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『響け!ユーフォニアム3』 第八回 なやめるオスティナート 黒江真由スペシャル 視聴者ノート #ユーフォ3期

原作未読勢です。ここ3回オーディション編に入ってからは個人的に黒江真由の難解さに頭を抱えすぎてリアルに体調が悪くなり、正に「なやめるオスティナート」になっていました。なかなかnoteも上手く書けなくて、若干モチベーションが低かったと反省しています。

黒江の転換が描かれた7・8話を通してようやく彼女の謎が自分なりに解明できそうだと感じたので今回は彼女の謎の解明から本音に迫ってみたいと思います。

黒江真由は、なぜ黄前久美子に何度もオーディションについて確認していたのか?

黒江真由は久美子のことを慮って「オーディションで本気を出さない方がいいよね?(意訳)」と何度も同じ話をしてきました。頑固すぎる子だなと思いましたが、彼女はずっと黄前久美子の言葉にならない本音を感じとっていたのでしょう。

8話では高坂麗奈が黒江を評して「勘がいい」「滝先生の望む音をすぐに出せる」と言っていました。本人は「合理的」とも自称していました。そんな彼女からしたら自らの全国レベルの実力と比較して、部長職を頑張る黄前久美子がオーディションでは不利な事(やその先にある部内の不穏)はすぐに予想した事でしょう。

彼女の特筆すべき能力は他にも、あだ名「ママ」(高校生なのに大人の役回りの違和感)や7話の「人の好きも嫌いもない」といった自己評価や、人を"俯瞰・客観的"に撮影する写真が好きなどといった事があげられます。7話のプールのくだりでも自分で説明していましたが、普通の人とは違う存在なんだと信じているようです。

そんな"客観的"で"合理的"で"勘がいい"黒江ママ、建前に聞こえてしまう久美子の"実力主義"を無視するのも理解できます。部長の仕事をしながら、ユーフォニアムの練習をして全国金賞のソリを吹くんだ〜と子供が言っている課題設定に対して「久美子ちゃん、本当に大丈夫なのかなぁ?」と聞いていたんだと理解できます

建前でも相手の話を聞いてあげろよとも思いますが、黒江は建前を受け入れる事は不可能です。彼女が合奏を楽しく吹きたいというコンセプトを持っている為です。もしオーディションで本気を出して久美子からソリの座から引きづり落としてしまっては、楽しい部活の雰囲気が維持できなくなる。彼女のコンセプトと北宇治高校のコンセプトは完全にコンフリクトしています。

黒江の覚悟が決まった脱衣所のシーン

そんな黒江も2回目のオーディションでは本気で吹いた訳ですが、その理由が一番分かりやすいのが脱衣所のシーンです。久美子と黒江の運命が劇的に変わりました。

久美子「上手い子に吹いてほしい」の鏡に映った姿を見ている = 話を建前だとして聞いている

黒江はここでも「オーディション辞任しようか?」と聞いています。それは久美子の"実力勝負"が建前に感じてるからですね。しかし、求める回答を得られない。オーディション直前でお風呂にも入りたい。タイムアップギリギリで黒江が遂に"本音"をいいました「それは"建前"でしょう?突然やってきた転校生が部長のソリを奪ったら!」と

拳を握りしめて力強く

この黒江は"俯瞰的・合理的"な存在から"本音を熱くぶつける"存在に少し転換しています。とはいえ流石に何度も同じ事を説明させられて頭に来た久美子も凄い形相で呼応します。

久美子が黒江に正面から向き合う

久美子は180度反転し、なぜ実力勝負に至ったのかを北宇治高校吹奏楽部の過去を紐解いて真っ正面から説明しています。この時の黒江は鏡の姿ではなく久美子本人を正面から見ています。久美子の言う"実力勝負"は経緯があり単なる建前じゃない事を理解したのではないでしょうか。本音と本音のぶつかり合い、これぞ響け!ユーフォニアム。黒江もオーディションで本気を出す事を一応納得できた形です。(もちろんその後に部内の雰囲気が悪くなるなどの問題は9話以降で描かれるのも覚悟でしょう。)&(久美子自身が"実力勝負"を本気で覚悟できてなかった問題は別の機会に・・・)

黒江真由は、なぜ部活を辞めないのか?

私と最近話した方なら「またあの話か」と思われるかもしれませんが、ユーフォ視聴者の友人や知り合いと話すたびにこの質問を繰り返してきました。「なぜ黒江真由は部活を辞めないのか?」なかなか明確な答えは見つけられなかったのですが・・・

余談ですが私も学校・会社・コミュニティなど様々な場所を移り変わって来た経験から言うと、自分の主義主張と違う集団に所属するのはかなりのストレスを伴います。仕事でなければ尚更、もし自分が黒江の立場なら受験勉強もあるし、葵ちゃんのように部活を辞めるでしょう。演奏の楽しみは適当な音楽部や外部に求めたいと思います。

黒江真由のポスターのキャッチコピー「わたし合奏が好き」や劇中の「楽しく吹きたい」といった言葉から吹奏楽部に一度入部する流れは問題ないのですが、彼女の楽しく吹ければ〜という態度は全国金賞を目指す北宇治高校吹奏楽部のコンセプトである「実力主義」とは完全にコンフリクトしています。具体的にも2回のオーディション("さつきとすずめ"や"黒江と奏と久美子"のコンクールメンバー争い)を見れば分かりますが、楽しく実力主義というのは実際に難しそうなのは理解できますね。

そんな彼女を北宇治高校吹奏楽部に留めているのは要因があるはずです。だって自分だけ楽しく吹きたいなら、オーディション辞退するとかチカラを抜くとか部活辞めるとか色々方法はあるはず。そういう選択を抜きにオーディションで本気を出す厳しい道を選ぶ少女、明らかに黄前久美子とぶつかり合いまでして入れ込んでいる事がはっきりしたのが第8話だったと考えます。

黒江真由「手伝える事があったら、何でも言ってね」

ぶっちゃけプールに1回行ったレベルの友人にこの距離感や態度は違和感を感じました・・・黄前久美子に対する異常な執着、本心は隠してるよなと思います。

なぜ黄前久美子に執着するのか?

久美子以外の人との関係性を見ると浮き彫りになるのですが、特に"つばめ"。7話で"つばめ"と同じレジャーシートを共有して座っていたようですし、2話を確認すると隣の席同士だったりします。転校生が最初に仲良くなるなら近くの人ですよね。それでも黒江が"つばめ"に執着する様子は全く描かれていません。やっぱり"黄前久美子"には変に執着しているのが理解できます。

ここからは想像ですが、黒江真由は同じユーフォニアム奏者として黄前久美子に何かしらシンパシーを持ったり、気の置けない存在として見ているのではないでしょうか。例えば、部長職というのは一般部員の面倒を観るという観点では少し"大人(ママ)"に近い存在です。

左髪を触る = 建前やウソ

もう一つこの議論に重要なポイントとして、黒江真由は平然と嘘をつけます。奏に対して「みんな一緒に吹けると良いね」からの左髪を触っている画像からもわかります。この時点ではオーディションで本気をだした後なのでソリ演奏する事も理解しているはずです。秀一も幹部会で言ってましたがチューバパートが増えたり、ユーフォパートが減る(= 奏とも一緒に吹けない)ことすら予想していたのかもしれません。もみあげの左右どちらかを触る演出は以前のnoteで意味合いを解説しましたのでご参考ください。

黒江真由の本音は?(妄想度 大)

黒江は嘘もつける事を説明しましたが、彼女には物語を通じて誰にも"言いたくない嘘"、つまり特大感情の本音が何か隠されてるように感じています。それは何か?

個人的な予想は第7話のリズと青い鳥のくだり。リズは特別な存在を追い求めて欲張りでという話がありましたが、黒江真由の本音は「特別な友達が欲しいリズ」なんじゃないのか?演奏技術・身体・性格そして全国金賞受賞経験、"親友"以外は全て兼ね備えている黒江真由が隠している本音を、裏腹に説明していたのではないでしょうか。ちょうど空を見上げるカットですが、最後にそのカットで写真を撮っています。カメラというのはレンズを通して現実を見る = 眼鏡と同じとは考えられないでしょうか。京アニの眼鏡キャラには必ずと言っても良いほど裏や本音が隠されています。

友達を求める根拠ですが、カメラで人を被写体として写した場合、誰かを1人映す事はなく必ず"2人以上"です。深層心理でも仲のいい友達がほしいのは、間違いないでしょう。水着回(=半裸の付き合い)で私を誰も本気で好きにならないと白状した黒江は「特別な友達が欲しくてたまらんばい・・・」なのでは

第7話のプールの写真

妄想ですがリズと青い鳥を読んだ時に、「わたしにもこんなに大切な友達ができれば・・・」と引越しする車の中で涙していた等身大の高校生なんて事があるのかもしれません。

思い起こせば2話で教室に来た黒江が言ったのは「友達が居なくて心配ですが、仲良くして欲しいです」でした。一番最初に目的を説明するパターン、これも京アニ作品には良くある手法です。特に聲の形の硝子が「ノートを通じて友達をつくりたい」と提示したのに近い。

第6話の県祭と修学旅行

今回は偶然の流れですが脱衣所で"本音”をぶつける事で久美子と本音で向き合う事ができました。次回以降、彼女の本当の想いが久美子に伝わる事がくるのでしょうか。

そして黒江真由にはまだ視聴者に見せてない本音と書いて本気の音があります。ユーフォニアムの演奏ですよね。彼女が救われる鍵はきっと"響け!ユーフォニアム"なんだろうと次回以降を楽しみにしたいと思います。

引用

「響け!ユーフォニアム3」 より引用させて頂きました。
©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

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