よりよい健康診断を受けるための心得 採便編
晴れ渡った日曜日の朝、明日は健康診断だ。その準備活動の一大イベントである採便活動を前に私は緊張していた。
採便はニ便取る必要があるので、明朝の排便が確約できない中、今日の採便だけは落とす訳にはいかない。
最近、取り替えたばかりの自動水洗トイレを前に、私は慎重に採便用便取り紙に書かれている注意書きを読み、セットして、一つの抜かりもなかった、はずであった。
満を持して排便し、さあー取るぞーっと採便棒を近づけた所、あろうことか頼んでもいないのに突如、急流が押し寄せた。
あーっ!べっ、べっ、便がー!
くそーつ!(便だけに)
とっさに採便紙を捕もうとしたが、思いのほか勢いがあり、採便紙と便は仲良く渦の中に飲み込まれて行ってしまった。
それはあたかも濁流に飲み込まれる我が子を救おうと手を差し伸べる母の心境。
行かないでー!
自動水洗のこんな所に落とし穴があったとは。
落涙。
文明の利器も時に仇となる。
普段であれば便切れが悪く、多少の便が残っているのだが今日に限って、一点の曇りもない爽快な便切れであった。
無念。
私はやりどころのない怒りを自動水洗にした家人にぶつけた。
予想に反して、それなら二階のトイレで取ってよ、設定は変えないでよと逆切れされた。
しょんぼり。
いつか私と同じ思いをする日があなたにもきっと来るはず。
そん時は見ておれ!
泣いていても便は戻らない。
私は静かに便意の再来を待った。
食べたら出るの法則にしたがい、食後に待ちに待った便意がやって来た。
今度は逃がさないぞー!
寒い二階の手動トイレに行き、慎重に設定して、ミッション完了。
採便用紙の注意書きには、何卒、自動水洗は解除してからセッティングするように書いていただきたい。
私のような悲しい思いをする人が一人でも減ってくれたら幸甚です。
書いていいかどうかすれすれの所もありましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございました。