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【みるアジア】映像担当者が語る!MATAHARI 第二弾

 皆様こんにちは。「みるアジア」の映像担当です。
 いつも「みるアジア」をご視聴いただきありがとうございます。
 今回は9/6に配信させていただいた、ロシア・ポルトガル・ウクライナ合作のドラマ
「MATA HARI」(マタ・ハリ) のご紹介、その第2回目を配信させていただきます。

 前回の記事はこちらから▼

 ※皆様が「MATA HARI」をご鑑賞済みである事を信じ、途中からネタバレを含めて書かせていただいております。

「MATA HARI」推しポイント②【演出】

 エンドロールには監督として3名がクレジットされています。3名それぞれの演出が作中にどの程度反映されているのかは分からないのですが、
 
 デニス・ベリーという男。調べてみると、
 
 配偶者 ジーン・セバーグ 1972(結婚)ー1979(死別) 
     アンナ・カリーナ 1982(結婚)ー2019(死別)

 ・・・・・待て待て待て待て!いや、少々お待ちいただけますか?

 ジーン・セバーグは「勝手にしやがれ」、アンナ・カリーナは「気狂いピエロ」「女と男のいる舗道」など、ともにジャン=リュック・ゴダール監督の初期作品で強烈な印象を残す、いわばゴダール映画の2大女優といっても過言ではありません。
 そんなお2人と結ばれ、しかもその最期に立ち会ったというのかこの男は。。。
 その驚愕の経歴を知った私はしばらく硬直。不貞寝したのですが、その後「これ以上何を書くことがあるのか?」と自問し続けてしまいました。
 ここでも予期せぬ出会い。。。

 ・・・「MATA HARI」に戻ります。

~これより先はネタバレを含みます。ご了承ください~

 この作品は主人公「マタ・ハリ(マルガレータ)」の「過去を振り返らない生き方」を描くことで「人生」というものを表現している、と思いました。

 はたして演出なのか、脚本なのか、予算やスケジュールの都合上なのかは分からないのですが、個人的には意図した「演出」だと思いたいので、演出のポイントを2点書かせていただきます。

1つめのポイント「回想シーンがほとんど無い」

 回想シーンというのは作り手にとっては非常に便利です。人物の心情が映像と共に観客に分かりやすく伝わりますし、さらに推理ものだったり、シナリオが複雑だったり、話数の多いドラマ作品だったりすると、なおさら回想シーンで観客の理解を手助けする必要も出てくるかと思います。
 ただし、この回想シーンというのはときに「余計なおせっかい」と受け取られる場合もあります。「後から考えて付けた」感がにじみ出て、作り手が観客に気を使いすぎているのがはっきりと分かってしまうパターンです。
 トリックものなど、回想が前提で作られている作品も多いですが、私は基本的に「回想シーンは無くても良い」と思っていますので、しっかり時間軸に沿ったこの演出には少し驚きました。
 
 「回想シーンがほとんど無い」ことでマタ・ハリ の「過去を振り返らない」生き方がはっきりと描かれていると私は感じました。

2つめのポイント「ほとんどの登場人物が途中退場する」

 これが非常におもしろかったのですが、全編通して最後まで登場し続けるのはマタ・ハリのみ。その他の人物はほぼ「登場しては去って」いきます。「あ、この人は今後のキーマンになるな」と思った人物があっという間に死んだり、いつの間にか登場しなくなりその後二度と出てこなかったりします。
 「あいつはなんだったんだ!」と最初は困惑もしたのですが、私はふと「人生」というのはそういうものじゃないかな、と考えてしまいました。
 人生は出会いがあって別れがあって、それが死ぬまで無数に繰り返されていくものであり、最後は必ず「別れ」で終わります。もう二度と出会うことの無い人が、今はどこかで生きていて、どこかで死んでいたりします。
 
 「ほとんどの登場人物が途中退場する」ことで「人生」ってそういうものだということが表現されていると私は感じましたし、リアリティがありました。彼女の人生のある地点を偶然カメラが捉えている、そんな錯覚さえ起こしました。

 デニス・ベリー、只者では無い。。。(彼の意図かは分かりません)

 恥ずかしながら偉そうな事を長々と書いてしまいましたが、これで私の「MATA HARI」紹介は終わりになります。
 演出についてもう少しピンポイントな部分やロケーションについても書きたかったのですが、いつまでも終わりそうにありません。

 「みるアジア」では、他にも「ウクライナ」「トルコ」「アルゼンチン」などアジア圏以外の作品もひっそりと配信しています。風景や建築物など、その国の雰囲気を感じるだけでも楽しめると思いますので、是非一度ご覧になってみて下さい。