4月のうた
converseを探してた
池袋東口から
線路沿いの細い道にでる
ソープランドや
ストリップ小屋や
覗き部屋やらを
横目にして
20歳の僕は
converseを探してた
古びたボーリング場の
ビルの一階にある
東京靴流通センターに
ずっと漂っている
薬品のような匂いを
嗅ぎながら
20歳の僕は
converseを探してた
手に取った一足は
どうやら僕の知っている
converseだろうと思うが
似たような靴もいっぱいで
やけに値段が安すぎて
僕はどうにも心配になり
店員に声をかけることもできず
手に取ったconverseを
ごった返す棚に返して
店を出た
20歳の僕は
converseを買わなかった
20歳の僕は
converseを探してたのに
20歳の僕は
converseを買わなかった
もう
converseなど
見向きもしないほど
歳を取ったくせに
そのことだけは
やけにはっきりと
覚えてるんだ