台風と35日雨が降る島、屋久島
6年前のこの時期、僕は屋久島にいた。
屋久島は月に35日雨が降る島と言われるくらい雨の多い島で、ある程度の雨は覚悟していた。しかし台風まで来るとは聞いていない。
5日の滞在期間中3日は雨、台風が来て、通って、過ぎていくまでの時間。
レンタカー代をケチりたかったので、屋久島までは原付で行った。片道400キロ下道は原付二種でもキツかった。疲れで寝そうになったので、何度か山の中の公園で昼寝をした。すべり台に寝転がると30分くらい熟睡できる。
山登りも泳ぐこともできないと、何もやることがない。屋久島の名物はトビウオで、身が締まっててとても美味しいのだが、3日も食べると飽きてくる、結局島に一件あるモスバーガーには二回行った。
5日滞在したゲストハウスはとても居心地がよく、オーナーとも仲良くなった。同じ日に宿泊した人たちとも暇なもの同士意気投合して、一緒にご飯を食べに行ったりした。
南国の観光地には特有のおおらかさがある。レンタカーは返すとき、空港に鍵を閉めないで置いて帰ればいいし、僕は数回オーナーが参加する飲み会の送り迎えをした。ゆるーい感じ。
ゲストハウスにはシェットランドシープドッグがいた。しつけがキチンとされていて全く吠えない。食事が終わったあと、オーナーかわゲスト全員に犬が苦手ではないかを確認したあと、部屋に連れて来た。
しつけされた犬でまったく吠えず、呼び寄せる人間のところにのみ近寄って、寝転んだ。
オーナーは、旅番組を見るのが好きだった。「豪華客船の旅」みたいな番組を見ては、次は海外にゲストハウスを作りたい、と言ってた。
ちなみに、このゲストハウスはもう無い。オーナーはどこに行ったんだろう。イタリアにゲストハウスは作れたのかな。
風が吹きすさぶ、僕はテラスでビールを飲みながら南国の台風を眺める。
風は強いが雨脚は強くないので外にいると気持ちいい。生暖かい風を身に纏う。
縄文杉は見れないが、南国の台風を見ることも、そうそうない経験だなと思った。
屋久島というと縄文杉が有名だ。屋久島に行ったというと必ず縄文杉の感想を聞かれる。
「屋久島に行ったけど縄文杉はバスが運休で行けなかった」と言うと同情される。
しかしどうだろう、この南国の台風もそんなに悪くない。べつに人に話すために旅に出るわけじゃない。意外とこういうアクシデントの方が覚えているものだ、と、当時は感じていた。
その読みは当たっていたようで、今でもその光景をありありと想い出せる。
なお、縄文杉の次に有名な太鼓岩と雲水峡には結構な雨が降るなか気合いで行った。
そのおかげで、屋久島の話をするときには「縄文杉は無理だったけど雲水峡は行ったよ、雲水峡って知ってる?太鼓岩はどう?」と話すことにしている。
僕は意地っ張りなのだ。