悪い黒字?!
良い黒字もあれば、悪い黒字もあります。黒字だから安心と決めつけるのは、ちょっと早いかもしれません。
黒字を正しく理解するには、まずは「貢献利益(率)」を知っておきましょう。「貢献利益(率)」とは、一つの商品やサービスを売った時に儲ける利益のことです。
貢献利益(率)が高く、中長期の成長を見据えて先行投資をしっかりしている会社は、理想的な経営状態と言えます。「貢献利益(率)が高いということは現在の企業価値も高いということです。そして先行投資を行っているということは、将来のキャッシュフローも見込めるということです。現在に加えて将来の企業価値の向上も念頭に置いているのは、素晴らしい経営です。GAFAMをはじめとした成功している大企業はこのタイプの企業です。
貢献利益(率)が高くても、将来の成長に必要な先行投資をしていない企業は、成長している産業ではあまりありません。先行投資をしないままで十分に貢献利益を増加させることができるのは、よほど強いブランド力がない限り不可能です。先行投資をしないと中期的に貢献利益率はどんどん下がって行き、ブランド力も結果として下がります。
将来性がない商品に先行投資して黒字を維持している企業はとても危険な経営をしています。例えば、プリンターの製造に力を入れてきたキヤノンや富士ゼロックスなどはプリンターの新機種を次々に出し、新機種が出るたびに買い替えがニーズが生まれ、そこにインクという消耗品やサービスなど利益率の高いビジネスを重ねることで、全体として貢献利益を増やすことが出来ていました。
しかし今ではDX化に伴い、紙の需要は一気に減りました。更にはプリンターの性能もこれ以上向上することに限界もあることに加え、カラーや高精細の印刷など高単価の印刷もそれほどニーズはありません。こうして貢献利益(率)はどんどん下がっていきます。中期的な成長期待値も下がりますので、投資家たちは投資した金額をどんどん回収していき、株価が下がります。
企業は黒字が出ていても貢献利益(率)が更に下がっていくことが予測される事業への投資を止める決断を迫られ、コストカットに踏み切ります。何年経っても成果が出ないと、徐々に市場や売上高の成長性が鈍化していき、企業はコストカットでしかリターンを得られなくなります。コストカットで何とか黒字を保っているのはダメな黒字と言えます。
あなたが務めている会社の決算が黒字であれば、その黒字は良い黒字が悪い黒字か良く見定めて、将来性がない会社であれば、良い黒字を生み出している会社への転職をいち早く進めることを考えてみてはいかがでしょうか。
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