な検証」に当たりそうです。また、新しい学びという観点では少なかったものの、2年間の臨床医学の学習の総復習にはもちろんなっているわけで。自分で言語化したスキーマを記録することによって、臨床推論のパターン認識を鍛えながら、演繹的な推論を進めるときに間違えては/知らなければいけない臨床医学の重要事項をもう一度塗り固めていたということですね。これ、今思うと負荷が高いもののめちゃくちゃ効果がありそうです。
数えたら診断学と腫瘍学でヨコ糸問題500問くらいを2週間でレビューしているみたいなので、これを皆さんに実現可能な方法に変換すると、「国試1年分の解説を1ヶ月くらいで自作する」(市販の解答解説でカンニングしても良い)というやってる人を聞いたことがないような珍妙な勉強法になってしまうのですが、私は自分が国試を受けるときはこれをやろうと思います。(注:筆者は、学部を一時的に休学して基礎研究をやっている変な人なので、CBTやUSMLE STEP1には受かっているが医師国家試験はまだ受けていない)
CBT対策に冬休みにmedu4を3倍速視聴
QAは有料化していてmedu4が安かったので、最後の知識インプットにはmedu4を利用しました。Googleの拡張機能で3倍速にしてぐいいいいんと爆速で一周して、知らないことが出てきたら後で見直すためにレジュメにメモし、説明は(ここまで過酷な臨床医学インプットを行なっていたら)3倍速でも大体わかるからいちいち止めずに、知らないことを聞き取って潰すことに集中していました。
年明け:ヨコ糸科目群の今年度過去問の解答解説作成
さっき画像で出てきた解説は、過去問をレビューしたときのものであったので、自分の年度の試験問題は別で新しく解答解説を書かなければなりません。CBT直前でしたが、CBT対策の休憩 + セルフハンディキャップとして200問一気に書き上げました。
CBT直前期
TECOMこあかりの本を買ってとにかく新しい問題に触れて、正解できたけど知らなかった関連知識はmedu4のレジュメにメモし、間違えた問題の知識は紙にもメモするという、これまで通りの基本的な方法を採用。超直前期はその紙を見てこれまで間違えた問題だけを復習して、本番に臨みました。
CBTから3年後(USMLE)
生理学のシケプリを作成する
USMLE受験しようかなと考え、基礎医学の復習を行う必要が生じました。生化学の内容はシケプリ作成の過程で十分に身に付いていたので、同じことを生理学でやれば基礎医学の復習としてかなり強度が高くて効果的ではないかと考え、実行しました。生化学は作ったけど生理学がないってのはアンバランスだとずっと思っていましたし。
作業に慣れていたので1ヶ月くらいで公開できるクオリティのシケプリを作成できました。作品の出来はよく、口コミも良好みたいです。また、臓器別の生理学のうち心臓の生理学や呼吸の生理学はUSMLE Step1のPhisiologyの難関範囲だと思うのですが、シケプリ作成の段階でかなり深い内容まで日本語で整理していたおかげでほぼ躓かずに突破できました。
この過程で学部時代の授業プリントを振り返ってみると、USMLEで問われている内容も十分に取り扱われているため大学の講義は決して侮れないということを再発見しましたね。
UWorldをガンガン解く
11月に6ヶ月分の契約をして3月に受験するプランを立てました。
ここまでやっていても最初の40問は正答率40%とかで、他のUSMLE学習者の例に漏れず洗礼を受けました。
負けずにコツコツ解き進めていきます。先述のUSMLE noteと内容は被りますが、解きながらFAに書き込みしてメモして・・・というアクティブリーディングを実行していました。読みながらの単語の思い出しは行っていたものの、Ankiや自作問題などの活用によるinput後のアクティブリコールを意識的に取り入れていなかったのは勉強戦略上の改善点だと思います。
試験前2週間はFirst Aidを通読
ここまでの問題演習でFAに書かれてある情報に重み付けを行い、適切なメモを残していたため、せっかくそのように自分向けに加工したその内容を忘れてしまわないように直前期の多くの時間を復習に充てました。CBT直前期と大体同じことをやっていますね。
USMLE STEP1 Pass
はい。3月20日
CBTから4年後(心電図検定)
能動的なインプットの徹底を心掛けながら、次の目標に向けて学習中です。この写真は、現在インプットに使用している書籍と、インプット教材で出会った注目すべき概念を問うような一問一答問題を作成(自己説明)し、それを足場にしてインプット教材に書かれている内容を思い出す(アクティブリコール)ために作成したメモ用紙です。
アクティブリコールをしながら心電図完全攻略マニュアルの内容を理解・暗記することを基本的な戦略として学習しています。以下に記す具体的な方法は、心電図以外にも様々な学習の参考になると思うので、そのつもりで読み進めてみてください。
抽象化すると
書く前に洗い出したトピック群なので、本文で触れられていないものもあるかもしれません。
医学で使う論理の中には、数学で使う論理とは性質が異なるものが含まれる。
医学をはじめとした諸科学では真とは限らない決めつけによってロジックを進める手続が必要になることがあり、これは原理上逃れようのない数学との違いである。
その決めつけの精度を決定するのは、アナログ世界が人間の手によって恣意的に分節され形成された具体的知識の量やマルコフ過程の正確性であるため、研鑽過程でどうしても暗記の量の戦いになる区間が存在する。
医学に限らず、数学を除く科学的推論にはこのようなある種言語的な性質が備わっている。この意味で数学は科学の中で孤立している。
数学以外の科学的推論において、数学ができることは必要な素養ではあるものの、数学が能力の決定要因になるとは限らない。
場合によってはパラダイムの転換が必要な人もいそう
医学のロジックが言語的であるならば、効率的な理解を助けるスキーマは各人のクオリアごとに異なっているため、同じ文章を見聞きしたときに生じる主観的な理解度合いには個人差が生じうる。(この個人差そのものには言語センスの高低は関係ない)
自分が理解しにくいと感じたものごとを自分が理解しやすい形に加工する技術を磨いていくことで、医学の効率的なインプットを実現できる。(ここの巧拙に言語センスが出てくる)
高度に抽象的なレベルで真偽のはっきりした一本道の議論を進めることができることはホモ・サピエンスとして極めて能力が高いとは思います。しかし、そのような個体であっても、具体へ降りてくるときの例証:帰納が下手だったり、その正誤をメタ認知的に解釈できなければ、個別具体的なケースに対するヒューリスティックな正解を選び損ねたり選択にかかるコストが膨大になってしまうということですね。
なお、受験勉強の理科でこの問題に直面しなかったのに医学ではパンクしてしまった事例では、高校3年間で学ぶ理科の分量と大学4年間で学ぶ医学の単位時間あたりの分量とで十分に差(医学/4年 >> 高校理科/3年)があり、その間に何も工夫せずに理解していける処理能力の限界が存在したからであると考えられる。
遡及的推論のパラダイムを持っていたとしても、情報の構造化やスキーマの獲得が下手でインプット効率が悪いのであれば、まずインプットの戦略を持ってみる、または自分に合ったものに組み直すことが必要。
私はたまたま選択した学習方法がインプットと構造化を同時に行う方法であり、スムーズに学年トップに躍り出て、あまり危なげなく維持することができた。
一定期間の過集中によって知識の構造化に成功すれば、テスト前以外は普通に生きててもこれになれた
それでもまだ改善できるポイントはいくつもあり、インプットの質の向上にはまだまだ終わりが見えていない。
参考書籍
記事終わり。読者の皆さんにどれくらいお金を払っていただけるのかの実験をします。
有料ラインの下には「ありがとうございます」としか書かれていませんが、ためになった〜!って気持ちが溢れて溢れて止まらないという方はお金を払っていただければ大変嬉しいですし、今後のモチベーションになります。
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