映画「不機嫌な果実」感想

1997年公開。主人公は南果歩。
なにがそんなにつまらないの?と言いたくなるほど、主人公はいつも気怠げで不機嫌そうだ。
南果歩のスレンダーな身体と幼い顔立ち、鈴のような声も相まって、未成熟な少女という感じを受ける。
平穏な、すなわち彼女にとってはつまらない日常を自分で変えようとせず、第三者に平凡な日々の打開を期待してしまう他力本願な性格が招く不幸を描いた作品だ。
普通の主婦だったら、白馬の王子様の到来を夢見ながら生活したとしても、実際には現れないでなんとなく一生が終わるだろうが、彼女の場合は運悪く現れちゃったのだ。
本当にコイツでいいのか~?浮気相手にはいいかもしれないけど、夫としてはどうよ…とヒヤヒヤしながら観ていたが、結局彼女は後先考えずに、強引で情熱的でちょっとナルシスティックな彼に引っ張られてしまうのだった。
物語の最後、彼女は夫と離婚して浮気相手と一緒になるのだが、夫と暮らしていたときとすっかり同じ様子になって、情熱的で少々芝居じみていた恋愛のかたちはもうどこにもない。
作為的だと思うが、二人が座るソファの配置まで、前夫と暮らしていた部屋と同じで、相手が変わったところで何も変わらないという無念さが心に沁みる。
彼女自身も生活費を稼ぐ必要ができたためか、以前よりも忙しそうな職場で働いており、以前にも増して不機嫌そうだ。
主人公と対照的なキリコの自立した姿や、どう考えても重そうな、赤ん坊を入れたバスケットを腕一本で運ぶ姿が眩しい。

なんだか身につまされる話なので、定期的に観たくなる映画だ。

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